相当の地代を受け取っている場合の貸宅地の評価と同族会社に土地を貸している場合


今回は、相当の地代を受け取っている場合の貸宅地の評価と同族会社に土地を貸している場合を確認してみましょう。

相当の地代を受け取っている場合の貸宅地の評価

今回確認する通達は、こちらです。

相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/850605/01.htm

6 借地権が設定されている土地について、相当の地代を収受している場合の当該土地に係る貸宅地の価額は、次によって評価する。
(1) 権利金を収受していない場合又は特別の経済的利益を受けていない場合  当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額
(2) (1)以外の場合 当該土地の自用地としての価額から3((相当の地代を支払っている場合の借地権の評価))(2)による借地権の価額を控除した金額(以下この項において「相当の地代調整貸宅地価額」という。)
 ただし、その金額が当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額を超えるときは、当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額
(注) 上記(1)及び(2)のただし書に該当する場合において、被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し土地を貸し付けている場合においては、昭和43年10月28日付直資3-22ほか2課共同「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」通達(以下「43年直資3-22通達」という。)の適用があることに留意する。
 この場合において、上記(2)のただし書に該当するときは、43年直資3-22通連中「自用地としての価額」とあるのは「相当の地代調整貸宅地価額」と、「その価額の20%に相当する金額」とあるのは「その相当の地代調整貸宅地価額と当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額との差額」と、それぞれ読み替えるものとする。

1、借地権が設定されている土地
2、相当の地代を収受している場合
この2つが前提です。

この土地の貸宅地の価額については、2つの計算方法があります。「貸宅地」とありますので、土地を貸している人の通達です。

注意書きについてのメモ
上記(1)に該当する場合、他の通達の適用があります。
上記(2)のただし書きに該当する場合は、他の通達の適用があります。
さらに、読み替えが必要になります。
(反対に、上記(2)の場合は、他の通達の適用がないと読めます。)

権利金を受け取っていない場合など

1つ目
A、権利金を収受していない場合(受け取っていない場合)
B、特別の経済的利益を受けていない場合

AとBの要件を満たす場合の貸宅地は、
・土地の自用地としての価額×80%
で評価されます。

例、土地の自用地としての価額(5,000万円)×80%=貸宅地の価額(4,000万円)

権利金を受け取っている場合など

2つ目は、1つ目以外の場合です。
C、権利金を収受している場合(受け取っている場合)
D、特別の経済的利益を受けている場合

CやDの要件を満たす場合の貸宅地は、

(算式に変えます。)

1、土地の自用地としての価額

2、基本通達3((相当の地代を支払っている場合の借地権の評価))の(2)による借地権の価額

3、相当の地代調整貸宅地価額 1-2

基本通達3((相当の地代を支払っている場合の借地権の評価))の(2)による借地権の価額は、

(2) (1)以外の場合 原則として2((相当の地代に満たない地代を支払って土地の借受けがあった場合))に定める算式に準じて計算した金額

ですので、2((相当の地代に満たない地代を支払って土地の借受けがあった場合))を確認してみましょう。

例外として、上限があります。

算式の金額が>土地の自用地としての価額×80%(上限)の場合は、
土地の自用地としての価額×80%(上限)が貸宅地の価額となります。

注意書き、亡くなった方が同族関係者となっている同族会社に土地を貸している場合

注意書きを見てみましょう。

(注) 上記(1)及び(2)のただし書に該当する場合において、被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し土地を貸し付けている場合においては、昭和43年10月28日付直資3-22ほか2課共同「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」通達(以下「43年直資3-22通達」という。)の適用があることに留意する。
 この場合において、上記(2)のただし書に該当するときは、43年直資3-22通連中「自用地としての価額」とあるのは「相当の地代調整貸宅地価額」と、「その価額の20%に相当する金額」とあるのは「その相当の地代調整貸宅地価額と当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額との差額」と、それぞれ読み替えるものとする。

「上記(1)及び(2)のただし書に該当する場合」とありますので、上記(2)は対象から外れます。

A、上記(1)、権利金なし、自用地としての価額×80%
B、上記(2)、権利金あり、相当の地代調整貸宅地価額
C、上記(2)のただし書き、上記(2)の金額→自用地としての価額×80%

自用地としての価額×80%が計算されている場合です。

亡くなった方(被相続人)が同族関係者となっている同族会社に対して、土地を貸し付けている場合は、他の通達が適用されます。

参考情報、相当の地代を収受している貸宅地の評価について|国税庁
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hyoka/681028/01.htm

