特定新株予約権の行使による株式の取得をした場合の所得税の非課税_特定新株予約権の要件


今回は、特定新株予約権の行使による株式の取得をした場合の所得税の非課税のうち、特定新株予約権の要件を確認してみましょう。

8つの要件

今回確認する規定は、こちらです。
非常に規定が長いため、分けて確認してみましょう。

全部で8個あります。

一 当該新株予約権の行使は、当該新株予約権に係る付与決議の日後二年を経過した日から当該付与決議の日後十年を経過する日(当該付与決議の日において当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社がその設立の日以後の期間が五年未満であることその他の財務省令で定める要件を満たすものである場合には、当該付与決議の日後十五年を経過する日)までの間に行わなければならないこと。
二 当該新株予約権の行使に係る権利行使価額の年間の合計額が、千二百万円を超えないこと。
三 当該新株予約権の行使に係る一株当たりの権利行使価額は、当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社の株式の当該契約の締結の時における一株当たりの価額に相当する金額以上であること。
四 当該新株予約権については、譲渡をしてはならないこととされていること。
五 当該新株予約権の行使に係る株式の交付が当該交付のために付与決議がされた会社法第二百三十八条第一項に定める事項に反しないで行われるものであること。
六 当該新株予約権の行使により取得をする株式につき、次に掲げる要件のいずれかを満たすこと。
イ 当該行使に係る株式会社と金融商品取引業者又は金融機関で政令で定めるもの(以下この条において「金融商品取引業者等」という。)との間であらかじめ締結される新株予約権の行使により交付をされる当該株式会社の株式の振替口座簿(社債、株式等の振替に関する法律に規定する振替口座簿をいう。以下この条において同じ。)への記載若しくは記録、保管の委託又は管理及び処分に係る信託(以下この条において「管理等信託」という。)に関する取決め(当該振替口座簿への記載若しくは記録若しくは保管の委託に係る口座又は当該管理等信託に係る契約が権利者の別に開設され、又は締結されるものであること、当該口座又は契約においては新株予約権の行使により交付をされる当該株式会社の株式以外の株式を受け入れないことその他の政令で定める要件が定められるものに限る。)に従い、政令で定めるところにより、当該取得後直ちに、当該株式会社を通じて、当該金融商品取引業者等の振替口座簿に記載若しくは記録を受け、又は当該金融商品取引業者等の営業所若しくは事務所(第四項において「営業所等」という。)に保管の委託若しくは管理等信託がされること。
ロ 当該行使に係る株式会社と当該契約により当該新株予約権を与えられた者との間であらかじめ締結される新株予約権の行使により交付をされる当該株式会社の株式(譲渡制限株式に限る。ロにおいて同じ。)の管理に関する取決め(当該管理に係る契約が権利者の別に締結されるものであること、当該株式会社が、新株予約権の行使により交付をされる当該株式会社の株式につき帳簿を備え、権利者の別に、当該株式の取得その他の異動状況に関する事項を記載し、又は記録することによつて、当該株式を当該株式と同一銘柄の他の株式と区分して管理をすることその他の政令で定める要件が定められるものに限る。)に従い、政令で定めるところにより、当該取得後直ちに、当該株式会社により管理がされること。
七 当該契約により当該新株予約権を与えられた者は、当該契約を締結した日から当該新株予約権の行使の日までの間において国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいう。以下この号及び第五項において同じ。)をする場合には、当該国外転出をする時までに当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社にその旨を通知しなければならないこと。
八 当該契約により当該新株予約権を与えられた者に係る中小企業等経営強化法第九条第二項に規定する認定社外高度人材活用新事業分野開拓計画(次項第二号及び第四号において「認定社外高度人材活用新事業分野開拓計画」という。)につき当該新株予約権の行使の日以前に同条第二項の規定による認定の取消しがあつた場合には、当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社は、速やかに、その者にその旨を通知しなければならないこと。

租税特別措置法第29条の2第1項第1号から第8号まで、令和7年12月1日施行
行使期間の制限

1個目を見てみましょう。

一 当該新株予約権の行使は、当該新株予約権に係る付与決議の日後二年を経過した日から当該付与決議の日後十年を経過する日(当該付与決議の日において当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社がその設立の日以後の期間が五年未満であることその他の財務省令で定める要件を満たすものである場合には、当該付与決議の日後十五年を経過する日)までの間に行わなければならないこと。

新株予約権の行使期間に制限があります。

新株予約権に係る
・付与決議の日後、2年を経過した日から
・付与決議の日後、10年を経過する日まで
の間に行使する必要があります。

カッコ書きの要件を満たす場合は、
・付与決議の日後、15年を経過する日に変わります。

行使金額の制限

2個目を見てみましょう。

二 当該新株予約権の行使に係る権利行使価額の年間の合計額が、千二百万円を超えないこと。

権利行使価額の年間の合計額≦1,200万円の場合です。

1株当たりの権利行使価額の制限

3個目を見てみましょう。

三 当該新株予約権の行使に係る一株当たりの権利行使価額は、当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社の株式の当該契約の締結の時における一株当たりの価額に相当する金額以上であること。

