所得税の基礎控除の改正と経過措置


今回は、所得税の基礎控除の改正と経過措置を確認してみましょう。

所得税法の経過措置

所得税の基礎控除が48万円から58万円に増えます。

いつから改正内容を考慮する必要があるのでしょうか?
経過措置を確認してみましょう。

(基礎控除に関する経過措置)
第七条 新所得税法第八十六条の規定は、令和七年分以後の所得税について適用し、令和六年分以前の所得税については、なお従前の例による。

所得税法等の一部を改正する法律案

基礎控除は、
・令和7年分以後の所得税については、58万円で計算
・令和6年分以前の所得税については、48万円で計算
と規定されています。

いつから法律が施行されるのかを確認してみましょう。

 (施行期日)
第一条 この法律は、令和七年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 次に掲げる規定 令和七年十二月一日
イ 第一条中所得税法第二条第一項第三十二号の改正規定、同項第三十三号の改正規定、同項第三十四号の改正規定(「四十八万円」を「五十八万円」に改める部分に限る。)、同法第二十八条第三項の改正規定、同法第八十三条第一項第一号の改正規定、同法第八十四条の次に一条を加える改正規定、同法第八十五条の改正規定、同法第八十六条第一項の改正規定、同法第八十七条第一項の改正規定、同法第百二十条第三項第三号の改正規定、同法第百二十一条第一項第二号ロの改正規定、同法第百九十条第二号ホを同号ヘとし、同号ニの次に次のように加える改正規定、同法第百九十五条の二第一項の改正規定、同法第百九十五条の三第一項の改正規定、同条を同法第百九十五条の四とし、同法第百九十五条の二の次に一条を加える改正規定、同法第百九十八条第四項の改正規定及び同法別表第二から別表第五までの改正規定(別表第五に係る部分に限る。)並びに次条並びに附則第三条、第六条第一項、第三項及び第四項、第七条、第八条第一項、第九条第二項、第三項及び第五項から第七項まで、第十条第三項から第五項まで並びに第十一条の規定

所得税法等の一部を改正する法律案

原則は令和7年4月1日ですが、一部の規定は令和7年4月1日以外の日から施行されます。

基礎控除の改正については、
・一 次に掲げる規定 令和七年十二月一日
・同法第八十六条第一項の改正規定(基礎控除の改正規定)
とありますので、令和7年12月1日から施行されます。

令和7年12月1日より前に確定申告する場合

所得税の確定申告は、原則として翌年3月15日が期限です。

ただし、年の途中で
・亡くなった場合
・出国する場合
については、確定申告に準じて所得税を申告・納付する必要があります。
準確定申告といいます。

基礎控除の改正が施行される日は、令和7年12月1日。
この施行日より前に準確定申告を行う場合、

1、施行されていないため基礎控除額を48万円で準確定申告
2、令和7年12月1日以後に所得税の再計算(更正の請求)

の2段階の手続きが必要となります。
更正の請求の期限は、令和7年12月1日から5年以内です。

基礎控除の修正案と年末調整

基礎控除に修正案が出されています。

合計所得金額(給料など)に応じて基礎控除を追加でプラスするというものです。

参考リンク
所得税の基礎控除の修正案

基礎控除は、確定申告だけではなく年末調整にも関係がある規定なので、一緒に改正されています。

修正案を確認してみましょう。

2 前項の規定の適用がある場合における所得税法第百九十条の規定の適用については、同条第二号ヘ中「の規定」とあるのは、「及び租税特別措置法第四十一条の十六の二第一項(令和七年分以後の各年分の基礎控除等の特例)の規定」とする。

所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案

修正案の基礎控除が適用される場合の年末調整については、規定を読み替える必要があります。読み替えてみましょう。

ヘ 給与所得者の基礎控除申告書に記載されたその居住者の合計所得金額の見積額に応じ、第八十六条(基礎控除)及び租税特別措置法第四十一条の十六の二第一項(令和七年分以後の各年分の基礎控除等の特例)の規定に準じて計算した基礎控除の額に相当する金額

修正案の基礎控除も年末調整に反映させるという意味です。

年末調整に反映できるのはいつからでしょうか?
経過措置を確認してみましょう。

(令和七年分以後の各年分の基礎控除等の特例に関する経過措置)
第三十七条の二 新租税特別措置法第四十一条の十六の二第二項の規定により読み替えられた新所得税法第百九十条(第二号ヘに係る部分に限る。)の規定は、令和七年中に支払うべき給与等でその最後に支払をする日が同年十二月一日以後であるものについて適用し、同年中に支払うべき給与等でその最後に支払をする日が同年十二月一日前であるものについては、なお従前の例による。

所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案

修正案の経過措置を適用する年末調整は、令和7年中に支払うべき給与等で最後に支払をする日が「令和7年12月1日以後」の場合に適用します。

令和7年12月1日より前の年末調整については、修正案の基礎控除が反映できないことになります。

修正案の基礎控除を反映させるためには、令和7年12月1日以後に所得税の確定申告や更正の請求が必要になるのでしょうね。

参考規定

年末調整に関する基礎控除の経過措置
・令和7年12月1日以後の給料の支払いから適用

2 新所得税法第百九十条(第二号ホに係る部分に限る。)及び別表第五の規定は、令和七年中に支払うべき給与等でその最後に支払をする日が同年十二月一日以後であるものについて適用し、同年中に支払うべき給与等でその最後に支払をする日が同年十二月一日前であるものについては、なお従前の例による。

所得税法等の一部を改正する法律案

所得税法の基礎控除に関する改正による更正の請求は、令和7年12月1日から5年以内。

2 令和七年十二月一日前に同年分の所得税につき所得税法第百二十五条又は第百二十七条(これらの規定を同法第百六十六条において準用する場合を含む。)の規定による確定申告書を提出した者及び同日前に同年分の所得税につき決定を受けた者は、当該確定申告書に記載された事項又は当該決定に係る事項(これらの事項につき同日前に更正があった場合には、その更正後の事項)につき新所得税法第八十六条の規定の適用により異動を生ずることとなったときは、その異動を生ずることとなった事項について、同日から五年以内に、税務署長に対し、国税通則法第二十三条第一項の更正の請求をすることができる。

所得税法等の一部を改正する法律案

租税特別措置法の基礎控除に関する改正による更正の請求は、令和7年12月1日から5年以内。

3 令和七年十二月一日前に同年分の所得税につき所得税法第百二十五条又は第百二十七条の規定による確定申告書を提出した者及び同日前に同年分の所得税につき同法第二条第一項第四十四号に規定する決定を受けた者は、当該確定申告書に記載された事項又は当該決定に係る事項(これらの事項につき同日前に同項第四十三号に規定する更正があった場合には、その更正後の事項)につき新租税特別措置法第四十一条の十六の二第一項の規定の適用により異動を生ずることとなったときは、その異動を生ずることとなった事項について、同日から五年以内に、税務署長に対し、国税通則法第二十三条第一項の更正の請求をすることができる。

所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案
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