上記通達を見てみましょう。

標題のことについて、課税時期における被相続人所有の貸宅地は、自用地としての価額から、その価額の20%に相当する金額(借地権の価額)を控除した金額により、評価することとされたい。
 なお、上記の借地権の価額は、昭和39年4月25日付直資56相続税財産評価に関する基本通達32の(1)の定めにかかわらず、被相続人所有のI株式会社の株式評価上、同社の純資産価額に算入することとされたい。

被相続人所有の貸宅地(亡くなった方が持っていた貸している土地)は、

(算式に変えます。)

1、自用地としての価額
2、自用地としての価額×20%(借地権の価額)
3、貸宅地の評価額 1-2
(結果として、自用地としての価額×80%)

で評価されます。

上記(2)のただし書き(C)に該当する場合は、他の通達を読み替えて適用する必要があります。

参考情報、読み替え後の通達

標題のことについて、課税時期における被相続人所有の貸宅地は、相当の地代調整貸宅地価額から、その相当の地代調整貸宅地価額と当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額との差額借地権の価額)を控除した金額により、評価することとされたい。
 なお、上記の借地権の価額は、昭和39年4月25日付直資56相続税財産評価に関する基本通達32の(1)の定めにかかわらず、被相続人所有のI株式会社の株式評価上、同社の純資産価額に算入することとされたい。

借地権の価額)をそのまま残して記載します。

算式に変えます。

1、相当の地代調整貸宅地価額
2、相当の地代調整貸宅地価額と自用地としての価額×80%との差額(借地権の価額
3、貸宅地の評価額 1-2

で評価されます。

数字を使ってみましょう。

1、自用地としての価額 3,000万円
2、算式の金額 500万円
3、1-2=相当の地代調整貸宅地価額 2,500万円
4、3の金額(2,500万円)と自用地としての価額×80%(2,400万円、上限)を比較して少ない金額=貸宅地の価額(2,400万円)

読み替え後の通達にあてはめると

1、相当の地代調整貸宅地価額
 2,500万円

2、相当の地代調整貸宅地価額と自用地としての価額×80%との差額(借地権の価額)
 2,500万円-(3,000万円×80%=2,400万円、上限)=100万円

3、貸宅地の評価額 1-2
 2,500万円-100万円=2,400万円

株式評価の取扱い

通達の続きを見てみましょう。

 なお、上記の借地権の価額は、昭和39年4月25日付直資56相続税財産評価に関する基本通達32の(1)の定めにかかわらず、被相続人所有のI株式会社の株式評価上、同社の純資産価額に算入することとされたい。

借地権の価額は、株式の評価をする場合に純資産価額に算入されます。
借地権の価額は、自用地としての価額×20%です。

自用地としての価額が3,000万円の場合は、3,000万円×20%=600万円です。

借地権の価額について

以下、気になった点を記載しています。

読み替え後の通達の(借地権の価額)は、そのまま残して読むのでしょうか。消して読むのでしょうか。読み替え後の通達をそのまま読むと差額分の100万円を指しているように読めます。

貸宅地部分を2,500万円ではなく2,400万円で計算する代わりに、借地権部分100万円を追加で計上するという意味で、算式の金額の500万円は別の通達で計上されているという前提なのかなと考えましたが、異なるような気もします。

仮に(借地権の価額)を消して読む場合、なお書きにある借地権の価額は、何を指しているのかがわかりづらくなります。
(記事を書いている途中は、消さずに読むと考えていました。)

標題のことについて、課税時期における被相続人所有の貸宅地は、相当の地代調整貸宅地価額から、その相当の地代調整貸宅地価額と当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額との差額借地権の価額を控除した金額により、評価することとされたい。
 なお、上記の借地権の価額は、昭和39年4月25日付直資56相続税財産評価に関する基本通達32の(1)の定めにかかわらず、被相続人所有のI株式会社の株式評価上、同社の純資産価額に算入することとされたい。

試しに基本通達6と一緒に並べてみます。

6 借地権が設定されている土地について、相当の地代を収受している場合の当該土地に係る貸宅地の価額は、次によって評価する。
(1) 権利金を収受していない場合又は特別の経済的利益を受けていない場合  当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額
(2) (1)以外の場合  当該土地の自用地としての価額から3((相当の地代を支払っている場合の借地権の評価))(2)による借地権の価額を控除した金額(以下この項において「相当の地代調整貸宅地価額」という。)
 ただし、その金額が当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額を超えるときは、当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額