1、1株当たりの権利行使価額
2、新株予約権に係る契約を締結した株式会社の
株式の契約締結時における1株当たりの価額

3、1≧2の場合です。

新株予約権の売却制限

4個目を見てみましょう。

四 当該新株予約権については、譲渡をしてはならないこととされていること。

新株予約権の売却に制限がある場合です。

会社法に反しない

5個目を見てみましょう。

五 当該新株予約権の行使に係る株式の交付が当該交付のために付与決議がされた会社法第二百三十八条第一項に定める事項に反しないで行われるものであること。

会社法第238条第1項に定める事項に従う必要があります。

参考規定、会社法第238条第1項、募集事項の決定

第二百三十八条 株式会社は、その発行する新株予約権を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集新株予約権(当該募集に応じて当該新株予約権の引受けの申込みをした者に対して割り当てる新株予約権をいう。以下この章において同じ。)について次に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)を定めなければならない。
一 募集新株予約権の内容及び数
二 募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨
三 前号に規定する場合以外の場合には、募集新株予約権の払込金額(募集新株予約権一個と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)又はその算定方法
四 募集新株予約権を割り当てる日(以下この節において「割当日」という。)
五 募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは、その期日
六 募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合には、第六百七十六条各号に掲げる事項
七 前号に規定する場合において、同号の新株予約権付社債に付された募集新株予約権についての第百十八条第一項、第百七十九条第二項、第七百七十七条第一項、第七百八十七条第一項又は第八百八条第一項の規定による請求の方法につき別段の定めをするときは、その定め

会社法第238条第1項、令和7年10月1日施行
株式の要件

6個目を見てみましょう。

株式につき、イかロのいずれかを満たす必要があります。
(イもロも政令=租税特別措置法施行令を確認する必要があります。)

取締役等に対して渡された新株予約権については、第1号から第6号までが要件となります。

参考規定

当該新株予約権(当該新株予約権に係る契約において、次に掲げる要件(当該新株予約権が当該取締役等に対して与えられたものである場合には、第一号から第六号までに掲げる要件)が定められているものに限る。以下この条において「特定新株予約権」という。)
租税特別措置法第29条の2第1項、令和7年12月1日施行

特定従事者については、次の第7号と第8号の要件も満たす必要があります。

国外転出する場合の通知義務

7個目を見てみましょう。

七 当該契約により当該新株予約権を与えられた者は、当該契約を締結した日から当該新株予約権の行使の日までの間において国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいう。以下この号及び第五項において同じ。)をする場合には、当該国外転出をする時までに当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社にその旨を通知しなければならないこと。

新株予約権を与えられた人が、
・契約締結日から
・新株予約権の行使日まで
の間において、国外転出をする場合が要件です。

国外転出する人は、国外転出をする時までに、
株式会社に対して国外転出する旨を通知する必要があります。

認定取消しの通知義務

8個目を見てみましょう。

八 当該契約により当該新株予約権を与えられた者に係る中小企業等経営強化法第九条第二項に規定する認定社外高度人材活用新事業分野開拓計画(次項第二号及び第四号において「認定社外高度人材活用新事業分野開拓計画」という。)につき当該新株予約権の行使の日以前に同条第二項の規定による認定の取消しがあつた場合には、当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社は、速やかに、その者にその旨を通知しなければならないこと。

新株予約権を与えられた人に係る「認定社外高度人材活用新事業分野開拓計画」につき新株予約権の行使日「以前」に同条(中小企業等経営強化法第9条)第2項の規定による認定の取消しがあつた場合が要件です。

新株予約権に係る契約を締結した株式会社は、新株予約権を与えられた人に認定の取消しがあったことを通知する必要があります。

参考規定、中小企業等経営強化法第9条第2項

2 主務大臣は、前条第一項の認定に係る社外高度人材活用新事業分野開拓計画(前項の規定による変更の認定があったときは、その変更後のもの。以下「認定社外高度人材活用新事業分野開拓計画」という。)に従って社外高度人材活用新事業分野開拓に係る事業が行われていないと認めるときは、その認定を取り消すことができる。

中小企業等経営強化法第9条第2項、令和7年10月1日施行

参考規定、中小企業等経営強化法前条(第8条)第1項

(社外高度人材活用新事業分野開拓計画の認定)
第八条 社外高度人材活用新事業分野開拓を行おうとする新規中小企業者等は、社外高度人材活用新事業分野開拓に関する計画(以下この条及び次条において「社外高度人材活用新事業分野開拓計画」という。)を作成し、主務省令で定めるところにより、これを主務大臣に提出して、その社外高度人材活用新事業分野開拓計画が適当である旨の認定を受けることができる。

中小企業等経営強化法第8条第1項、令和7年10月1日施行

おまけ、新株予約権の違い

1、法人税法
新株予約権のうち、売却の制限などがあるものを「譲渡制限付新株予約権」といいます。

譲渡制限付新株予約権のうち、法人税法の2つの要件を満たすものを「特定新株予約権」といいます。

2、租税特別措置法
新株予約権のうち、措置法政令の要件(無償交付)を満たすものを「新株予約権」と再定義されています。

「措置法で再定義された新株予約権」のうち、措置法の8つの要件を満たすものを「特定新株予約権」といいます。

所得税の非課税の対象となる新株予約権は、2の租税特別措置法の特定新株予約権です。

法人税法の特定新株予約権は、
・役員給与の損金不算入
・新株予約権の特例
に関係しますが、所得税の非課税の対象となる新株予約権と直接は関係しません。そのため、それぞれの法令で「特定新株予約権」の判定が必要です。

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