今回は、法人税のリース譲渡がどう変わるのかを確認してみましょう。
リース譲渡の特例が廃止される。
リース会計基準の変更に併せて、法人税の取扱いが変わります。具体的には、リース資産を販売した場合(リース譲渡)の特例が廃止されます。
急に取扱いが変わると取引や法人税に影響が生じるため、一定の期間、例外が設けられています。経過措置といいます。
参考リンク
・所得税のリース譲渡はどう変わる?
・所得税のリース譲渡の経過措置
主な経過措置は2つありますが、今回は原則的な取扱いを確認してみましょう。
経過措置の取扱い
法案を確認してみましょう。
(リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度に関する経過措置)
所得税法等の一部を改正する法律案
第十七条 施行日前に旧法人税法第六十三条第一項に規定するリース譲渡を行った法人の施行日前に開始した事業年度の所得に対する法人税については、なお従前の例による。
対象となる法人は、施行日前にリース譲渡を行った法人です。
この法人の施行日前に始まった事業年度の法人税については、改正前の法律が適用できます。
例えば、9月30日決算法人の場合
・開始日、令和6年10月1日
—-リース譲渡—-
・施行日、令和7年4月1日
・決算日、令和7年9月30日
1、令和7年4月1日より前のリース譲渡
2、令和7年4月1日より前に始まった事業年度
2つの要件を満たしますので、リース譲渡の特例が利用できます。
リース譲渡を行ったことがある場合
法案を確認してみましょう。長い規定ですので、途中で区切ります。
2 施行日前に旧法人税法第六十三条第一項に規定するリース譲渡を行ったことがある法人(施行日前に行われた同項に規定するリース譲渡に係る契約の移転を受けた法人を含む。)の施行日以後に開始する事業年度(次項及び第四項において「経過措置事業年度」という。)の旧リース譲渡(令和九年三月三十一日以前に開始した事業年度において行われた同条第一項に規定するリース譲渡をいう。以下この条において同じ。)に係る所得の金額の計算については、旧法人税法第六十三条(旧法人税法第百四十二条第二項の規定により準じて計算する場合を含む。)の規定は、なおその効力を有する。この場合において、以下省略
所得税法等の一部を改正する法律案
施行日より前にリース譲渡を行ったことがある法人が対象です。
(行ったことがない法人は対象外)
施行日以後に始まる事業年度を「経過措置事業年度」といいます。
例えば、9月30日決算法人の場合
・令和6年10月1日~令和7年4月1日(施行日)~令和7年9月30日
となりますので、
・令和7年10月1日~令和8年9月30日
・令和8年10月1日~令和9年9月30日
などが経過措置事業年度になります。
令和9年3月31日以前に始まった事業年度中のリース譲渡を「旧リース譲渡」といいます。
例えば、9月30日決算法人の場合
・令和7年10月1日~令和8年9月30日
・令和8年10月1日~令和9年9月30日
の期間中のリース譲渡が旧リース譲渡になります。
まとめると、経過措置事業年度の旧リース譲渡については、削除予定の規定(リース譲渡の特例)の効力が残ります。

令和7年の改正を考慮する必要があるため、読み替えが必要です。
延払基準の特例の読替え
読替規定を確認してみましょう。
(所得税と異なり、読替規定が長いため区切って確認します。)
省略
所得税法等の一部を改正する法律案
この場合において、旧法人税法第六十三条第一項ただし書中「又は第三項若しくは第四項」とあるのは「(所得税法等の一部を改正する法律(令和七年法律第▼▼▼号。以下この項及び次項において「令和七年改正法」という。)附則第十七条第三項第一号(リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度に関する経過措置)に掲げる場合に該当する場合を除く。)又は第三項若しくは第四項の規定若しくは令和七年改正法附則第十七条第三項若しくは第四項」と、「これらの規定の適用を受けた事業年度後」とあるのは「第三項若しくは第四項の規定の適用を受けた事業年度後若しくは同条第三項に規定する基準事業年度以後」と、以下省略
実際に読み替えてみましょう。
(リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度)