読み替え後の通達

標題のことについて、課税時期における被相続人所有の貸宅地は、相当の地代調整貸宅地価額から、その相当の地代調整貸宅地価額と当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額との差額借地権の価額を控除した金額により、評価することとされたい。
 なお、上記の借地権の価額は、昭和39年4月25日付直資56相続税財産評価に関する基本通達32の(1)の定めにかかわらず、被相続人所有のI株式会社の株式評価上、同社の純資産価額に算入することとされたい。

並べてみると上記の「借地権の価額」が、基本通達6に規定されている「3((相当の地代を支払っている場合の借地権の評価))の(2)による借地権の価額」を指していると読めそうです。

この場合は、借地権の価額=算式の金額と読めます。

一緒に並べた通達に数字を使って考えてみましょう。

6 借地権が設定されている土地について、相当の地代を収受している場合の当該土地に係る貸宅地の価額は、次によって評価する。
(1) 権利金を収受していない場合又は特別の経済的利益を受けていない場合  当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額
(2) (1)以外の場合  当該土地の自用地としての価額<3,000>から3((相当の地代を支払っている場合の借地権の評価))(2)による借地権の価額<500>を控除した金額(以下この項において「相当の地代調整貸宅地価額」という。)<3,000-500=2,500>
 ただし、その金額<2,500>が当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額<3,000×80%=2,400>を超えるときは、当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額<3,000×80%=2,400>

相当の地代調整貸宅地価額 2,500
貸宅地の価額 2,400

読み替え後の通達

標題のことについて、課税時期における被相続人所有の貸宅地は、相当の地代調整貸宅地価額<2,500>から、その相当の地代調整貸宅地価額<2,500>と当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額<2,400>との差額<100>借地権の価額を控除した金額<2,500-100=2,400>により、評価することとされたい。
 なお、上記の借地権の価額<500>は、昭和39年4月25日付直資56相続税財産評価に関する基本通達32の(1)の定めにかかわらず、被相続人所有のI株式会社の株式評価上、同社の純資産価額に算入することとされたい。

貸宅地は、差額を考慮するため
2,500-100=2,400(80%相当)で評価されます。

上記の借地権の価額について、読み替え後の(借地権の価額)を消して、基本通達6の算式による借地権の価額を指していると読むと、算式の金額を指しているため、上限を考慮していない500になります。

・借地権の価額(算式の金額) 500
・貸宅地の評価額 2,400
合計が2,900になるため、この考え方(読み方)は異なるのでしょう。

(借地権の価額)を消さないで、そのまま差額が借地権の価額になると読んで、上記の借地権の価額は差額の100を指していると読む方が正しいのかもしれません。

気になった点を整理します。
1、差額=(借地権の価額)なのかどうか
2、上記の借地権の価額は、差額=借地権の価額なのかどうか
3、(借地権の価額)を消して読む場合、上記の借地権の価額は、何を指すのか
4、上記の借地権の価額は、算式の金額を指しているのか
5、算式の金額を指している場合、上限が考慮されているのかどうか
6、別の読み方があるのかどうか

参考情報1、財産評価基本通達25、貸宅地の評価の一部

ただし、借地権の目的となっている宅地の売買実例価額、精通者意見価格、地代の額等を基として評定した価額の宅地の自用地としての価額に対する割合(以下「貸宅地割合」という。)

貸宅地の定義は、ないようです。
(他の通達にあるのかもしれません。)

参考情報2、(1)の場合と(2)ただし書きの場合の比較

(1)の場合(権利金なし)は、読み替え前の通達となるため、
自用地としての価額-自用地としての価額×20%(借地権の価額)
3,000万円-3,000万円×20%(借地権の価額)=2,400万円

(2)ただし書きの場合(権利金あり)は、読み替え後の通達となるため、
相当の地代調整貸宅地価額-自用地価額との差額(借地権の価額)
2,500万円-100万円(差額)=2,400万円

参考情報3、(2)の場合(権利金あり、上限を超えない)

1、土地の自用地としての価額
 3,000万円

2、基本通達3((相当の地代を支払っている場合の借地権の評価))の(2)による借地権の価額
 算式の金額 2,000万円(2/3相当)と仮定

3、相当の地代調整貸宅地価額
 1-2=1,000万円≦自用地としての価額×80%=2,400万円(上限)
 少ない金額 1,000万円(1/3相当) 

この場合は、他の通達の適用がありません。

PAGE TOP