退職所得の概要


今回は退職所得の概要を確認します。

内容

退職所得は、給与所得の例外です。退職時に一時に受ける給与など(退職金)については、給与所得と比較して高額になるため、給与所得と異なり次の軽減措置が設けてられています。

  1. 退職所得控除
  2. 1/2軽減
  3. 申告分離課税

1つ目の退職所得控除は、原則として勤続年数1年につき40万円です。
勤続年数が20年を超える場合は、勤続年数1年につき70万円に増額されます。

例えば、勤続年数が30年の場合、
800万円+70万円×(30年-20年)=1500万円となります。

2つ目の1/2軽減は、
(退職金収入-退職所得控除額)=退職所得×1/2として
計算することができます。

退職金が2000万円の場合、
2000円-1500万円=500万円×1/2=250万円が退職所得となります。

3つ目の申告分離課税については、退職所得は他の所得と合算しないで所得税を計算することができます。所得税は所得が多くなるほど税率が上がる仕組みなので、申告分離課税は他の所得と合算した場合と比較して税額が少なく計算されます。

規定の確認

規定のタイトルを付けると

1項、退職所得の定義
2項、退職所得の金額
3項、退職所得控除額の計算
4項、短期退職手当等
5項、特定役員退職手当等
6項、退職所得控除額の例外
7項、2種類の退職手当等がある場合の計算

となります。7項の2種類ある場合の計算は、かなり複雑な規定ですね。

短期退職手当等と特定役員退職手当等

短期退職手当等は、役員以外の勤続年数が5年以下の場合の退職金をいいます。ただし、特定役員退職手当等を除きます。特定役員退職手当等は、役員の勤続年数が5年以下の場合の退職金をいいます。

短期退職手当等の1/2軽減前の退職所得が300万円超の部分については、1/2軽減がありません。特定役員退職手当等については、1/2軽減が一切ありません。

用語等をまとめると次の表になります。

区分5年以下
(軽減の制限あり)
5年超
従業員等・短期退職手当等
・短期勤続年数
・退職金-退職所得控除≦300万円は1/2軽減あり。
・300万円超は、1/2軽減なし
1/2軽減あり
役員等・特定役員退職手当等
・役員等勤続年数
・1/2軽減なし
1/2軽減あり
まとめ
退職所得控除額の例外

例外が3つあります。

  1. その年以前に退職金の支給があり、一定の場合。
  2. 退職所得控除額が80万円未満の場合は、最低80万円。
  3. 障害者となって退職した場合は、100万円加算します。

1のその年以前に退職金の支給がある場合については、退職所得控除が短期間で2回計算されることがあるため、退職所得控除を制限する例外があります。細かい計算は政令に規定されていますが、かなり難しい計算になっています。

参考規定など

国税庁、タックスアンサー、No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm

(退職所得)
第三十条 退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(以下この条において「退職手当等」という。)に係る所得をいう。

2 退職所得の金額は、その年中の退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額の二分の一に相当する金額(当該退職手当等が、短期退職手当等である場合には次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とし、特定役員退職手当等である場合には当該退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額に相当する金額とする。)とする。
一 当該退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額が三百万円以下である場合 当該残額の二分の一に相当する金額
二 前号に掲げる場合以外の場合 百五十万円と当該退職手当等の収入金額から三百万円に退職所得控除額を加算した金額を控除した残額との合計額

3 前項に規定する退職所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 政令で定める勤続年数(以下この項及び第七項において「勤続年数」という。)が二十年以下である場合 四十万円に当該勤続年数を乗じて計算した金額
二 勤続年数が二十年を超える場合 八百万円と七十万円に当該勤続年数から二十年を控除した年数を乗じて計算した金額との合計額

4 第二項に規定する短期退職手当等とは、退職手当等のうち、退職手当等の支払をする者から短期勤続年数(前項第一号に規定する勤続年数のうち、次項に規定する役員等以外の者としての政令で定める勤続年数が五年以下であるものをいう。第七項において同じ。)に対応する退職手当等として支払を受けるものであつて、次項に規定する特定役員退職手当等に該当しないものをいう。

5 第二項に規定する特定役員退職手当等とは、退職手当等のうち、役員等(次に掲げる者をいう。)としての政令で定める勤続年数(以下この項及び第七項において「役員等勤続年数」という。)が五年以下である者が、退職手当等の支払をする者から当該役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるものをいう。
一 法人税法第二条第十五号(定義)に規定する役員
二 国会議員及び地方公共団体の議会の議員
三 国家公務員及び地方公務員

6 次の各号に掲げる場合に該当するときは、第二項に規定する退職所得控除額は、第三項の規定にかかわらず、当該各号に定める金額とする。
一 その年の前年以前に他の退職手当等の支払を受けている場合で政令で定める場合 第三項の規定により計算した金額から、当該他の退職手当等につき政令で定めるところにより同項の規定に準じて計算した金額を控除した金額
二 第三項及び前号の規定により計算した金額が八十万円に満たない場合(次号に該当する場合を除く。) 八十万円
三 障害者になつたことに直接基因して退職したと認められる場合で政令で定める場合 第三項及び第一号の規定により計算した金額(当該金額が八十万円に満たない場合には、八十万円)に百万円を加算した金額

7 その年中に一般退職手当等(退職手当等のうち、短期退職手当等(第四項に規定する短期退職手当等をいう。以下この項において同じ。)及び特定役員退職手当等(第五項に規定する特定役員退職手当等をいう。以下この項において同じ。)のいずれにも該当しないものをいう。以下この項において同じ。)、短期退職手当等又は特定役員退職手当等のうち二以上の退職手当等があり、当該一般退職手当等に係る勤続年数、当該短期退職手当等に係る短期勤続年数又は当該特定役員退職手当等に係る役員等勤続年数に重複している期間がある場合の退職所得の金額の計算については、政令で定める。

所得税法
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