今回は、消費税の現金基準を止める場合の調整計算のうち、
売掛金の減少と前受金の増加を確認してみましょう。
調整しきれない場合
現金基準を止める場合、売上や課税仕入れの計上不足が生じるため、
最後に現金基準で計算する期間(課税期間)で調整が必要となります。
調整方法は、次の4つ。
・売掛金等の残高が増加した場合は、売上のプラス
・買掛金の残高が増加した場合は、課税仕入れのプラス
・前受金の残高が減少した場合は、売上のプラス
・前払金の残高が減少した場合は、課税仕入れのプラス
売掛金等の残高は、
・現金基準を選択する直前の金額(例1,000)
・現金基準を止める直前の金額(例2,500)
の差額(2,500-1,000=1,500)で計算します。
上記4つの調整については、プラスの残高がある場合の取扱いです。
マイナスの残高がある場合は、売上のマイナスが必要となります。
具体的には、
・売掛金等が減少した場合は、売上のマイナス
・前受金が増加した場合は、売上のマイナス
の調整が必要です。
仕訳でイメージしてみますと、
・売上 ×××円 / 売掛金等 ×××円
・売上 ×××円 / 前受金 ×××円
となります。
参考規定
2 令第四十条第一項第一号又は前項第一号の規定による控除をして控除しきれない金額がある場合は、これらの控除しきれない金額の合計額は、法第十八条第一項の規定の適用を受けないこととなつた課税期間の直前の課税期間における資産の譲渡等に係る対価の額の合計額から控除する。
消費税法施行規則第12条第2項、施行日令和6年4月1日
売上の種類に応じて計算
売上の調整については、
・10%課税売上げ
・免税売上げ
・軽減8%課税売上げ
・非課税売上
に分けて計算する必要があります。
例えば、10%課税売上げの売掛金等の増加と
軽減8%課税売上げの売掛金等の減少は、
別々に調整することになります。
仕訳でイメージしてみますと、
・売掛金等 ×××円 / 10%課税売上げ ×××円
・軽減8%課税売上げ ×××円 / 売掛金等 ×××円
となります。
参考規定
3 令第四十条第一項第一号、第一項第一号及び前項の規定による控除は、課税資産の譲渡等(軽減対象課税資産の譲渡等に該当するものを除く。)に係るものと軽減対象課税資産の譲渡等に係るものと課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に係るものとにそれぞれ区分してこれらの規定を適用するものとする。
消費税法施行規則第12条第3項、施行日令和6年4月1日
マイナスの売上調整
売上のマイナス調整が、
・10%課税売上げ
・軽減8%課税売上げ
の場合は、売上の返品等があった場合の調整が必要となります。
例えば、次の場合で確認してみましょう。
・現金基準を選択する直前の金額(例1,100、消費税等10%)
・現金基準を止める直前の金額(例330、消費税等10%)
発生基準の仕訳
売掛金等 1,100 / 課税売上げ1,100 → 売上として集計済
現金基準の仕訳
現預金 2,200 / 課税売上げ 2,200 → 売上として集計
現預金 770 / 売掛金等 770 → 売上として集計
現金基準の課税売上げ
2,200+770=2,970
売掛金等を回収した部分770が売上の2重計上となるため、
マイナス調整が必要です。
売上のマイナス調整
330-1,100=△770
マイナス調整後の課税売上げ
2,970-770=2,200
消費税を計算してみましょう。
課税売上げに対する消費税
2,970÷1.1=2,700×10%=270
売上のプラスと売上のマイナスは、
原則として別々に計算する必要があります。
売上のマイナス調整
770÷1.1=700×10%=70
納める消費税
270-70=200
参考規定
4 第二項の規定による控除をして控除しきれない金額があり、かつ、当該金額が課税資産の譲渡等に係るものである場合には、当該金額は、同項に規定する直前の課税期間において行つた法第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等をした金額とみなす。
消費税法施行規則第12条第4項、施行日令和6年4月1日