今回は、リース譲渡の消費税の取扱いを確認してみましょう。
概要
賃貸借取引のうち、
税法上の要件を満たすものを「リース譲渡」といいます。
リース譲渡の特例は、
賃貸借取引(貸し借りの取引)を売買取引のように扱う特例です。
リース譲渡の特例は、所得税法や法人税法に規定されていますが、
消費税法ではどのように規定されているのでしょうか?
今回は、リース譲渡の消費税の取扱いを確認してみましょう。
税法上のリース取引に該当する場合
今回確認する規定はこちら↓
(リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例)
消費税法第16条第1項、施行日令和5年10月1日
第十六条 事業者が所得税法第六十五条第一項(リース譲渡に係る収入及び費用の帰属時期)又は法人税法第六十三条第一項(リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度)に規定するリース譲渡に該当する資産の譲渡等(以下この条において「リース譲渡」という。)を行つた場合において、当該事業者がこれらの規定の適用を受けるため当該リース譲渡に係る対価の額につきこれらの規定に規定する延払基準の方法により経理することとしているときは、当該リース譲渡のうち当該リース譲渡に係る賦払金の額で当該リース譲渡をした日の属する課税期間においてその支払の期日が到来しないもの(当該課税期間において支払を受けたものを除く。)に係る部分については、当該事業者が当該課税期間において資産の譲渡等を行わなかつたものとみなして、当該部分に係る対価の額を当該課税期間における当該リース譲渡に係る対価の額から控除することができる。
規定を整理してみましょう。
事業者が
・所得税法第65条第1項(リース譲渡に係る収入及び費用の帰属時期)又は
・法人税法第63条第1項(リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度)
に規定するリース譲渡に該当する資産の譲渡等(注1)を行つた場合において、
その事業者がこれらの規定の適用を受けるため
そのリース譲渡に係る対価の額につき
これらの規定に規定する延払基準の方法により経理することとしているときは、
そのリース譲渡のうちそのリース譲渡に係る賦払金の額で
そのリース譲渡をした日の属する課税期間において
その支払の期日が到来しないもの(注2)に係る部分については、
その事業者がその課税期間において
資産の譲渡等を行わなかつたものとみなして、
その部分に係る対価の額をその課税期間における
そのリース譲渡に係る対価の額から控除することができる。
注1、以下この条において「リース譲渡」という。
注2、その課税期間において支払を受けたものを除く。
要件は2つです。
1、所得税法、法人税法のリース譲渡に該当する取引を行った。
2、延払基準の方法により経理している。
リース譲渡の特例を適用すると
対価の額から一定の金額をマイナスできます。
具体的に確認してみましょう。
第1期にリース譲渡が発生、延払経理をしている。
リース譲渡の対価の内訳は、次のとおりです。
支払期日は各年の3/31です。
第1期、X年4/1-X+1年3/31、1,200
第2期、X+1年4/1-X+2年3/31、1,200
第3期、X+2年4/1-X+3年3/31、1,200
第4期、X+3年4/1-X+4年3/31、1,200
第5期、X+4年4/1-X+5年3/31、1,200
合計、6,000
この場合、原則として
第1期に対価の額を6,000を計上します。
リース譲渡の特例を適用する場合、支払の期日が到来しないもの
(第2期から第5期までの対価 1,200×4回=4,800)を
対価の額からマイナスできます。
特例を適用した場合、
対価の額6,000-支払期日未到来4,800=対価の額1,200
となります。
支払期日が未到来のもの
対価の額からマイナスした支払期日未到来分については、
支払期日を基準に対価の額を計上します。
規定を確認してみましょう。
2 前項の規定によりリース譲渡をした日の属する課税期間において資産の譲渡等を行わなかつたものとみなされた部分は、政令で定めるところにより、当該事業者が当該リース譲渡に係る賦払金の支払の期日の属する各課税期間においてそれぞれ当該賦払金に係る部分の資産の譲渡等を行つたものとみなす。ただし、所得税法第六十五条第一項ただし書又は法人税法第六十三条第一項ただし書に規定する場合に該当することとなつた場合は、所得税法第六十五条第一項ただし書に規定する経理しなかつた年の十二月三十一日の属する課税期間以後の課税期間又は法人税法第六十三条第一項ただし書に規定する経理しなかつた決算に係る事業年度終了の日の属する課税期間以後の課税期間若しくは同条第三項若しくは第四項の規定の適用を受けた事業年度終了の日の属する課税期間以後の課税期間については、この限りでない。
