今回は、簡易課税制度の売上値引き等の事業区分を確認します。
簡易課税制度の売上げは6種類
支払った消費税を売上から概算する簡易課税制度。
簡易課税制度を利用する場合は、消費税が課税される売上げを
次の6種類に区分する必要があります。
事業区分 | みなし仕入率 |
---|---|
第1種事業、卸売業 | 90% |
第2種事業、小売業など | 80% |
第3種事業、建設業など | 70% |
第4種事業、飲食店業など | 60% |
第5種事業、サービス業など | 50% |
第6種事業、不動産業 | 40% |
みなし仕入率とは、支払った消費税にできる割合です。
例えば、卸売業の売上消費税が100ある場合、
支払った消費税は、売上消費税100×90%(みなし仕入率)=90となります。
その結果、納付する消費税は100-90=10となります。
事業区分をしなかった場合
簡易課税制度を利用する場合、6つの事業区分が必要ですが、
事業区分をしなかった場合は、
みなし仕入率が少ない事業で支払った消費税を計算することになります。
(細かい区分方法は省略します。)
例えば、第1種事業、第2種事業、第5種事業の売上を区分していない場合は、
全て第5種事業のみなし仕入率(50%)で計算する必要があります。
事業者にとって不利な申告になります。
売上値引きを区分しなかった場合
売上を区分しなかった場合、みなし仕入率が低い事業で計算しますが、
売上値引きを区分しなかった場合や区分できない場合はどうなるでしょうか?
答えは、不利な申告ではなく、合理的に按分します。
法令ではなく、消費税法基本通達13-2-10
(売上げに係る対価の返還等を行った場合の事業区分)による取扱いです。
(ページ下に掲載しています。)
基本通達に「帳簿等を基に合理的に」とあるため、
売上げの割合、取引回数の割合、事業所の割合など
事業者にとって合理的に計算すれば問題ありません。
規定の考え方
売上を区分していない場合の取扱いは、消費税法施行令に規定されています。
4 第一項各号に掲げる事業又は第四種事業のうち二以上の事業を営む事業者が当該課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等で、当該課税資産の譲渡等につきこれらの事業の種類ごとの区分をしていないものがある場合における前二項の規定の適用については、次に定めるところによる。
消費税法施行令57条
以下省略
この規定では、「当該課税資産の譲渡等につきこれらの事業の種類ごとの区分をしていないものがある場合」とあり、売上の区分をしていないものがある場合に限定されており、売上値引きの区分の有無については規定されていません。
そのため、消費税法基本通達で
帳簿等を基に合理的に区分することが求められています。
売上値引きを区分しなかった場合の検証
前提
第1種事業の売上消費税 1000万円
第5種事業の売上消費税 1000万円
売上値引き消費税 1500万円
1、事業区分をしている場合
第1種事業で計算した場合
売上消費税1000万円×90%=仕入消費税900万円
第5種事業で計算した場合
売上消費税1000万円×50%=仕入消費税500万円
2、事業区分をしていない場合
第5種事業で計算した場合(不利な申告)
売上消費税2000万円×50%=仕入消費税1000万円
3、売上値引き1500万円を事業区分していない場合
3-1、仮に第1種事業の値引きとして計算した場合(不利な申告)
第1種事業の売上消費税1000万円-売上値引き消費税1500万円<0円×90%=0円
第5種事業の仕入消費税500万円
3-2、仮に第5種事業の値引きとして計算した場合
第1種事業の仕入消費税900万円
第5種事業の売上消費税1000万円-売上値引き消費税1500万円<0円×50%=0円
売上の事業区分をしなかった場合、自動的に不利な申告となりますが、売上値引きの事業区分をしなかった場合、自動的に有利な申告とならないようにするため、合理的な区分が必要となります。
参考通達
(売上げに係る対価の返還等を行った場合の事業区分)
消費税法基本通達
13-2-10 簡易課税制度を適用する事業者が、売上げに係る対価の返還等を行った場合において、当該対価の返還等に係る金額につき、第一種事業から第六種事業に係る事業の区分をしていない部分があるときは、当該区分していない部分については、当該事業者の課税売上げに係る帳簿等又は対価の返還等に係る帳簿等を基に合理的に区分するものとする。(平9課消2-5、平26課消1-8により改正)