退職所得控除額の勤続年数


退職所得は、退職金収入から退職所得控除額をマイナスして計算します。
退職所得控除額は、勤続年数に応じて1年あたり40万円(70万円)として
計算します。今回は、この勤続年数の計算を確認します。

勤続年数の規定の概要

規定の大枠を確認すると

1項1号、通常の退職金
 イ、一時勤務しなかった場合
 ロ、一時勤務しなかった場合に他社で勤務した場合
 ハ、2回目の退職金
1項2号、みなし退職金
1項3号、1年で2つの退職金を受け取る場合
2項、1年未満の端数は切り上げる。
3項、退職金の支払者の範囲

となります。今回は1項1号の3つを確認します。
2号のみなし退職金と3号については省略します。

通常の退職金の勤続年数

退職所得控除の勤続年数は、退職金を受け取る人(A)が退職金を支払う会社(X社)で勤務していた期間(勤続期間)により計算します。AがX社で8年間勤務していたら勤続期間は通常8年です。ただし、次のイ、ロ、ハに該当するときは、別の方法で計算します。
※以後、勤続期間で言葉を統一しています。

一時勤務しなかった期間がある場合(イの方法)

例えば、次の場合です。
1、X社に入社して10年間勤務し、退職した。
2、その後2年間X社で勤務しなかった。
3、X社に再入社した。8年間勤務し、退職して退職金を受け取った。

この場合の勤続期間は、一時勤務しなかった期間(2年間)前に勤務していた10年間(1の期間)を8年間(3の期間)に加算して18年となります。

勤務しなかった2年間が休職期間中などの場合は、勤続期間に含まれます。
勤続期間は20年(=10+2+8)となります。

(長期欠勤又は休職中の期間)
30-7 令第69条第1項第1号に規定する勤務した期間には、長期欠勤又は休職(他に勤務するためのものを除く。)の期間も含まれる。(昭63直法6-1、直所3-1改正)

所得税基本通達
一時勤務しなかった期間に他社で勤務した場合(ロの方法)

例えば、次の場合です。
1、X社に入社して10年間勤務、その後退職してXの子会社(Y社)に入社した。
2、Y社に入社して2年間勤務、その後退職してX社に再入社した。
3、X社に入社して8年間勤務、その後退職して退職金を受け取った。
4、退職金については、Y社で勤務した期間の2年を含めて計算している。

この場合の勤続期間は、10(イで加算)+2(ロで加算)+8(勤続期間)=20年となります。退職金の計算の際、Y社の期間を含めていない場合は、Y社の2年間を加算しません。

以前に退職金を受け取っている場合(ハの方法)

以前に退職金を受け取っている場合、既に勤続期間と退職所得控除の計算を行っているため、1回目で計算した勤続期間については、2回目の勤続期間の計算の際、加算しません。2重計算になるからです。

ただし、退職金の支払者が1回目で計算した勤続期間を含めて、2回目の勤続期間を計算する場合は、1回目の勤続期間を含めて計算することができます。この場合、同じ勤続期間を2回使用するため、別に退職所得控除の調整計算があります。

まとめ

イ、一時勤務しなかった期間前の期間を加算します。
 最初の勤続期間の10年です。

ロ、一時勤務しなかった期間中、他社の勤続期間を含める場合はその期間を加算します。
 Y社の勤続期間の2年です。

ハ、前に退職金を受けたことがある場合、前に使用した勤続期間は、今回の計算に含めません。ただし、今回の計算に含めることも可能です。

参考規定

第六十九条 法第三十条第三項第一号(退職所得)に規定する政令で定める勤続年数は、次に定めるところにより計算した勤続年数とする。
一 法第三十条第一項に規定する退職手当等(法第三十一条(退職手当等とみなす一時金)の規定により退職手当等とみなされるもの(次号及び第三号並びに次条第三項において「退職一時金等」という。)を除く。以下この条並びに次条第一項及び第二項において「退職手当等」という。)については、退職手当等の支払を受ける居住者(以下この号において「退職所得者」という。)が退職手当等の支払者の下においてその退職手当等の支払の基因となつた退職の日まで引き続き勤務した期間(以下この項において「勤続期間」という。)により勤続年数を計算する。ただし、イからハまでに規定する場合に該当するときは、それぞれイからハまでに定めるところによる。
イ 退職所得者が退職手当等の支払者の下において就職の日から退職の日まで一時勤務しなかつた期間がある場合には、その一時勤務しなかつた期間前にその支払者の下において引き続き勤務した期間を勤続期間に加算した期間により勤続年数を計算する。
ロ 退職所得者が退職手当等の支払者の下において勤務しなかつた期間に他の者の下において勤務したことがある場合において、その支払者がその退職手当等の支払金額の計算の基礎とする期間のうちに当該他の者の下において勤務した期間を含めて計算するときは、当該他の者の下において勤務した期間を勤続期間に加算した期間により勤続年数を計算する。
ハ 退職所得者が退職手当等の支払者から前に退職手当等の支払を受けたことがある場合には、前に支払を受けた退職手当等の支払金額の計算の基礎とされた期間の末日以前の期間は、勤続期間又はイ若しくはロの規定により加算すべき期間に含まれないものとして、勤続期間の計算又はイ若しくはロの計算を行う。ただし、その支払者がその退職手当等の支払金額の計算の基礎とする期間のうちに、当該前に支払を受けた退職手当等の支払金額の計算の基礎とされた期間を含めて計算する場合には、当該期間は、これらの期間に含まれるものとしてこれらの計算を行うものとする。

所得税法施行令69条

参考書籍
令和3年版、図解、源泉所得税、P166-P174

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