今回は、特定新株予約権の行使による株式の取得をした場合の所得税の非課税のうち、相続などがあった場合を確認してみましょう。
時価による売却や購入として取り扱われる場合
今回確認する規定は、こちらです。
4 次に掲げる事由により、第一項本文の規定の適用を受けた個人(以下この項及び次項において「特例適用者」という。)が有する当該適用を受けて取得をした株式その他これに類する株式として政令で定めるもの(第一項第六号イに規定する取決めに従い金融商品取引業者等の振替口座簿に記載若しくは記録を受け、若しくは金融商品取引業者等の営業所等に保管の委託若しくは管理等信託がされているもの又は同号ロに規定する取決めに従い同号ロに規定する株式会社(当該株式会社を法人税法第二条第十一号に規定する被合併法人とする合併により同項第六号ロに規定する管理に係る契約の移転を受けた当該合併に係る同条第十二号に規定する合併法人その他の財務省令で定める法人を含む。以下この項及び第七項において同じ。)により管理がされているものに限る。以下この条において「特定株式」という。)の全部又は一部の返還又は移転があつた場合(特例適用者から相続(限定承認に係るものを除く。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)により特定株式(特定従事者に対して与えられた特定新株予約権の行使により取得をした株式その他これに類する株式として政令で定めるものを除く。以下この項及び次項において「取締役等の特定株式」という。)の取得をした個人(以下この項において「承継特例適用者」という。)が、当該取締役等の特定株式を第一項第六号イに規定する取決めに従い引き続き当該取締役等の特定株式に係る金融商品取引業者等の振替口座簿に記載若しくは記録を受け、若しくは金融商品取引業者等の営業所等に保管の委託若しくは管理等信託をし、又は当該取締役等の特定株式を同号ロに規定する取決めに従い引き続き当該取締役等の特定株式の管理をしていた同号ロに規定する株式会社により管理をさせる場合を除く。)には、当該返還又は移転があつた特定株式については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額による譲渡があつたものと、第一号に掲げる事由による返還を受けた特例適用者については、当該事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額をもつて当該返還を受けた特定株式の数に相当する数の当該特定株式と同一銘柄の株式の取得をしたものとそれぞれみなして、第三十七条の十及び第三十七条の十一の規定その他の所得税に関する法令の規定を適用する。次に掲げる事由により、承継特例適用者が有する承継特定株式(特例適用者から当該相続又は遺贈により取得をした取締役等の特定株式その他これに類する株式として政令で定めるもので、第一項第六号イに規定する取決めに従い引き続き当該取締役等の特定株式に係る金融商品取引業者等の振替口座簿に記載若しくは記録を受け、若しくは金融商品取引業者等の営業所等に保管の委託若しくは管理等信託がされ、又は同号ロに規定する取決めに従い引き続き当該取締役等の特定株式の管理をしていた同号ロに規定する株式会社により管理がされているものをいう。以下この条において同じ。)の全部又は一部の返還又は移転があつた場合についても、同様とする。
租税特別措置法第29条の2第4項、令和7年12月1日施行
一 当該金融商品取引業者等の振替口座簿への記載若しくは記録、保管の委託若しくは管理等信託又は第一項第六号ロに規定する株式会社による管理に係る契約の解約又は終了(同号イ又はロに規定する取決めに従つてされる譲渡に係る終了その他政令で定める終了を除く。)
二 贈与(法人に対するものを除く。)又は相続(限定承認に係るものを除く。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)
三 第一項第六号イ又はロに規定する取決めに従つてされる譲渡以外の譲渡でその譲渡の時における価額より低い価額によりされるもの(所得税法第五十九条第一項第二号に規定する譲渡に該当するものを除く。)
カッコ書きを外して、分けてみましょう。
4 次に掲げる事由により、第一項本文の規定の適用を受けた個人(注1)が有する当該適用を受けて取得をした株式その他これに類する株式として政令で定めるもの(注2)の全部又は一部の返還又は移転があつた場合(注3)には、
当該返還又は移転があつた特定株式については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額による譲渡があつたものと、
