仕入明細書等の記載事項


今回は、仕入明細書等の記載事項について確認します。
併せて、媒介者等が作成する請求書等の記載事項についても確認します。

概要

支払った消費税の控除については、一定の要件を満たす帳簿と請求書等の保存が必要です。ただし、インボイスの入手が困難である場合は、一定の事項を記載した請求書等の保存で消費税の控除が可能です。

一定の事項については、施行令49条(下記4~6)に規定されています。

規定の概略

  • インボイスの入手が困難である場合
    (国税庁長官指定者を除く)
  • 不特定かつ多数の取引で一定のもの
  • 媒介者・取次者等の場合
  • 買い手が作成する仕入明細書等の記載事項
  • 卸売市場等の場合
  • 媒介者・取次者が作成する請求書等の記載事項
  • 法30条9項3号(仕入明細書等)と4号(媒介者等作成の請求書等)の書類には、データを含む。

今回は4~7を確認します。
1~3が帳簿の記載事項、4~7が請求書等の記載事項です。

買い手が作成する仕入明細書等の記載事項

インボイス制度は、売り手がインボイスを交付し、買い手がそのインボイスを保存して、消費税を控除する仕組みですが、買い手が仕入明細書等を作成・保存して消費税を控除することも可能です。この場合は、買い手が仕入明細書等を作成して、売り手の確認を受ける必要があります。

仕入明細書等で消費税の控除ができる条件は、次の5つです。
仕入明細書等については、電子データでも問題ありません。

  • 事業者から課税仕入れを行うこと。
    消費者からの課税仕入れは認められません。あれ?と思いましたが、仕入明細書等は消費税の控除ができる「請求書等」の一部です。仕入明細書等の作成による消費税の控除ができないだけで、消費者からの課税仕入れであっても、帳簿の保存のみで消費税の控除ができる取扱いがあります。
  • インボイスの交付が免除される取引を除く。
    売り手のインボイスの交付義務が免除されている取引については、買い手の仕入明細書等の作成は不要です。
  • 任意組合等の組合員との取引を除く。
    原則として、任意組合等の組合員については、インボイスの交付が禁止されています。そのため、仕入明細書等の作成による消費税の控除ができません。
  • 次の事項が記載されている書類に限る。
    1、買い手の氏名、名称
    2、売り手の氏名、名称と登録番号
    3、取引年月日(一定期間の記載も可)
    4、取引内容(軽減税率取引はその旨)
    5、支払対価の額(税込金額のみ)と税率
    6、消費税額等(端数処理後)

    5の支払対価の額は税込金額です。理由は、6の消費税額の計算については、税込金額×10/110と規定されているからです。
  • 4の書類につき、売り手の確認を受けていること。
卸売市場等の場合、媒介者・取次者が作成する請求書等の記載事項

卸売市場等を利用した取引については、売り手のインボイスの交付義務が免除されています。その代わりに媒介者・取次者が請求書等を交付することができます。

媒介者等が作成する請求書等の記載事項は、次の6つです。
媒介者等が作成する請求書等については、データでも問題ありません。

  • 媒介者等の氏名、名称と登録番号
  • 取引年月日(一定期間の記載も可)
  • 取引内容(軽減税率取引はその旨)
  • 税抜金額または税込金額、税率
  • 消費税額等(計算方法指定あり)
  • 買い手の事業者の氏名、名称
参考規定1(買い手が作成する仕入明細書等)

請求書等の定義

 第七項に規定する請求書等とは、次に掲げる書類及び電磁的記録(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律第二条第三号(定義)に規定する電磁的記録をいう。第二号において同じ。)をいう。

 事業者がその行つた課税仕入れ(他の事業者が行う課税資産の譲渡等に該当するものに限るものとし、当該課税資産の譲渡等のうち、第五十七条の四第一項ただし書又は第五十七条の六第一項本文の規定の適用を受けるものを除く。)につき作成する仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類で課税仕入れの相手方の氏名又は名称その他の政令で定める事項が記載されているもの(当該書類に記載されている事項につき、当該課税仕入れの相手方の確認を受けたものに限る。)

消費税法30条、施行日令和5年10月1日

仕入明細書等の記載事項

4 法第三十条第九項第三号に規定する政令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 書類の作成者の氏名又は名称
二 課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号(法第五十七条の二第四項の登録番号をいう。第六項第一号において同じ。)
三 課税仕入れを行つた年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に行つた課税仕入れにつきまとめて当該書類を作成する場合には、当該一定の期間)
四 課税仕入れに係る資産又は役務の内容(当該課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)
五 税率の異なるごとに区分して合計した課税仕入れに係る支払対価の額及び適用税率(法第五十七条の四第一項第四号に規定する適用税率をいう。第六項第四号において同じ。)
六 消費税額等(課税仕入れに係る支払対価の額に百十分の十(当該課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、百八分の八)を乗じて算出した金額をいい、当該金額に一円未満の端数が生じたときは、当該端数を処理した後の金額とする。)

