寄附修正事由があった場合の利益積立金額


今回は、寄附修正事由があった場合の利益積立金額を確認してみましょう。

規定の概要

今回確認する規定は、こちらです。

七 当該法人が有する当該法人との間に完全支配関係(通算完全支配関係を除く。)がある法人(以下この号において「子法人」という。)の株式又は出資について寄附修正事由(子法人が他の内国法人から法第二十五条の二第二項に規定する受贈益の額で同条第一項の規定の適用があるものを受け、又は子法人が他の内国法人に対して法第三十七条第七項(寄附金の損金不算入)に規定する寄附金の額で同条第二項の規定の適用があるものを支出したことをいう。以下この号において同じ。)が生ずる場合の当該受贈益の額に当該寄附修正事由に係る持分割合(当該子法人の寄附修正事由が生じた時の直前の発行済株式又は出資(当該子法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額のうちに当該法人が当該直前に有する当該子法人の株式又は出資の数又は金額の占める割合をいう。以下この号において同じ。)を乗じて計算した金額から寄附修正事由が生ずる場合の当該寄附金の額に当該寄附修正事由に係る持分割合を乗じて計算した金額を減算した金額

法人税法施行令第9条第7号、令和7年4月1日施行

カッコ書きを外してみましょう。

七 当該法人が有する当該法人との間に完全支配関係(注1)がある法人(注2)の株式又は出資について寄附修正事由(注3)が生ずる場合の当該受贈益の額に当該寄附修正事由に係る持分割合(注4)を乗じて計算した金額から寄附修正事由が生ずる場合の当該寄附金の額に当該寄附修正事由に係る持分割合を乗じて計算した金額を減算した金額

利益積立金額は、
・第1号から第7号までが加算項目
・第8号から第14号までが減算項目
です。

今回の規定は、第7号なので利益積立金額の加算項目です。

当該法人(当社)が有する当該法人(当社)との間に完全支配関係(注1)がある法人(注2、子法人)

完全支配関係とあるため、100%の支配関係です。
(例えば、当社がある会社の株式を全部持っている状況)

ただし、注1のカッコ書きにより「通算完全支配関係」は、除外されています。

通算完全支配関係を除外した法人を「子法人」といいます。

続きを見てみましょう。

株式又は出資について寄附修正事由(注3)が生ずる場合

が要件となります。注3に定義が規定されています。

取扱い

先に取扱いを確認してみましょう。

当該受贈益の額に当該寄附修正事由に係る持分割合(注4)を乗じて計算した金額から寄附修正事由が生ずる場合の当該寄附金の額に当該寄附修正事由に係る持分割合を乗じて計算した金額を減算した金額

算式にしてみましょう。

1、寄附修正事由が生ずる場合の受贈益の額×寄附修正事由に係る持分割合(注4)

2、寄附修正事由が生ずる場合の寄附金の額×寄附修正事由に係る持分割合

3、利益積立金額の加算額 1-2

寄附修正事由

寄附修正事由の定義を確認してみましょう。

寄附修正事由(子法人が他の内国法人から法第二十五条の二第二項に規定する受贈益の額で同条第一項の規定の適用があるものを受け、又は子法人が他の内国法人に対して法第三十七条第七項(寄附金の損金不算入)に規定する寄附金の額で同条第二項の規定の適用があるものを支出したことをいう。以下この号において同じ。)

2つあります。

1、子法人が他の内国法人から法第25条の2第2項に規定する受贈益の額で同条(第25条の2)第1項の規定の適用があるものを受けたこと。

2、子法人が他の内国法人に対して法第37条第7項(寄附金の損金不算入)に規定する寄附金の額で同条(第37条)第2項の規定の適用があるものを支出したこと。

例1、子法人が親法人からお金を受け取った場合
親法人 寄附金 10,000 / 現預金 10,000
 ↓
子法人 現預金 10,000 / 受贈益 10,000 ← 寄附修正事由

例2、親法人が子法人からお金を受け取った場合
親法人 現預金 20,000 / 受贈益 20,000
 ↑
子法人 寄附金 20,000 / 現預金 20,000 ← 寄附修正事由

受贈益の額や寄附金の額に持分割合をかけて計算します。

持分割合

持分割合の定義を確認してみましょう。

持分割合(当該子法人の寄附修正事由が生じた時の直前の発行済株式又は出資(当該子法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額のうちに当該法人が当該直前に有する当該子法人の株式又は出資の数又は金額の占める割合をいう。以下この号において同じ。)

子法人の寄附修正事由が生じた時の直前の
発行済株式や出資の総数や総額(分母)のうちに

法人(当社)が直前に有する子法人の
株式や出資の数や金額(分子)の占める割合を

「持分割合」といいます。

計算イメージ
分子、法人(当社)が有する子法人の株式 10,000株
分母、子法人の発行済株式の総数 10,000株
持分割合 10,000株(分子)÷10,000株(分母)=100%

持分割合の計算上、自己の株式などは計算に含めないようにしましょう。

参考情報

計算例、完全支配関係あり。
・親法人
・子法人A
・子法人B

子法人Aが子法人Bに現金30,000を渡した場合

仕訳
子法人A 寄附金 30,000 / 現預金 30,000 ← 寄附修正事由
子法人B 現預金 30,000 / 受贈益 30,000 ← 寄附修正事由

寄附修正事由が発生しています。

子法人A(お金を渡した法人)の
利益積立金額の加算額の計算

1、寄附修正事由が生ずる場合の受贈益の額×寄附修正事由に係る持分割合
0

2、寄附修正事由が生ずる場合の寄附金の額×寄附修正事由に係る持分割合
30,000×100%=30,000

3、利益積立金額の加算額 1-2=-30,000

親法人の仕訳イメージ
利益積立金額 30,000 / 子法人A株式 30,000
(寄附修正事由がある場合は株式の帳簿価額を調整する規定があります。)

子法人B(お金を受け取った法人)の
利益積立金額の加算額の計算

1、寄附修正事由が生ずる場合の受贈益の額×寄附修正事由に係る持分割合
30,000×100%=30,000

2、寄附修正事由が生ずる場合の寄附金の額×寄附修正事由に係る持分割合
0

3、利益積立金額の加算額 1-2=+30,000

親法人の仕訳イメージ
子法人B株式 30,000 / 利益積立金額 30,000
(寄附修正事由がある場合は株式の帳簿価額を調整する規定があります。)

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