暗号資産を貸し付けた場合の消費税の取扱い


今回は、暗号資産を貸し付けた場合の消費税の取り扱いです。

内容

暗号資産を譲渡した場合は消費税が非課税となります。
暗号資産を貸し付けた場合も非課税だと思っていましたが、
非課税にならず課税されると聞いて驚きました。

いつものように規定を見てみると確かに
「支払手段に類するものとして暗号資産の譲渡」については、
別表第1(非課税)に列挙されていますが、
「暗号資産の貸付け」については、別表第1(非課税)に列挙されていません。

ということで、暗号資産の貸付けの対価には消費税がかかります。

事業としての判断

疑問点が1つ。消費税の課税要件の
「事業として」の判断が難しいかもしれません。

暗号資産の譲渡を継続的に行っている場合は、
「事業として」にあてはまると思います。
※「事業として」にあてはまっても消費税の計算上は影響ありません。

この譲渡に付随して暗号資産の貸付けを行っている場合は、
事業付随行為として、貸付けに対して消費税がかかってくると思います。

暗号資産の譲渡がなくても、
暗号資産を大量に貸し付けている場合の貸付けは、
「事業として」にあてはまりそうですね。

暗号資産の貸借とインボイス

ここでまた疑問。
暗号資産の仕入れは、売り手が非課税のため、買い手も課税対象外です。
では、暗号資産を借りたときはどうなるか。

暗号資産の貸付けが課税売上げとなるため、
暗号資産の借り入れは課税仕入れになるでしょう。

で、貸し手はインボイスを発行するような流れになるのでしょうか?
譲渡が非課税だから気にしてないような気がします。

暗号資産と輸出免税

ここでまた疑問。
暗号資産の貸付けで輸出免税が適用される可能性があるのかどうか。

輸出免税の判定の前に、国内取引の判定が必要です。
暗号資産の所在場所が明らかでないとすれば、
貸付けした人の「事務所等の所在地」が国内であれば、
国内取引に該当します。

仮に国内取引に該当すれば、輸出免税の適用要件にあてはまらないので、
貸した相手が非居住者であっても、課税になりそうですね。
通貨のようで通貨でないため、違和感ありますが。

2023/4/7_追加

輸出取引等の範囲

 第六条第一項第四号から第八号までに掲げる資産の譲渡又は貸付けで非居住者に対して行われるもの

消費税法施行令17条2項

四 鉱業権若しくは租鉱権、採石権その他土石を採掘し、若しくは採取する権利(以下この号において「採石権等」という。)又は樹木採取権 鉱業権に係る鉱区若しくは租鉱権に係る租鉱区、採石権等に係る採石場又は樹木採取権に係る樹木採取区の所在地
五 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、回路配置利用権又は育成者権(これらの権利を利用する権利を含む。) これらの権利の登録をした機関の所在地(同一の権利について二以上の国において登録をしている場合には、これらの権利の譲渡又は貸付けを行う者の住所地)
六 公共施設等運営権 公共施設等運営権に係る民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成十一年法律第百十七号)第二条第一項(定義)に規定する公共施設等の所在地
七 著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずる権利を含む。)又は特別の技術による生産方式及びこれに準ずるもの(以下この号において「著作権等」という。) 著作権等の譲渡又は貸付けを行う者の住所地
八 営業権又は漁業権若しくは入漁権 これらの権利に係る事業を行う者の住所地

消費税法施行令6条1項4号から8号
参考規定

 金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第一項(定義)に規定する有価証券その他これに類するものとして政令で定めるもの(ゴルフ場その他の施設の利用に関する権利に係るものとして政令で定めるものを除く。)及び外国為替及び外国貿易法第六条第一項第七号(定義)に規定する支払手段(収集品その他の政令で定めるものを除く。)その他これに類するものとして政令で定めるもの(別表第二において「有価証券等」という。)の譲渡

消費税法別表第一

(有価証券に類するものの範囲等)
第九条
 法別表第一第二号に規定する支払手段に類するものとして政令で定めるものは、資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第五項(定義)に規定する暗号資産及び国際通貨基金協定第十五条に規定する特別引出権とする。

消費税法施行令

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