消費税法第16条第2項、施行日令和5年10月1日
規定を整理してみましょう。
前項(第1項)の規定により
リース譲渡をした日の属する課税期間において
資産の譲渡等を行わなかつたものとみなされた部分は、
政令で定めるところにより、
その事業者がそのリース譲渡に係る賦払金の
支払の期日の属する各課税期間において
それぞれ当該賦払金に係る部分の資産の譲渡等を行つたものとみなす。
政令を確認してみましょう。
(リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例)
消費税法施行令第31条、施行日令和5年10月1日
第三十一条 法第十六条第二項本文の規定により同項の事業者が同条第一項に規定するリース譲渡(以下この条から第三十七条までにおいて「リース譲渡」という。)に係る賦払金の支払の期日の属する課税期間において資産の譲渡等を行つたものとみなされる部分は、当該リース譲渡に係る賦払金のうち当該課税期間中にその支払の期日が到来するものに係る部分(当該賦払金につき当該課税期間の初日の前日以前に既に支払を受けている金額がある場合には当該金額に係る部分を除くものとし、当該課税期間の末日の翌日以後に支払の期日が到来する賦払金につき当該課税期間中に支払を受けた金額がある場合には当該金額に係る部分を含む。)とする。
規定を整理してみましょう。
原則として、支払期日を基準に対価の額を計上します。
2つ目のカッコ書きは、
支払基準ではなく、回収基準を指しています。
例えば、第1期に第2期分を回収した場合
第1期の対価の額は、
6,000-1,200×3回(第3期から第5期まで)=2,400となります。
第2期の対価の額は、
第1期で回収済のため、1,200-1,200=0となります。
第2期で第3期分を回収した場合
第3期分の1,200を対価の額として計上します。
ただし書きを確認してみましょう。
ただし、
・所得税法第65条第1項ただし書又は
・法人税法第63条第1項ただし書
に規定する場合に該当することとなつた場合は、
所得税法第65条第1項ただし書に規定する
経理しなかつた年の12月31日の属する課税期間以後の課税期間又は
法人税法第63条第1項ただし書に規定する経理しなかつた決算に係る事業年度終了の日の属する課税期間以後の課税期間若しくは
同条(第63条)第3項若しくは第4項の規定の適用を受けた事業年度終了の日
の属する課税期間以後の課税期間
については、この限りでない。
・所得税法の延払経理をしなかった場合
・法人税法の延払経理をしなかった場合
・非適格株式交換等の特例が適用される場合
・通算制度の開始・加入の時価評価の特例が適用される場合
については、対価の額として計上していない残額を一括計上します。
(詳細は政令に規定されています。)
手続き
リース譲渡の特例の適用については、
確定申告書(期限後申告書)に特例を適用する旨を付記します。
(消費税の確定申告書、第1表、32欄)
参考規定
確定申告書の付記
3 第一項又は前項本文の規定の適用を受けようとする事業者は、第四十五条第一項の規定による申告書(当該申告書に係る国税通則法第十八条第二項(期限後申告)に規定する期限後申告書を含む。次条第四項及び第十八条第二項において同じ。)にその旨を付記するものとする。
消費税法第16条第3項、施行日令和5年10月1日
合併、分割などがあった場合
4 前項に定めるもののほか、第一項の規定の適用を受ける個人事業者が死亡した場合、同項の規定の適用を受ける法人が合併により消滅した場合若しくは同項の規定の適用を受ける法人が分割によりリース譲渡に係る事業を分割承継法人に承継させた場合又は同項の規定の適用を受ける事業者が第九条第一項本文の規定の適用を受けることとなつた場合におけるリース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例その他第一項又は第二項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
消費税法第16条第4項、施行日令和5年10月1日
延払条件付譲渡に係る所得税額の延納などの取扱い
5 個人事業者が、所得税法第百三十二条第一項(延払条件付譲渡に係る所得税額の延納)に規定する山林所得又は譲渡所得の基因となる資産の延払条件付譲渡をした場合その他の場合の資産の譲渡等の時期の特例については、前各項の規定に準じて、政令で定める。
消費税法第16条第5項、施行日令和5年10月1日