第一号に掲げる事由による返還を受けた特例適用者については、当該事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額をもつて当該返還を受けた特定株式の数に相当する数の当該特定株式と同一銘柄の株式の取得をしたものと
それぞれみなして、第三十七条の十及び第三十七条の十一の規定その他の所得税に関する法令の規定を適用する。
次に掲げる事由により、承継特例適用者が有する承継特定株式(注4)の全部又は一部の返還又は移転があつた場合についても、同様とする。
一 当該金融商品取引業者等の振替口座簿への記載若しくは記録、保管の委託若しくは管理等信託又は第一項第六号ロに規定する株式会社による管理に係る契約の解約又は終了(注5)
二 贈与(注6)又は相続(注7)若しくは遺贈(注8)
三 第一項第六号イ又はロに規定する取決めに従つてされる譲渡以外の譲渡でその譲渡の時における価額より低い価額によりされるもの(注9)次の6つの内容が規定されています。
1、要件
2、1つ目の取扱い
3、2つ目の取扱い
4、2と3の取扱いに対する所得税法などの関係
5、4つ目の補足説明
6、1の具体的な要件
要件
要件を見てみましょう。
4 次に掲げる事由により、第一項本文の規定の適用を受けた個人(注1)が有する当該適用を受けて取得をした株式その他これに類する株式として政令で定めるもの(注2)の全部又は一部の返還又は移転があつた場合(注3)には、次に掲げる事由(第1号から第3号まで)により、第1項(所得税の非課税)の適用を受けた個人(特例適用者)が対象者です。
特定適用者が持っている
所得税の非課税の適用を受けた取得した株式等として
政令で定めるものを「特定株式」といいます。
特定株式の返還や移転があった場合が要件です。
取扱いと所得税法等との関係
取扱いを見てみましょう。
1つ目
当該返還又は移転があつた特定株式については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額による譲渡があつたものと、第1号から第3号までの事由が生じた時に、
時価による特定株式の売却があったものとして取り扱われます。
2つ目
第一号に掲げる事由による返還を受けた特例適用者については、当該事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額をもつて当該返還を受けた特定株式の数に相当する数の当該特定株式と同一銘柄の株式の取得をしたものと第1号に掲げる事由(契約の解約や終了)による返還を受けた特定適用者については、事由が生じた時に、時価により特定株式の数に相当する数の特定株式と同一銘柄の株式を取得したものとして取り扱われます。
1つ目が時価による売却、2つ目が時価による購入です。
仕訳イメージ
1、特定株式の売却収入(時価) ×× / 特定株式(簿価) ××
2、特定株式と同一銘柄の株式 ×× / 特定株式の売却収入(時価)
所得税法等との関係を見てみましょう。
それぞれみなして、第三十七条の十及び第三十七条の十一の規定その他の所得税に関する法令の規定を適用する。所得税に関する法令の規定が適用されます。
例
・第37条の10、一般株式等の所得税の特例
・第37条の11、上場株式等の所得税の特例
補足説明を見てみましょう。
次に掲げる事由により、承継特例適用者が有する承継特定株式(注4)の全部又は一部の返還又は移転があつた場合についても、同様とする。次に掲げる事由(第1号から第3号まで)により、承継特例適用者(特例適用者から相続等により取得した個人)が持っている承継特定株式についても、同じ取扱いとなります。
第1号から第3号までの事由
規定を見てみましょう。
一 当該金融商品取引業者等の振替口座簿への記載若しくは記録、保管の委託若しくは管理等信託又は第一項第六号ロに規定する株式会社による管理に係る契約の解約又は終了(注5)
二 贈与(注6)又は相続(注7)若しくは遺贈(注8)
三 第一項第六号イ又はロに規定する取決めに従つてされる譲渡以外の譲渡でその譲渡の時における価額より低い価額によりされるもの(注9)第1号事由、契約の解約や終了
金融商品取引業者等の振替口座簿への記載若しくは記録、保管の委託若しくは管理等信託又は
第1項第6号ロに規定する株式会社による管理に係る契約の解約又は終了
第2号事由、贈与など
贈与(注6)又は相続(注7)若しくは遺贈(注8)カッコ書きにより、除外されるもの
1、法人に対する贈与
2、限定承認の相続
3、法人に対する遺贈
4、個人に対する包括遺贈のうち限定承認の遺贈
第3号事由、低額による売却
三 第1項第6号イ又はロに規定する取決めに従つてされる譲渡以外の譲渡でその譲渡の時における価額より低い価額によりされるもの(注9)事前の取決め以外の売却で、時価より低い金額でされるもの
