国外に転出したときの所得税


今回は、国外に転出したときの所得税を確認してみましょう。

国外に転出しただけで所得税?

日本国内に住所がある人などを「居住者」といいます。

居住者は、原則として全ての所得に対して所得税がかかります。
所得を稼いだ場所は関係ありません。

この居住者が外国に引っ越しした場合、日本の所得税がかかる特例が設けられています。国外転出時課税制度といいます。

引っ越しと言いましたが、正確には、日本国内に住所や居所がなくなることです。

国外転出時課税制度の対象となる資産は2つあります。
1、有価証券
2、匿名組合契約の出資の持分
(一定の有価証券は対象外)

対象資産を国外転出の時に持っている場合、国外転出した時に対象資産を売ったものとして所得税を計算する必要があります。
(所得税特有の制度のため消費税はかかりません。)

所得税の計算区分は、次の3つです。
1、事業所得
2、雑所得
3、譲渡所得

一般的には、譲渡所得に区分されるでしょう。

売却金額

実際に売っていない有価証券を売ったものとして取り扱うため、売却金額について2つのルールが定められています。

1つ目
・確定申告書を提出する時までに納税管理人の届出をした場合
・納税管理人の届出をしないで国外転出をした日以後に、確定申告書を提出する場合など

この場合は、国外転出した時の対象資産の価額が売却金額として取り扱われます。

2つ目
1に該当しない場合は、国外転出の予定日からさかのぼって3月前の日の対象資産の価額が売却金額として取り扱われます。3月前の日より後に対象資産を取得した場合は、その取得した時の価額が売却金額として取り扱われます。

国外転出と出国の違い

納税管理人の届出をしないで国内に住所や居所がなくなることを「出国」といいます。

「納税管理人の届出をしないで」とありますので、納税管理人の届出をしている場合は、国内に住所や居所がなくなったとしても出国には該当しません。

国内に住所や居所がなくなることを「国外転出」といいます。納税管理人の届出の有無は関係ありません。

まとめると
国内に住所や居所がなくなること → 国外転出
・納税管理人の届出あり → 出国に該当しない
・納税管理人の届出なし → 出国に該当する

参考規定

所得税の国外転出時課税、有価証券等

(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)
第六十条の二 国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいう。以下この条において同じ。)をする居住者が、その国外転出の時において有価証券又は第百七十四条第九号(内国法人に係る所得税の課税標準)に規定する匿名組合契約の出資の持分(株式を無償又は有利な価額により取得することができる権利を表示する有価証券で第百六十一条第一項(国内源泉所得)に規定する国内源泉所得を生ずべきものその他の政令で定める有価証券を除く。以下この条から第六十条の四まで(外国転出時課税の規定の適用を受けた場合の譲渡所得等の特例)において「有価証券等」という。)を有する場合には、その者の事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その国外転出の時に、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額により、当該有価証券等の譲渡があつたものとみなす。
一 当該国外転出をする日の属する年分の確定申告書の提出の時までに国税通則法第百十七条第二項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出をした場合、同項の規定による納税管理人の届出をしないで当該国外転出をした日以後に当該年分の確定申告書を提出する場合又は当該年分の所得税につき決定がされる場合 当該国外転出の時における当該有価証券等の価額に相当する金額
二 前号に掲げる場合以外の場合 当該国外転出の予定日から起算して三月前の日(同日後に取得をした有価証券等にあつては、当該取得時)における当該有価証券等の価額に相当する金額

所得税法第60条の2第1項、施行日令和6年6月12日

出国の定義

四十二 出国 居住者については、国税通則法第百十七条第二項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないで国内に住所及び居所を有しないこととなることをいい、非居住者については、同項の規定による納税管理人の届出をしないで国内に居所を有しないこととなること(国内に居所を有しない非居住者で恒久的施設を有するものについては、恒久的施設を有しないこととなることとし、国内に居所を有しない非居住者で恒久的施設を有しないものについては、国内において行う第百六十一条第一項第六号(国内源泉所得)に規定する事業を廃止することとする。)をいう。

所得税法第2条第1項第42号、施行日令和6年6月12日
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