今回は、相続時精算課税と外国の相続税を支払った場合のうち、施行令の読替え規定を確認してみましょう。
施行令の読替え規定
先に読替え規定を確認してみましょう。
2 法第二十一条の九第三項の規定の適用がある場合の法第十九条の三第二項及び第二十条の二の規定の適用については、同項中「価額」とあるのは「価額と当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものの価額から第二十一条の十一の二第一項の規定による控除をした残額との合計額」と、同条中「価額の」とあるのは「価額と当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものの価額から第二十一条の十一の二第一項の規定による控除をした残額との合計額の」とする。
相続税法施行令第5条の4第2項、令和7年4月1日施行
相続時精算課税を計算する場合の
・未成年者の控除
・在外財産の控除(外国の相続税を支払った場合の控除)
の計算については、読み替えが必要になります。
在外財産の控除の読替え
在外財産の控除の読替え規定を確認してみましょう。
同条中「価額の」とあるのは「価額と当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものの価額から第二十一条の十一の二第一項の規定による控除をした残額との合計額の」とする。
同条は、相続税法第20条の2を指しています。
規定を確認してみましょう。
(在外財産に対する相続税額の控除)
相続税法第20条の2、令和7年6月1日施行
第二十条の二 相続又は遺贈(第二十一条の二第四項に規定する贈与を含む。以下この条において同じ。)によりこの法律の施行地外にある財産を取得した場合において、当該財産についてその地の法令により相続税に相当する税が課せられたときは、当該財産を取得した者については、第十五条から前条までの規定により算出した金額からその課せられた税額に相当する金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。ただし、その控除すべき金額が、その者についてこれらの規定により算出した金額に当該財産の価額が当該相続又は遺贈により取得した財産の価額のうち課税価格計算の基礎に算入された部分のうちに占める割合を乗じて算出した金額を超える場合においては、その超える部分の金額については、当該控除をしない。
1度の相続で
・日本の相続税
・外国の相続税
2つの相続税がかかる場合、日本の相続税から外国の相続税をマイナスできます。
参考リンク
・外国の相続税を支払った場合
実際に規定を読み替えてみましょう。
(在外財産に対する相続税額の控除)
第二十条の二 相続又は遺贈(第二十一条の二第四項に規定する贈与を含む。以下この条において同じ。)によりこの法律の施行地外にある財産を取得した場合において、当該財産についてその地の法令により相続税に相当する税が課せられたときは、当該財産を取得した者については、第十五条から前条までの規定により算出した金額からその課せられた税額に相当する金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。ただし、その控除すべき金額が、その者についてこれらの規定により算出した金額に当該財産の価額が当該相続又は遺贈により取得した財産の価額と当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものの価額から第二十一条の十一の二第一項の規定による控除をした残額との合計額のうち課税価格計算の基礎に算入された部分のうちに占める割合を乗じて算出した金額を超える場合においては、その超える部分の金額については、当該控除をしない。
ただし以降には、外国の相続税を支払った場合であっても、
・日本の相続税
・外国の相続税
が2重にかかっていない部分については、外国の相続税がマイナスできないことが規定されています。
規定を読み替えますと
相続などにより取得した財産の金額に「相続時精算課税の対象となる贈与により取得した財産の金額」をプラスして計算する必要があります。
「第21条の11の第1項の規定による控除」とありますので、相続時精算課税の基礎控除(110万円)のマイナスが可能です。
外国税額控除額の計算書(第8表)
外国税額控除額の計算書(第8表)を確認して気になった点をメモします。
参考情報、相続税の申告書等の様式一覧(令和6年分用)、第8表、外国税額控除額・農地等納税猶予税額の計算書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/r06.htm
読み替えた後の規定の一部を確認してみましょう。
「その者についてこれらの規定により算出した金額」に
当該財産(外国にある財産)の価額が
「当該相続又は遺贈により取得した財産の価額」と「当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものの価額から第二十一条の十一の二第一項の規定による控除をした残額」との合計額のうち課税価格計算の基礎に算入された部分
のうちに占める割合
「当該相続又は遺贈により取得した財産の価額」は、国内にある財産と国外にある財産(全ての財産)を指します。
読替えで追加された「当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものの価額から第二十一条の十一の二第一項の規定による控除をした残額」も、国内にある財産と国外にある財産(全ての財産)を指します。
計算書(第8表)の注意書き1を確認しますと、
5欄(邦貨換算在外純財産の価額)は、在外財産(被相続人から相続開始の年に暦年課税に係る贈与によって取得した財産及び相続時精算課税適用財産を含みます。)の価額から~
とあります。⑤欄の在外財産については、相続時精算課税の対象となる財産のうち、「在外財産に限定される」と読むのでしょう。
なお書きで、令和6年1月1日以後については、相続時精算課税の基礎控除(110万円)はマイナスできることが記載されています。
同じ年に、
・国内にある財産
・国外にある財産(在外財産)
2つの財産を贈与で受け取った場合、相続時精算課税の基礎控除(110万円)の按分が不要なのでしょうか?
計算書(第8表)の注意書き2を確認しますと、
6欄の「取得財産の価額」は、第1表の④欄の金額(邦貨換算税額)と被相続人から相続開始の年に暦年課税に係る贈与によって取得した財産の価額の合計額によります。
とあります。
この部分は、読み替える前の規定の
相続又は遺贈(第二十一条の二第四項に規定する贈与を含む。以下この条において同じ。)により
のことを指していると思います。
相続時精算課税を選択している場合は、相続時精算課税の対象となる財産(国内にある財産と在外財産の両方)をプラスする必要があると思います。
まとめると
・5欄は、相続時精算課税の対象となる財産のうち、在外財産
・6欄は、相続時精算課税の対象となる財産(国内財産と在外財産)
をプラスするのでしょう。