今回は、グループ通算制度の翌期の繰越欠損金額を確認します。
通常の欠損金の計算については、前期繰越欠損金額が100、
当期使用額が40の場合、翌期繰越欠損金は60(=100-40)となりますが、
グループ通算制度の場合、100-40=60になりません。
国税庁の資料、5で計算を確認します。
通算法人の過年度の欠損金額の当初申告における損金算入額の計算方法
グループ通算制度に関するQ&A(令和2年6月)(令和2年8月、令和3年6月改訂、令和4年7月改訂)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/group_faq/54.htm
規定の内容
通算制度の「後」の事業年度の欠損金の繰越しについては、各事業年度において生じた欠損金額で通算制度で損金算入した金額(損金算入欠損金額)は、
(一部実際に損金算入した金額ではなくて)次の合計額(イ+ロ)となります。
イ、特定欠損金額の損金算入額
ロ、特定欠損金額以外の欠損金額(配賦前)×非特定損金算入割合
ロの特定欠損金額以外の欠損金額は、配賦計算前の金額を使用します。
非特定損金算入割合は、非特定損金算入限度額の割合と同じ割合です。
国税庁の資料を並び替えています。
内容 | P社 | S1社 | S2社 | 合計 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|
1、損金算入限度額(所得×50%) | 110 | 40 | 90 | 240 | 中小法人等以外 |
2、損金算入特定欠損金額 | - | 50 | - | 50 | |
3、 1-2 全体の非特定欠損金額の損金算入限度額 | - | - | - | 240-50 =190 | |
特定欠損金額以外の欠損金額 (配賦前) | 150 | 70 | 300 | 520 | |
非特定損金算入割合 | - | - | - | 190/520 =約36.53% | 各社合計で見れば520になりますが、全体でみると190までとなります。この割合が約36.53%です。 |
国税庁の資料を並び替えています。
内容 | P社 | S1社 | S2社 | 合計 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|
繰越欠損金額 (特定+非特定) | 150 | 120 | 300 | 570 | |
特定欠損金額以外の欠損金額 (配賦前) | 150 | 70 | 300 | 520 | |
配賦計算 | +136 | △70 | △66 | 0 | |
非特定欠損金額 (配賦後) | 286 | 0 | 234 | 520 | |
非特定損金算入割合 | - | - | - | 190/520 =約36.53% | |
非特定損金算入限度額と非特定欠損金額の損金算入額 | 286×190/520 =104 | 0×190/520 =0 | 234×190/520 =86 | 190 | |
イ、特定欠損金額の損金算入額 | - | 50 | - | 50 | 法法64条の7 第1項4号イ |
ロ、特定欠損金額以外の欠損金×非特定損金算入割合 | 150×190/520 =54.8 →資料は54 | 70×190/520 =25.57 →資料は26 | 300×190/520 =109.61 →資料110 | 190 | 法法64条の7 第1項4号ロ |
イ+ロ 損金算入欠損金額 | 54 | 50+26 =76 | 110 | 240 | 左記の金額が損金算入されたものと仮定して翌期繰越欠損金額を計算します。 |
翌期繰越欠損金額 | 150-54 =96 | 120-76 =44 | 300-110 =190 | 330 | 今回はすべて非特定 |
翌期繰越欠損金額の規定がない場合
内容 | P社 | S1社 | S2社 | 合計 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|
翌期繰越欠損金額 | 150-104 =46 50多く繰越し (有利) | 120-50 =70 26少なく繰越し (不利) | 300-86 =214 24少なく繰越し (不利) | 330 | 今回はすべて非特定 |
配賦後の金額で繰り越すと、他社の欠損金額が移動して、同時に繰越欠損金額も移動してしまうため、配賦前の金額に割合をかけて繰越計算をしています。
(欠損金を通算するためだけに配賦計算としていると考えればいいのかもしれませんね。)
欠損金の通算の計算の流れ
規定は、1→2→3→4の順です。
欠損金の通算の計算は、特定(1→3)→非特定(2→4)の順となります。
内容 | 欠損金額の計算 | 限度額と超える部分の計算 | 翌期の繰越欠損金額計算上の損金算入額 |
---|---|---|---|
特定欠損金額 | 1、法法64条の7 第1項2号イ | 3、法法64条の7 第1項3号イ | A、法法64条の7 第1項4号イ |
非特定欠損金額 | 2、法法64条の7 第1項2号ロハニ | 4、法法64条の7 第1項3号ロ | B、法法64条の7 第1項4号ロ |
翌期の繰越欠損金額計算上の損金算入額は、
A(特定)とB(非特定)の合計額となります。
参考規定
四 適用事業年度後の事業年度における第五十七条第一項の規定の適用については、各事業年度(第一号の規定の適用がある場合には、その適用がないものとした場合における事業年度。以下この号において同じ。)において生じた欠損金額で同項の規定により当該適用事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額(第十一項において「損金算入欠損金額」という。)は、次に掲げる金額の合計額とする。
イ 当該各事業年度において生じた特定欠損金額のうち当該各事業年度に係る十年内事業年度に係る特定損金算入限度額に達するまでの金額
ロ 当該各事業年度において生じた欠損金額(特定欠損金額を除く。)に当該欠損金額に係る非特定損金算入割合を乗じて計算した金額
法人税法64条の7、1項4号