土地の上に貸家がある場合の宅地の評価


今回は、土地の上に貸家がある場合の宅地の評価を確認してみましょう。

貸家建付地の評価

今回確認する基本通達は、26です。

国税庁、財産評価基本通達、貸家建付地
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/05.htm#a-26

貸家が建っている宅地を「貸家建付地」といいます。

長いため、分けて確認します。

貸家(94≪借家権の評価≫に定める借家権の目的となっている家屋をいう。以下同じ。)の敷地の用に供されている宅地(以下「貸家建付地」という。)の価額は、次の算式により計算した価額によって評価する。

算式
その宅地の自用地としての価額-その宅地の自用地としての価額×借地権割合×94≪借家権の評価≫に定める借家権割合×賃貸割合

1、自用地としての価額
2、マイナスする金額
 自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合
3、貸家建付地の価額
 1-2

計算例
1、自用地としての価額
 1億円
2、マイナスする金額
 自用地としての価額(1億円)×借地権割合(60%)×借家権割合(30%)×賃貸割合(50%)=900万円
3、貸家建付地の価額
 1-2=9,100万円

基本通達の続きに定義があります。

この算式における「借地権割合」及び「賃貸割合」 は、それぞれ次による。

(1) 「借地権割合」は、27≪借地権の評価≫の定めによるその宅地に係る借地権割合(同項のただし書に定める地域にある宅地については100分の20とする。次項において同じ。)による。

(2) 「賃貸割合」は、その貸家に係る各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分をいう。以下同じ。)がある場合に、その各独立部分の賃貸の状況に基づいて、次の算式により計算した割合による。

算式
Aのうち課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計÷当該家屋の各独立部分の床面積の合計(A) 

借地権割合は、評価の対象となっている宅地の借地権割合を計算に使用します。カッコ書きにより、借地権の取引慣行がない地域の宅地の借地権割合は、0ではなく20%に変わります。

賃貸割合は、次の割合(50%)です。
賃貸している各独立部分の床面積の合計(150㎡)

各独立部分の床面積の合計(300㎡)

注意書きは、各独立部分の定義です。

(注)
1 上記算式の「各独立部分」とは、建物の構成部分である隔壁、扉、階層(天井及び床)等によって他の部分と完全に遮断されている部分で、独立した出入口を有するなど独立して賃貸その他の用に供することができるものをいう。
したがって、例えば、ふすま、障子又はベニヤ板等の堅固でないものによって仕切られている部分及び階層で区分されていても、独立した出入口を有しない部分は「各独立部分」には該当しない。
 なお、外部に接する出入口を有しない部分であっても、共同で使用すべき廊下、階段、エレベーター等の共用部分のみを通って外部と出入りすることができる構造となっているものは、上記の「独立した出入口を有するもの」に該当する。

建物の構成部分である
・隔壁
・扉
・階層(天井及び床)等
によって他の部分と完全に遮断されている部分で、
独立した出入口を有するなど独立して賃貸
その他の用に供することができるものを「各独立部分」といいます。

完全に遮断されている部分で独立した出入口の有無がポイントです。

続きは、各独立部分に該当しない場合の例です。

共用部分のみを通って出入りできる構造となっているものは、「独立した出入口を有するもの」に該当します。

続きは、注意書きの2番です。

2 上記算式の「賃貸されている各独立部分」には、継続的に賃貸されていた各独立部分で、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるものを含むこととして差し支えない。

賃貸割合の算式の分子です。課税時期(相続が発生した時など)において、一時的に賃貸されていなかったと認められるものが含まれます。一時的のため、継続して賃貸されていない場合は、計算から除外する必要があります。

区分地上権等の目的となっている貸家建付地の評価

今回確認する基本通達は、26-2です。

26-2 区分地上権又は区分地上権に準ずる地役権の目的となっている貸家建付地の価額は、次の算式により計算した価額によって評価する。
25≪貸宅地の評価≫から25-3≪土地の上に存する権利が競合する場合の宅地の評価≫までの定めにより評価したその区分地上権又は区分地上権に準ずる地役権の目的となっている宅地の価額(A)-A×次項の定めによるその宅地に係る借地権割合×94≪借家権の評価≫に定める借家権割合×26≪貸家建付地の評価≫(2)の定めによるその家屋に係る賃貸割合

先ほど確認した貸家建付地に区分地上権などが設定されている場合は、26番の計算式ではなく、26-2の計算式を使用しましょう。

25、貸宅地の評価
25-2、倍率方式により評価する宅地の自用地としての価額
25-3、土地の上に存する権利が競合する場合の宅地の評価
により評価した
・区分地上権
・区分地上権に準ずる地役権
の目的となっている宅地が評価の基準となります。
(26の場合は、自用地としての価額が評価の基準です。)

25、25-2、25-3により評価した金額(A)から
一定の金額(B)をマイナスします。

マイナスする金額(B)は、
25、25-2、25-3により評価した金額(A)
×借地権割合
×借家権割合
×賃貸割合
により計算します。

A-B=区分地上権などの目的となっている貸家建付地の価額となります。

26も26-2も「×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」の部分は、同じです。

倍率方式により評価する宅地の自用地としての価額

今回確認する基本通達は、25-2です。

倍率地域にある
1、区分地上権の目的となっている宅地
2、区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である宅地
の自用地としての価額は、

その宅地の固定資産税評価額が
1、地下鉄のずい道の設置
2、特別高圧架空電線の架設がされていること
等に基づく利用価値の低下を考慮したものである場合には、
その宅地の利用価値の低下がないものとして評価した価額となります。

宅地(土地)の評価は、2つあります。
1、路線価方式
2、倍率方式

倍率方式は、固定資産税の評価額に倍率をかけて評価額を計算します。
そのため、この通達の前提は倍率地域にある宅地です。

その宅地の固定資産税の評価額が
地下鉄のトンネルがあること等により下がっていたとしても、
宅地の価値が下がっていないものとして評価する必要があります。

固定資産税の評価額×倍率=宅地の評価額となります。
宅地以外の土地についても同じです。

(利用価値の低下が考慮されている場合が要件となっているため、利用価値の低下が考慮されていない場合は、別途利用価値の低下を考慮することができるのでしょう。)

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