今回は、賃上げ促進税制の共通事項の用語について確認します。
規定の概要
規定の全体像を確認します。
- 大企業向けの制度
- 中小企業向けの特例
- 用語の意義(今回確認)
- 1月未満の取扱い
- 手続き
- 合併等があった場合
- 読み替え規定
用語の一覧
似たような用語が多いため、大企業向けの用語、中小企業向けの用語、共通の用語で分けます。
- 設立事業年度(共通、今回確認)
- 国内雇用者(共通、今回確認)
- 給与等(共通、今回確認)
- 継続雇用者給与等支給額(大企業向け)
- 継続雇用者比較給与等支給額(大企業向け)
- 控除対象雇用者給与等支給増加額(共通)
- 教育訓練費(共通)
- 比較教育訓練費の額(共通)
- 雇用者給与等支給額(中小企業向け)
- 比較雇用者給与等支給額(中小企業向け)
大企業向けの用語
4、継続雇用者給与等支給額
5、継続雇用者比較給与等支給額
中小企業向けの用語
9、雇用者給与等支給額
10、比較雇用者給与等支給額
共通の用語
1、設立事業年度
2、国内雇用者
3、給与等
6、控除対象雇用者給与等支給増加額
共通の用語(教育訓練費の割増控除)
7、教育訓練費
8、比較教育訓練費の額
「比較」があるもの(5、8、10)は、前期の数字を指します。
また、増加割合を計算するため、「比較」は分母の金額となります。
6番の「控除対象」が法人税の特別控除の基礎となる金額です。
用語が多いため、今回は次の3点を確認します。
1、設立事業年度
2、国内雇用者
3、給与等
設立事業年度(1号、共通)
給与等が増加した場合の法人税の特別控除については、当期の給料と前期の給料を比較するため、法人を2期間運営している必要があります。そのため、原則として設立の日を含む事業年度を「設立事業年度」と定義しています。
公益法人等(収益事業あり)については、新たに収益事業を開始した日、
公益法人等(収益事業なし)が普通法人に該当したときは、その該当日が
設立日(設立事業年度)となります。
設立事業年度の定義
一 設立事業年度 設立の日(法人税法第二条第四号に規定する外国法人にあつては恒久的施設を有することとなつた日とし、公益法人等及び人格のない社団等にあつては新たに収益事業を開始した日とし、公益法人等(収益事業を行つていないものに限る。)に該当していた普通法人又は協同組合等にあつては当該普通法人又は協同組合等に該当することとなつた日とする。)を含む事業年度をいう。
租税特別措置法42条の12の5、3項
国内雇用者(2号、共通)
給与等が増加した場合の法人税の特別控除については、日本で働いている従業員の給料を増やす目的で設けられた制度です。そのため、外国で働いている人や役員は、この制度の対象外となります。
国内雇用者の定義
二 国内雇用者 法人の使用人(当該法人の役員(法人税法第二条第十五号に規定する役員をいう。以下この号において同じ。)と政令で定める特殊の関係のある者及び当該法人の使用人としての職務を有する役員を除く。)のうち当該法人の有する国内の事業所に勤務する雇用者として政令で定めるものに該当するものをいう。
租税特別措置法42条の12の5、3項
政令で定める特殊の関係のある者は、役員の親族などです。
役員の親族は、実際に役員でなかったとしても、国内雇用者に該当しません。
また、使用人兼務役員も役員であるため国内雇用者に該当しません。
5 法第四十二条の十二の五第三項第二号に規定する政令で定める特殊の関係のある者は、次に掲げる者とする。
租税特別措置法施行令27条の12の5
一 役員(法第四十二条の十二の五第三項第二号に規定する役員をいう。以下この項及び第十項第一号イにおいて同じ。)の親族
二 役員と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
三 前二号に掲げる者以外の者で役員から生計の支援を受けているもの
四 前二号に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族
政令で定めるものは、「賃金台帳に記載された者」をいいます。
6 法第四十二条の十二の五第三項第二号に規定する政令で定めるものは、当該法人の国内に所在する事業所につき作成された労働基準法第百八条に規定する賃金台帳に記載された者とする。
租税特別措置法施行令27条の12の5
(賃金台帳)
労働基準法108条
第百八条 使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。
給与等(3号、共通)
日本で働いている従業員の給料を増やす目的の制度であるため、従業員に対する福利厚生費や交際費などは、この制度の対象外となります。通勤手当は給与等に含まれますが、通勤手当を含めずに計算することも可能です。
三 給与等 所得税法第二十八条第一項に規定する給与等をいう。
租税特別措置法42条の12の5、3項
参考規定など
高年齢者雇用確保措置
第九条 定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
一 当該定年の引上げ
二 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
三 当該定年の定めの廃止
継続雇用制度を採用している場合の記載要件
(給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)
租税特別措置法施行規則
第二十条の十 施行令第二十七条の十二の五第七項に規定する財務省令で定める者は、当該法人の就業規則において同項に規定する継続雇用制度を導入している旨の記載があり、かつ、次に掲げる書類のいずれかにその者が当該継続雇用制度に基づき雇用されている者である旨の記載がある場合のその者とする。
一 雇用契約書その他これに類する雇用関係を証する書類
二 施行令第二十七条の十二の五第六項に規定する賃金台帳
賃上げ税制の趣旨
【本税制の活用にあたって】
大企業向け「賃上げ促進税制」御利用ガイドブック、21ページ
本税制は、「成長と分配の好循環」の実現に向けて、企業が得た収益を従業員に還元するよう、賃上げの促進を目的とする制度です。
適用要件の対象とする給与等支給額には、主として事務負担の観点から、時間外労働や休日労働による割増賃金は除外しておりませんが、税制の活用にあたっては、基本給や賞与の引上げを通じた賃上げを積極的に行って頂くよう、お願いいたします。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/pdf/chinagesokushinzeisei_gb_20220706.pdf