法人税のリース譲渡の経過措置


今回は、法人税のリース譲渡の経過措置の原則的な取扱いを確認してみましょう。

原則的な取扱い

リース会計基準の変更に伴い、税務上の取扱いも変わります。

取扱いが変わる時期は、令和7年4月1日ですが、一定の経過措置が設けられています。今回は、原則的な経過措置の法案を確認してみましょう。

参考法案

3 前項の規定によりなおその効力を有するものとされる旧法人税法(以下この項及び次項において「旧効力法人税法」という。)第六十三条第一項本文又は第二項本文(旧法人税法第百四十二条第二項の規定によりこれらの規定に準じて計算する場合を含む。以下この項及び次項において同じ。)の規定の適用を受ける法人のその適用に係る旧リース譲渡に係る収益の額及び費用の額が次の各号に掲げる場合に該当する場合には、当該収益の額及び費用の額(当該各号に定める事業年度開始の日前に開始した各事業年度の所得の金額又は同日前に開始した各連結事業年度(所得税法等の一部を改正する法律(令和二年法律第八号)第三条の規定による改正前の法人税法第十五条の二第一項に規定する連結事業年度をいう。第二号において同じ。)の連結所得(所得税法等の一部を改正する法律(令和二年法律第八号)第三条の規定による改正前の法人税法第二条第十八号の四に規定する連結所得をいう。第二号において同じ。)の金額の計算上益金の額及び損金の額に算入されるものを除く。次項においてそれぞれ「未計上収益額」及び「未計上費用額」という。)は、当該各号に定める事業年度(次項及び第五項において「基準事業年度」という。)の所得の金額の計算上、益金の額及び損金の額に算入する。
以下省略

所得税法等の一部を改正する法律案

令和7年4月1日より前に税務上のリース譲渡を行ったことがある法人については、一定期間、前の法令の効力がそのまま残ります。「旧効力法人税法」といいます。

この旧効力法人税法の第63条
・第1項本文、延払基準の特例
・第2項本文、利息相当額の特例
の規定の適用を受ける法人が対象となります。

この法人の旧リース譲渡の
・未計上収益額(まだ益金に算入されていない部分の金額)
・未計上費用額(まだ損金に算入されていない部分の金額)
を基準事業年度の益金の額と損金の額に算入する必要があります。

未計上収益額と未計上費用額を計上するパターンは、2つあります。

延払基準を止めた場合

1つ目は、延払基準を止めた場合です。

この場合は、延払基準の経理をしなかった決算に係る事業年度で、未計上収益額と未計上費用額を計上することになります。

法案を確認してみましょう。

一 当該旧リース譲渡(旧効力法人税法第六十三条第一項本文の規定の適用に係るものに限る。)に係る収益の額及び費用の額につき令和九年三月三十一日以前に開始した経過措置事業年度の確定した決算(法人税法第七十二条第一項又は第百四十四条の四第一項若しくは第二項に規定する期間(通算子法人にあっては、同法第七十二条第五項第一号に規定する期間)について同法第七十二条第一項各号又は第百四十四条の四第一項各号若しくは第二項各号に掲げる事項を記載した中間申告書を提出する場合には、その期間に係る決算。次号ロにおいて同じ。)において旧効力法人税法第六十三条第一項に規定する延払基準の方法により経理しなかった場合 その経理しなかった決算に係る事業年度

所得税法等の一部を改正する法律案

「令和9年3月31日以前に開始した経過措置事業年度の確定した決算」とありますので、例えば、9月末決算法人の場合

令和7年10月1日~令和8年9月30日の事業年度に延払基準の経理を止めた場合は、この事業年度(基準事業年度)に未計上部分を計上する必要があります。

令和8年10月1日~令和9年9月30日の事業年度に延払基準の経理を止めた場合は、この事業年度(基準事業年度)に未計上部分を計上する必要があります。

確定した決算のカッコ書きには、仮決算について規定されています。

延払基準を止めなかった場合

1つ目は、延払基準を止めなかった場合です。

法案を確認してみましょう。

二 当該旧リース譲渡に係る収益の額及び費用の額のうち、令和九年三月三十一日以前に開始した各事業年度の所得の金額又は同日以前に開始した各連結事業年度の連結所得の金額の計算上益金の額及び損金の額に算入されなかったものがある場合(次に掲げる場合に該当する場合を除く。) 同日後最初に開始する事業年度

所得税法等の一部を改正する法律案

令和9年3月31日「以前」に始まった事業年度で
・益金算入
・損金算入
しなかったものがある場合は、

令和9年3月31日「後」に始まる事業年度に未計上部分を計上する必要があります。

例えば、9月末決算法人の場合は、令和9年10月1日~令和10年9月30日の事業年度(基準事業年度)に未計上部分を計上する必要があります。

ただし、「次に掲げる場合に該当する場合を除く。」とありますので、法案の続きを確認してみましょう。

イ 前号に掲げる場合
ロ 当該旧リース譲渡(旧効力法人税法第六十三条第一項本文の規定の適用に係るものに限る。)に係る収益の額及び費用の額につき令和九年三月三十一日後最初に開始する経過措置事業年度の確定した決算において同項に規定する延払基準の方法(当該経過措置事業年度以後の各事業年度において当該旧リース譲渡の対価の額のうちに含まれる利息に相当する金額のみを当該各事業年度の収益の額とする方法に限る。)により経理した場合

所得税法等の一部を改正する法律案

イの前号に掲げる場合とは、延払基準の経理を止めた場合です。

ロは、令和9年3月31日の後で最初に始まる経過措置事業年度の決算で、延払基準の方法を変更した場合です。利息相当額のみを収益の額とする方法に変更する必要があります。

今回確認した経過措置は、原則的なもので、
・所得税の5年均等処理
・消費税の10年均等処理
のような取扱いはありません。

PAGE TOP