今回は、特定損金算入限度額の計算を確認します。
3つの割合
欠損金の通算では、次の3つの割合を使用します。
- 特定損金算入限度額で使用する割合(特定損金算入割合、定義なし)
- 非特定欠損金配賦額の配賦割合
- 非特定損金算入限度額で使用する割合(非特定損金算入割合、定義あり)
今回は、1の特定損金算入限度額の計算(使用する割合)を確認します。
以下、理解のために、正確性を優先していません。
特定損金算入限度額で使用する割合
特定損金算入限度額の算式
2、損金算入限度額の合計額 1000
1、各社の特定欠損金額 × -------------------
400 3、特定欠損金額の合計額 800
=500
最初、QAや規定を確認したときに、
損金算入限度額を按分する場合、次の算式をイメージしていました。
限度額の合計額を欠損金額の割合で按分するイメージです。
1、各社の特定欠損金額 400
2、損金算入限度額の合計額 × ----------------
1000 3、特定欠損金の合計額 800
=500
前者の算式が正解ですが、その理由は「割合が1を超える場合には1」とするというルールを使用するためです。グループ全体の損金算入限度額が損金算入の上限という意味です。
参考情報
通算法人の過年度の欠損金額の当初申告における損金算入額の計算方法
グループ通算制度に関するQ&A(令和2年6月)(令和2年8月、令和3年6月改訂、令和4年7月改訂)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/group_faq/54.htm
限度額の合計額>欠損金額の合計額の場合
上記の金額で説明しますと、
限度額1000>欠損金額800となり、欠損金額が限度額を下回るため、
欠損金額800を損金算入できれば問題ありません。
分子、限度額の合計額1000
|--------------------|
分母、欠損金額の合計額800
|-------------|
そのため、割合が1を超える場合は1とします。
結果、各社の欠損金額400×1(限度額1000>欠損金額800→100%)
=400が特定損金算入限度額となります。
限度額の合計額<欠損金額の合計額の場合
反対に、限度額の方が少ない場合、
例えば、限度額500<欠損金額800となり、欠損金額が限度額を超えるため、
欠損金の損金算入に制限を設ける必要があります。
分子、限度額の合計額500
|--------|
分母、欠損金額の合計額800
|-------------|
欠損金額の合計額は800ですが、限度額の合計額は500となるため、
いくら損金算入できるのか?を計算する必要があります。
この割合が特定欠損金損金算入割合(定義なし)です。
上記の場合は、500/800=62.5%となります。
最後に各社の特定欠損金額に割合をかけて
特定損金算入限度額を計算します。
(各社の欠損金額400×62.5%=250)
考え方
中小法人に該当しない場合の考え方
内容 | P社 | S社 | 合計 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
1、特定欠損金額 | 300 | 150 | 450 | |
2、所得 | 200 | 400 | 600 | |
3、所得×50%= 損金算入限度額 | 100 | 200 | 300 ②分子 法法64の7①三イ(1) | 中小法人等以外の場合は、50%が上限となります。 |
4、1と2を比較して少ない金額 | 200 ① 法64の7①三イ柱書 | 150 ① 法64の7①三イ柱書 | 350 ③分母 法法64の7①三イ(2)(3) | 特定欠損金額と欠損控除前所得金額(限度額)を比較します。 |
5、特定損金算入限度額の割合(特定損金算入割合) | - | - | ②/③ =300/350 =約86%(R) | 各社合計で見れば350になりますが、全体でみると300までとなります。この割合が約86%です。 |
6、特定損金算入限度額 | 200×R =171 | 150×R =129 | 300 | ①×②/③ |
7、特定欠損金額の損金算入額 | 300>171 =171 | 150>129 =129 | 300 | 特定欠損金額のうち特定損金算入限度額に達するまでの金額 |
計算の流れ
規定は、1→2→3→4の順です。
計算は、特定(1→3)→非特定(2→4)の順となります。
今回は、1と3の計算をしています。
内容 | 欠損金額の計算 | 限度額と 超える部分の計算 |
---|---|---|
特定欠損金額 | 1、法法64条の7 第1項2号イ | 3、法法64条の7 第1項3号イ |
非特定欠損金額 | 2、法法64条の7 第1項2号ロハニ | 4、法法64条の7 第1項3号ロ |
参考規定
特定損金算入限度額と超える部分の計算
三 前号の規定により通算法人の十年内事業年度において生じた欠損金額とされた金額のうち第五十七条第一項ただし書に規定する超える部分の金額は、次に掲げる金額の合計額とする。
法人税法64条の7、第1項2号
イ 当該十年内事業年度に係る当該通算法人の対応事業年度において生じた特定欠損金額が、当該特定欠損金額のうち当該十年内事業年度に係る欠損控除前所得金額(第五十七条第一項本文の規定を適用せず、かつ、第五十九条第三項及び第四項(会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入)並びに第六十二条の五第五項(現物分配による資産の譲渡)の規定を適用しないものとして計算した場合における適用事業年度の所得の金額から前号ハ(2)(i)に掲げる金額を控除した金額をいう。(2)において同じ。)に達するまでの金額<①の金額>に、(1)に掲げる金額が(2)及び(3)に掲げる金額の合計額のうちに占める割合(当該合計額が零である場合には零とし、当該割合が一を超える場合には一とする。)を乗じて計算した金額(以下この条において「特定損金算入限度額」という。)を超える場合におけるその超える部分の金額
(1) 当該通算法人の適用事業年度の損金算入限度額及び当該適用事業年度終了の日に終了する他の通算法人の事業年度の損金算入限度額の合計額から前号ハ(2)(i)及び(3)(i)に掲げる金額の合計額を控除した金額
(2) 当該十年内事業年度に係る当該通算法人の対応事業年度において生じた特定欠損金額のうち当該十年内事業年度に係る欠損控除前所得金額に達するまでの金額
(3) 当該十年内事業年度の期間内にその開始の日がある当該他の通算法人の事業年度(当該十年内事業年度終了の日の翌日が開始日である場合には、当該終了の日後に開始した事業年度を含む。)において生じた特定欠損金額のうち当該十年内事業年度に係る他の欠損控除前所得金額(第五十七条第一項本文の規定を適用せず、かつ、第五十九条第三項及び第四項並びに第六十二条の五第五項の規定を適用しないものとして計算した場合における適用事業年度終了の日に終了する当該他の通算法人の事業年度の所得の金額から前号ハ(3)(i)に掲げる金額を控除した金額をいう。第四項及び第九項第四号において同じ。)に達するまでの金額の合計額
①の金額×(1)÷(2+3)