消費税のリース譲渡の読替規定、10年均等計上する場合


今回は、消費税のリース譲渡の読替規定のうち、10年均等計上する場合を確認してみましょう。

10年均等計上の選択が可能

先に法案を確認してみましょう。

5 旧効力消費税法第十六条第一項又は第二項本文の規定の適用を受ける事業者のその適用に係る旧リース譲渡が、前二項に規定する場合のいずれかに該当する場合には、これらの規定にかかわらず、当該旧リース譲渡のうち、第一号に掲げる金額(同号に掲げる金額が第二号に掲げる金額を超える課税期間にあっては、同号に掲げる金額)に係る部分については、当該事業者が不適用基準事業年度等又は満了基準事業年度等以後の各年又は各事業年度の末日の属する各課税期間(以下この項及び次項において「適用課税期間」という。)において、資産の譲渡等を行ったものとみなすことができる。
一 省略
二 省略

所得税法等の一部を改正する法律案

リース譲渡の経過措置を整理します。
・第1項、施行日前のリース譲渡の取扱い
・第2項、施行日前にリース譲渡を行ったことがある事業者の取扱い
・第3項、延払基準を止めた場合
・第4項、延払基準を止めなかった場合

「旧リース譲渡が、前2項に規定する場合のいずれかに該当する場合には、」とあります。

前2項は、
・第3項、延払基準を止めた場合
・第4項、延払基準を止めなかった場合
を指します。

「これらの規定にかかわらず」とありますので、今回確認する法案は例外です。

旧リース譲渡のうち、第1号の金額(一定の場合は第2号の金額)は、「適用課税期間」に、資産の譲渡等を行ったものとすることが可能です。

適用課税期間とは、
・不適用基準事業年度等
・満了基準事業年度等
以後の
・各年
・各事業年度
の末日の属する各課税期間をいいます。

延払基準を止めても止めなくても、一定の時期が到来したときに未計上の残額を一括計上するのが原則ですが、消費税については未計上の残額を一括計上しないで、分割計上が選択できます。

分割計上する金額は、第1号と第2号に規定されています。確認してみましょう。

第1号の金額と第2号の金額

原則として、第1号の金額を計上します。

省略
一 当該旧リース譲渡に係る賦払金の額で、不適用基準事業年度等又は満了基準事業年度等の初日以後にその支払の期日が到来するもの(当該初日の前日以前に既に支払を受けたものを除く。)に係る部分の金額(以下この項において「未計上譲渡額」という。)を百二十で除し、これに当該適用課税期間が含まれる年又は事業年度の月数を乗じて計算した金額(当該未計上譲渡額に当該年又は当該事業年度において資産の譲渡等を行ったものとみなされた部分に係る金額がある場合には、当該金額を控除した残額)
省略

所得税法等の一部を改正する法律案

・不適用基準事業年度等
・満了基準事業年度等
の初日以後に支払期日が到来するものを「未計上譲渡額」といいます。

この未計上譲渡額を120(10年)で割ります。

割った金額に適用課税期間が含まれる
・年
・事業年度
の月数をかけて計算した金額が第1号の金額です。

最後のカッコ書きは、
・その年
・その事業年度
で計上した部分については、2重計上しないようにマイナスする。
という意味です。

第2号の金額は、最後の期間の取扱いです。

10年均等計上額(第1号)>最後に余った金額(第2号)の場合は、10年均等計上額ではなく、余った金額を売上計上する必要があります。

参考、第2号の金額

二 当該未計上譲渡額から当該未計上譲渡額のうち当該適用課税期間前の各課税期間において資産の譲渡等を行ったものとみなされた部分に係る金額を控除した金額

所得税法等の一部を改正する法律案
最後のカッコ書きの意味

個人の場合は暦年ごとに、法人の場合は事業年度ごとに税金を計算しますが、消費税は課税期間ごとに税金を計算します。

課税期間を短縮している場合、1つの年や事業年度に
・適用課税期間以外の課税期間
・適用課税期間
が混在することがあります。
(例えば、途中で延払基準を止めた場合)

例えば、次の場合で計算してみましょう。
・未計上譲渡額 3600
・毎月15ずつ売上

個人事業者の課税期間が、3月に短縮
・適用課税期間以外の課税期間、1月-3月、4月-6月、7月-9月
・適用課税期間、10月-12月

第1号の金額 3600÷120=30×12月=360
カッコ書きの金額 15×9月=135

10年均等計上額は360ですが、既に計上している金額135をマイナスして残りの225を売上として計上が可能という意味です。

10年均等計上は、付記が必要

10年均等計上は、10年均等計上の特例を適用しようとする
・最初の適用課税期間
の確定申告書にその旨を付記する必要があります。

参考規定など

付記要件あり

6 前項の規定の適用を受けようとする事業者は、同項の規定の適用を受けようとする最初の適用課税期間に係る消費税法第四十五条第一項の規定による申告書(当該申告書に係る国税通則法第十八条第二項に規定する期限後申告書を含む。)にその旨を付記するものとする。

所得税法等の一部を改正する法律案

10年均等計上の月数計算は、切捨て

7 第五項第一号の月数は、暦に従って計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを切り捨てる。

所得税法等の一部を改正する法律案

政令

8 第二項の規定の適用を受ける個人事業者が死亡した場合、同項の規定の適用を受ける法人が合併により消滅した場合若しくは同項の規定の適用を受ける法人が分割により旧リース譲渡に係る事業を消費税法第二条第一項第六号の二に規定する分割承継法人に承継させた場合又は第二項の規定の適用を受ける事業者が同法第九条第一項本文の規定の適用を受けることとなった場合における旧リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例その他前各項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

所得税法等の一部を改正する法律案

・個人事業者がなくなった場合
・法人が合併により消滅した場合
・法人が分割により旧リース譲渡の事業を承継させた場合
・事業者が免税事業者に変わった場合など
については、政令に規定されます。

消費税の10年均等計上の規定は、任意規定です。10年均等計上を選択した後に途中でやめる場合の計算なども政令に規定されるのかなと。

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