今回は、固定資産を交換した場合の圧縮記帳のうち、お金などを受け渡しした場合を確認してみましょう。
固定資産を交換した場合
法人が事業で使っている固定資産(車両や建物など)を売却して利益が発生した場合、利益に対して法人税がかかります。
例えば、次の場合
・簿価 50万円
・売却した金額 120万円
売却した金額(120万円)-簿価(50万円)=利益(70万円)に対して法人税がかかります。
(消費税は、売却した金額120万円にかかります。)
通常、固定資産を売却してお金を受け取りますが、固定資産を受け取った場合は、どうなるでしょうか?
法人税の計算では、固定資産をその時の価額で買ったものとして取り扱われます。
例えば、固定資産Aを売って、時価120万円の固定資産Bを受け取った場合
仕訳例
借方 | 貸方 |
---|---|
固定資産B 120万円 | 固定資産A 50万円 |
– | 固定資産売却益 70万円 |
実際にお金を受け取っていれば、約30%の法人税が支払えますが、固定資産を受け取っているため、法人税が支払えなくなります。そのため、売却益に法人税がかからないようにするため、費用の先行計上(圧縮記帳)が可能です。
お金などを受け取った場合
固定資産を交換する場合、
・受け取る固定資産(取得資産)
・渡す固定資産(譲渡資産)
の時価が一致している場合、お金など(お釣り)の受け渡しは不要ですが、時価が一致していない場合は、お金などの受け渡しが発生します。
「交換差金等」といいます。
例えば、次の場合
・取得資産の時価 500万円
・譲渡資産の時価 550万円
・譲渡資産の簿価 100万円
550万円の固定資産を売却しているため、550万円の資産を受け取る必要があります。取得資産の時価は500万円ですので、足りない部分の50万円を交換差金等として受け取ることになります。
考え方
借方 | 貸方 |
---|---|
現預金 550万円 → 50万円 | 譲渡資産の簿価 100万円 |
– | 売却益 450万円 |
取得資産の時価 500万円 | 現預金 500万円 → 0円 |
この場合の譲渡直前の帳簿価額について、確認してみましょう。
一 取得資産とともに交換差金等(法第五十条第一項に規定する交換の時における取得資産の価額と譲渡資産の価額とが等しくない場合にその差額を補うために交付される金銭その他の資産をいう。以下この項において同じ。)を取得した場合 譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額に、その取得資産の価額とその交換差金等の額との合計額のうちにその取得資産の価額の占める割合を乗じて計算した金額
算式で示します。
譲渡資産の帳簿価額=1×3÷2
1、譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額
2、その取得資産の価額とその交換差金等の額との合計額(分母)
3、その取得資産の価額(分子)
金額を使って計算してみましょう。
1、譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額 100万円
2、合計額 500万円+50万円=550万円
3、取得資産の価額 500万円
譲渡資産の帳簿価額
100万円×500万円÷550万円(約91%)=約91万円
譲渡資産の簿価は100万円ですが、圧縮限度額の計算で使用する譲渡資産の簿価は、約91万円に減ります。約9万円については圧縮記帳ができません。お金を受け取って法人税が支払えるからです。
お金などを支払った場合
お金などを支払った場合はどうなるでしょうか?
例えば、次の場合
・取得資産の時価 600万円
・譲渡資産の時価 550万円
・譲渡資産の簿価 100万円
550万円の固定資産を売却しているため、550万円の資産を受け取る必要があります。取得資産の時価は600万円ですので、足りない部分の50万円を交換差金等として支払う必要があります。
考え方
借方 | 貸方 |
---|---|
現預金 550万円 → 0円 | 譲渡資産の簿価 100万円 |
– | 売却益 450万円 |
取得資産の時価 600万円 | 現預金 600万円 → 50万円 |
この場合の譲渡直前の帳簿価額について、確認してみましょう。
二 譲渡資産とともに交換差金等を交付して取得資産を取得した場合 譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額にその交換差金等の額を加算した金額
算式で示します。
譲渡資産の帳簿価額=1+2
1、譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額
2、支払った交換差金等の額
金額を使って計算してみましょう。
1、譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額 100万円
2、支払った交換差金等の額 50万円
譲渡資産の帳簿価額
100万円+50万円=150万円
譲渡資産の簿価は100万円ですが、圧縮限度額の計算で使用する譲渡資産の簿価は、150万円に増えます。交換による差益(売却益)を計算する必要があるからです。
参考情報
交換差金等がある場合の譲渡資産の帳簿価額の計算
2 前項に規定する譲渡直前の帳簿価額は、次の各号に掲げる場合に該当する場合には、当該各号に掲げる金額とする。
法人税法施行令第92条第2項、令和7年4月1日施行
一 取得資産とともに交換差金等(法第五十条第一項に規定する交換の時における取得資産の価額と譲渡資産の価額とが等しくない場合にその差額を補うために交付される金銭その他の資産をいう。以下この項において同じ。)を取得した場合 譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額に、その取得資産の価額とその交換差金等の額との合計額のうちにその取得資産の価額の占める割合を乗じて計算した金額
二 譲渡資産とともに交換差金等を交付して取得資産を取得した場合 譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額にその交換差金等の額を加算した金額
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