今回は、所得税のリース譲渡の特例計算を確認してみましょう。
リース譲渡の特例計算
代金を分割して受け取るリース譲渡については、延払基準の方法により売上や売上原価(コスト)を繰り延べて計上できます。
延払基準の方法については、次の2つがあります。
・賦払金割合(代金回収割合)による方法
・リース期間による方法
今回は、リース期間による方法の特例計算を確認してみましょう。
特例計算については、売上金額を
・元本相当額(利息相当額以外の部分)
・利息相当額
の2つに分ける必要があります。
特例計算では、
・リースの売上高-リースの売上原価(コスト)=リースの利益
・リースの利益×20%
で利息相当額を求めることが可能です。
例えば、次の場合
・リース売上高 5,500,000円
・リース売上原価 4,000,000円
5,500,000円-4,000,000円=リース譲渡の利益1,500,000円×20%
=300,000円が利息相当額となります。
リース売上高5,500,000円-利息相当額300,000円=元本相当額5,200,000円となります。
規定では
・1号の金額(元本部分)
・2号の金額(利息部分)
の合計が売上金額と定められています。
算式で示します。
1号の金額=
元本相当額÷リース期間の月数×その年のリース期間の月数(定額法)
・リース期間の月数 60月
・その年のリース期間の月数 12月
の場合、5,200,000円÷60月×12月=1,040,000円となります。
2号の金額=その年の利息相当額
1年目の利息相当額が98,761円の場合、
イ+ロ=元本相当額1,040,000円+利息相当額98,761円=1,138,761円が売上金額となります。
3号の金額(売上原価、コスト)については、リース売上原価(コスト)÷リース期間の月数×その年のリース期間の月数、で計算します。この部分は原則計算と変わりません。
コストが4,000,000円の場合、
4,000,000円÷60月×12月=800,000円が1年分のコストとなります。
利益は、売上金額1,138,761円-コスト800,000円=338,761円となります。
利息相当額はリース料(元本と利息)を支払うと減少しますので、売上金額(利益)も減少していきます。
原則計算であっても特例計算であっても繰り延べる計算方法が異なるだけで、トータルの利益は同じ1,500,000円(=5,500,000円-4,000,000円)となります。
参考情報、下記の前提で計算しています。
・リース料 年払い
・1,100,000円の後払い
・リース期間 5年
・契約開始月 1月
・リース譲渡対価 5,500,000円
・利率 約1.9%
・売上原価(コスト) 4,000,000円
手続き
リース譲渡の特例計算については、
確定申告書に計算明細書を添付する必要があります。
参考情報、国税庁、リース譲渡に係る収入金額及び費用の額の総収入金額及び必要経費算入に関する明細書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/1557_2.htm
参考規定
リース譲渡の特例計算
2 居住者がリース譲渡を行つた場合には、その対価の額を政令で定めるところにより利息に相当する部分とそれ以外の部分とに区分した場合における当該リース譲渡の日の属する年以後の各年の収入金額及び費用の額として政令で定める金額は、当該各年分の事業所得の金額の計算上、総収入金額及び必要経費に算入する。
所得税法第65条第2項、施行日令和6年5月17日
利息相当額の計算(利益の20%)
2 法第六十五条第二項の対価の額のうち利息に相当する部分の金額は、リース譲渡の対価の額からその原価の額を控除した金額の百分の二十に相当する金額(次項において「利息相当額」という。)とする。
所得税法施行令第188条第2項、施行日令和6年4月1日
リース譲渡の特例計算の方法
3 法第六十五条第二項に規定する収入金額として政令で定める金額は、第一号及び第二号に掲げる金額の合計額とし、同項に規定する費用の額として政令で定める金額は、第三号に掲げる金額とする。
所得税法施行令第188条第3項、施行日令和6年4月1日
一 リース譲渡の対価の額から利息相当額を控除した金額(次号において「元本相当額」という。)をリース期間の月数で除し、これにその年における当該リース期間の月数を乗じて計算した金額
二 リース譲渡に係る賦払金の支払を、支払期間をリース期間と、支払日を当該リース譲渡に係る対価の支払の期日と、各支払日の支払額を当該リース譲渡に係る対価の各支払日の支払額と、利息の総額を利息相当額と、元本の総額を元本相当額とし、利率を当該支払期間、支払日、各支払日の支払額、利息の総額及び元本の総額を基礎とした複利法により求められる一定の率として賦払の方法により行うものとした場合にその年におけるリース期間に帰せられる利息の額に相当する金額
三 リース譲渡の原価の額をリース期間の月数で除し、これにその年における当該リース期間の月数を乗じて計算した金額
1号は元本部分、2号は利息部分、3号は原価部分
特例計算は、明細書の添付が必要
3 前項の規定は、リース譲渡の日の属する年分の確定申告書に同項に規定する収入金額及び費用の額として政令で定める金額の総収入金額及び必要経費への算入に関する明細の記載がある場合に限り、適用する。
所得税法第65条第3項、施行日令和6年5月17日