消費税法施行令49条、施行日令和5年10月1日
参考規定2(媒介者等が作成する請求書等)

規定の流れを確認すると、次のとおりです。4号の中に政令で定めるものが2つあり、買い手の規定の中に売り手の規定があるため、読みにくいと思います。

買い手、法30条9項4号、媒介者等を利用した課税仕入れは一定のものに限る。
 ↓
買い手、令49条5項、一定の課税仕入れは、令70条の9、2項2号の売上げとする。
 ↓
売り手、令70条の9、2項2号、卸売市場の場合

買い手、法30条9項4号、媒介者等が作成する請求書等
 ↓
買い手、令49条6項、媒介者等が作成する請求書等一定の記載事項

請求書等の定義

 第七項に規定する請求書等とは、次に掲げる書類及び電磁的記録(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律第二条第三号(定義)に規定する電磁的記録をいう。第二号において同じ。)をいう。

四 事業者がその行つた課税仕入れ(卸売市場においてせり売又は入札の方法により行われるものその他の媒介又は取次ぎに係る業務を行う者を介して行われる課税仕入れとして政令で定めるものに限る。)につき当該媒介又は取次ぎに係る業務を行う者から交付を受ける請求書、納品書その他これらに類する書類で政令で定める事項が記載されているもの

消費税法30条、施行日令和5年10月1日

媒介者等交付特例(買い手)に関する規定

 法第三十条第九項第四号に規定する政令で定める課税仕入れは、他の者から受けた第七十条の九第二項第二号に掲げる課税資産の譲渡等に係る課税仕入れとする。

 法第三十条第九項第四号に規定する政令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 書類の作成者の氏名又は名称及び登録番号
二 課税資産の譲渡等を行つた年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に行つた課税資産の譲渡等につきまとめて当該書類を作成する場合には、当該一定の期間)
三 課税資産の譲渡等に係る資産の内容(当該課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
四 課税資産の譲渡等に係る税抜価額(法第五十七条の四第一項第四号に規定する税抜価額をいう。)又は税込価額(同号に規定する税込価額をいう。)を税率の異なるごとに区分して合計した金額及び適用税率
五 消費税額等(法第五十七条の四第一項第五号の規定に準じて計算した金額をいう。)
六 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

消費税法施行令49条、施行日令和5年10月1日

媒介者等交付特例(売り手)に関する規定

(適格請求書の交付を免除する課税資産の譲渡等の範囲等)
2 法第五十七条の四第一項ただし書に規定する政令で定める課税資産の譲渡等は、次に掲げる課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。以下この項、第七十条の十二及び第七十条の十四第五項において同じ。)とする。

二 卸売市場(卸売市場法(昭和四十六年法律第三十五号)第四条第一項(中央卸売市場の認定)又は第十三条第一項(地方卸売市場の認定)の認定を受けた卸売市場その他これらに準ずるものとして農林水産大臣が財務大臣と協議して定める基準を満たす卸売市場(農林水産大臣の確認を受けたものに限る。)をいう。イにおいて同じ。)においてせり売又は入札の方法により行われる課税資産の譲渡等その他の媒介又は取次ぎに係る業務を行う者を介して行われる課税資産の譲渡等のうち次に掲げるもの

イ 卸売市場において、卸売市場法第二条第四項(定義)に規定する卸売業者が同項に規定する卸売をする業務(出荷者から卸売のための販売の委託を受けて行うものに限る。)として行う生鮮食料品等(同条第一項に規定する生鮮食料品等をいう。)の譲渡

ロ 農業協同組合法第四条(法人性)、水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第二条(組合の種類)又は森林組合法(昭和五十三年法律第三十六号)第四条第一項(事業の目的等)に規定する組合(これらの組合に準ずるものとして財務省令で定めるものを含む。)が、当該組合の組合員その他の構成員から販売の委託(販売条件を付さず、かつ、財務省令で定める方法により販売代金の精算が行われるものに限る。)を受けて行う農林水産物の譲渡(当該農林水産物の譲渡を行う者を特定せずに行われるものに限る。)

消費税法施行令70条の9、施行日令和5年10月1日
PAGE TOP