今回は、所得税の賃上げ促進税制のうち
全事業者向けの特例の追加控除を確認してみましょう。
所得税の取扱い
・前年の従業員に対する給料
・本年の従業員に対する給料
この2つを比較して増加(賃上げ)した部分に対して、
所得税を減らす特例を「賃上げ促進税制」といいます。
所得税の賃上げ促進税制については、次の3つの特例があります。
・全事業者向けの特例
・中堅事業者向けの特例
・中小事業者向けの特例
(法人税にも同様の特例があります。)
それぞれの事業者向けの特例について、通常の控除とは別に追加で控除できる特例があります。今回は、全事業者向けの特例の追加控除を確認してみましょう。
追加控除の種類は、3つあります。
1、給料に関する特例
2、教育訓練費に関する特例
3、プラチナくるみん、プラチナえるぼしに関する特例
給料に関する特例
給料に関する特例は、
・継続雇用者給与等支給増加割合≧4%以上
の場合に所得税の控除割合が5%追加されます。
継続雇用者給与等支給増加割合≧5%以上の場合は、所得税の控除割合が10%、
継続雇用者給与等支給増加割合≧7%以上の場合は、所得税の控除割合が15%
追加されます。
参考リンク、継続雇用者給与等支給増加割合について
・所得税の賃上げ促進税制_全事業者向けの特例
教育訓練費に関する特例
教育訓練費に関する特例は、2つの要件を満たす必要があります。
1つ目は、
・教育訓練費の増加割合≧10%
の場合です。
教育訓練費の増加割合は、次の算式で計算します。
教育訓練費(本年)-比較教育訓練費(前年)(=増加額)
——————————————————————
比較教育訓練費(前年)
例えば、次の場合
・教育訓練費(本年) 120万円
・比較教育訓練費(前年) 100万円
120万円(本年)-100万円(前年)=20万円÷100万円(前年)=20%
10%以上に該当するため、要件の1つを満たします。
2つ目は、
・教育訓練費÷雇用者給与等支給額(従業員給料)≧0.05%
の場合です。
例えば、次の場合
・教育訓練費(本年) 120万円
・雇用者給与等支給額(本年) 2000万円
120万円(教育訓練費)÷2000万円(従業員給料)=0.06
0.05以上に該当するため、要件の1つを満たします。
2つの要件を満たした場合は、所得税の控除割合が5%追加されます。
教育訓練費に充てるために補助金などを受け取った場合は、
教育訓練費から受け取った補助金をマイナスする必要があります。
実際に負担した教育訓練費で判定することになります。
プラチナくるみん、プラチナえるぼしに関する特例
賃上げ税制を利用する年末時点で、
・プラチナくるみん認定
・プラチナえるぼし認定
のいずれかを取得している場合は、所得税の控除割合が5%追加されます。
(両方取得したとしても10%にはなりません。)
参考情報
くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/kurumin/index.html
厚生労働省、女性活躍推進法特集ページ
(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html
控除割合のまとめ
通常の場合 10%
1、給料特例の控除割合
・継続雇用者給与等支給増加割合≧4%以上、+5%
・継続雇用者給与等支給増加割合≧5%以上、+10%
・継続雇用者給与等支給増加割合≧7%以上、+15%
2、教育訓練費特例の控除割合、+5%
3、プラチナくるみん、プラチナえるぼし特例の控除割合 +5%
追加控除は併用できます。
例えば、次の要件を満たす場合は、
・通常 10%
・給料特例 +15%
・教育訓練費特例 +5%
・プラチナくるみん特例 +5%
控除割合は合計35%になります。
参考規定
賃上げ促進税制、全事業者向けの特例の追加控除
一 継続雇用者給与等支給増加割合が百分の四以上であること 百分の五(継続雇用者給与等支給増加割合が百分の五以上である場合には百分の十とし、継続雇用者給与等支給増加割合が百分の七以上である場合には百分の十五とする。)
二 次に掲げる要件の全てを満たすこと 百分の五
イ 当該個人のその年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入される教育訓練費の額(その教育訓練費に充てるため他の者(その個人が非居住者である場合の所得税法第百六十一条第一項第一号に規定する事業場等を含む。第五項第三号において同じ。)から支払を受ける金額がある場合には、当該金額を控除した金額。以下この条において同じ。)からその比較教育訓練費の額を控除した金額の当該比較教育訓練費の額に対する割合が百分の十以上であること。
ロ 当該個人のその年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入される教育訓練費の額の当該個人の雇用者給与等支給額に対する割合が百分の〇・〇五以上であること。
三 その年十二月三十一日において次に掲げる者のいずれかに該当すること 百分の五
イ 次世代育成支援対策推進法(平成十五年法律第百二十号)第十五条の三第一項に規定する特例認定一般事業主
ロ 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成二十七年法律第六十四号)第十三条第一項に規定する特例認定一般事業主租税特別措置法施行令第10条の5の4第1項第1号から第3号まで、施行日令和6年9月2日