第六十三条 内国法人が、第六十四条の二第三項(リース取引に係る所得の金額の計算)に規定するリース取引による同条第一項に規定するリース資産の引渡し(以下この条において「リース譲渡」という。)を行つた場合において、そのリース譲渡に係る収益の額及び費用の額につき、そのリース譲渡の日の属する事業年度以後の各事業年度の確定した決算において政令で定める延払基準の方法により経理したとき(当該リース譲渡につき次項の規定の適用を受ける場合を除く。)は、その経理した収益の額及び費用の額は、当該各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額及び損金の額に算入する。ただし、当該リース譲渡に係る収益の額及び費用の額につき、同日の属する事業年度後のいずれかの事業年度の確定した決算において当該延払基準の方法により経理しなかつた場合(所得税法等の一部を改正する法律(令和七年法律第▼▼▼号。以下この項及び次項において「令和七年改正法」という。)附則第十七条第三項第一号(リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度に関する経過措置)に掲げる場合に該当する場合を除く。)又は第三項若しくは第四項の規定若しくは令和七年改正法附則第十七条第三項若しくは第四項の規定の適用を受けた場合は、その経理しなかつた決算に係る事業年度後又は第三項若しくは第四項の規定の適用を受けた事業年度後若しくは同条第三項に規定する基準事業年度以後の事業年度については、この限りでない。
1、延払基準の方法により経理しなかった場合
「令和7年改正法附則第17条第3項第1号に掲げる場合」に該当する場合を除く。
2、第3項、第4項の規定の適用を受けた場合
3、令和7年改正法附則第17条第3項、第4項の規定の適用を受けた場合
上記3つが、ただし書きの要件となります。
・第3項の規定は、非適格株式交換等があった場合の特例
・第4項の規定は、通算制度の開始・加入・離脱等があった場合の特例
ですので、通常は関係ありません。
上記3つの要件を満たした場合、
1、延払基準の経理をしなかった事業年度後の事業年度
2、第3項、第4項の規定の適用を受けた事業年度後の事業年度
3、令和7年改正法附則第17条第3項に規定する基準事業年度「以後」の事業年度
の3つについては、リース譲渡の特例から外れます。
利息相当額の特例の読替え
読替規定を確認してみましょう。
(所得税と異なり、読替規定が長いため区切って確認します。)
省略
所得税法等の一部を改正する法律案
同条第二項ただし書中「又は第四項」とあるのは「若しくは第四項の規定又は令和七年改正法附則第十七条第三項若しくは第四項」と、「これらの規定の適用を受けた事業年度後」とあるのは「次項若しくは第四項の規定の適用を受けた事業年度後又は同条第三項に規定する基準事業年度以後」と、以下省略
実際に読み替えてみましょう。
2 内国法人がリース譲渡を行つた場合には、その対価の額を政令で定めるところにより利息に相当する部分とそれ以外の部分とに区分した場合における当該リース譲渡の日の属する事業年度以後の各事業年度の収益の額及び費用の額として政令で定める金額は、当該各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額及び損金の額に算入する。ただし、当該リース譲渡に係る収益の額及び費用の額につき、当該リース譲渡の日の属する事業年度後のいずれかの事業年度において次項若しくは第四項の規定又は令和七年改正法附則第十七条第三項若しくは第四項の規定の適用を受けた場合は、次項若しくは第四項の規定の適用を受けた事業年度後又は同条第三項に規定する基準事業年度以後の事業年度については、この限りでない。
ただし書きには、利息相当額の特例が適用できない場合が規定されています。
1、第3項、非適格株式交換等があった場合の特例
2、第4項、通算制度の開始・加入・離脱等があった場合の特例
3、令和7年改正法附則第17条第3項
4、令和7年改正法附則第17条第4項
の規定の適用を受けた場合は、
1、第3項、非適格株式交換等の適用を受けた事業年度後の事業年度
2、第4項、通算制度の開始・加入・離脱等の適用を受けた事業年度後の事業年度
3と4、令和7年改正法附則第17条第3項に規定する基準事業年度「以後」の事業年度
については、利息相当額の特例から外れます。
今回確認した経過措置は、原則的なもので、
・所得税の5年均等処理
・消費税の10年均等処理
のような取扱いはありません。