今回は、所得税の国外転出時課税と納税の猶予を受けている場合の再計算が使える場合を確認してみましょう。
国外転出時課税の再計算
日本国内に住所や居所がなくなることを「国外転出」といいます。国外転出の時に1億円以上の有価証券等を持っている場合、有価証券等を売却したものとして所得税を計算する特例があります。国外転出時課税といいます。
国外転出時課税は、売却していない有価証券等を売却したものとして取り扱うため、帰国(国内に住所があること等)した場合は国外転出時課税の再計算ができます。また、実際に有価証券等を売却したときに値下がりしていた場合も再計算が可能です。
今回は、別の再計算できる特例を確認してみましょう。
再計算には納税管理人の届出が必要
再計算できる要件は、次の3つです。
1、所得税の国外転出時課税の対象となっている。
2、国外転出の時までに納税管理人の届出が済んでいる。
3、確定申告書の提出期限までに、国外転出時課税の対象となる有価証券等を売却する。
例えば、次の場合で確認してみましょう。
・有価証券を買った金額 100万円
・X年5月9日、納税管理人の届出を行った。
・X年5月10日、国外転出、有価証券の時価 150万円
・X+1年1月15日、有価証券を売却したときの売却収入 140万円
国外転出した時の計算は、有価証券の時価150万円-有価証券の購入金額100万円=売却益50万円となります。
確定申告期限までに有価証券を実際に売却した場合は、有価証券の売却収入140万円-有価証券の購入金額100万円=売却益40万円で計算できます。
・未決済の信用取引等
・未決済のデリバティブ取引
の2つを決済した場合や限定相続等による移転があった場合も同じです。
限定相続等とは、次の3つをいいます。
・贈与
・限定承認の相続
・包括遺贈の限定承認の遺贈
参考規定
納税管理人の届出をしている人が、確定申告期限までに有価証券等を売却した場合は、所得税の再計算が可能。
9 前項の規定は、国外転出の日の属する年分の所得税につき第一項から第三項までの規定の適用を受けるべき個人でその国外転出の時までに国税通則法第百十七条第二項の規定による納税管理人の届出をしているものが、同日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、同日から引き続き有している有価証券等又は決済していない未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引に係る契約の譲渡若しくは決済又は限定相続等による移転をした場合について準用する。
所得税法第60条の2第9項、施行日令和6年6月12日
考えていたこと
元の規定(第8項)は、値下がりした場合(損した場合)に、実際の金額で再計算できる特例です。値上がりした場合(得した場合)は、再計算が不要です。有利な規定だと思いましたが、値上がりした場合は実際に売却したときに計算する必要があるため、再計算までは求めていないということなのでしょう。
納税管理人
(納税管理人)
第百十七条 個人である納税者がこの法律の施行地に住所及び居所(事務所及び事業所を除く。)を有せず、若しくは有しないこととなる場合又はこの法律の施行地に本店若しくは主たる事務所を有しない法人である納税者がこの法律の施行地にその事務所及び事業所を有せず、若しくは有しないこととなる場合において、納税申告書の提出その他国税に関する事項を処理する必要があるときは、その者は、当該事項を処理させるため、この法律の施行地に住所又は居所を有する者で当該事項の処理につき便宜を有するもののうちから納税管理人を定めなければならない。2 納税者は、前項の規定により納税管理人を定めたときは、当該納税管理人に係る国税の納税地を所轄する税務署長(保税地域からの引取りに係る消費税等又は国際観光旅客税(国際観光旅客税法第十六条第一項(国内事業者による特別徴収等)の規定により徴収して納付すべきものを除く。)に関する事項のみを処理させるため、納税管理人を定めたときは、これらの国税の納税地を所轄する税関長)にその旨を届け出なければならない。その納税管理人を解任したときも、同様とする。
国税通則法第117条第1項と第2項、施行日令和6年10月1日
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