今回は、適格現物出資があった場合の資本金等の額を確認してみましょう。
適格現物出資があった場合
今回確認する規定は、こちら↓です。
八 適格現物出資により移転を受けた資産及び当該資産と併せて移転を受けた負債の純資産価額(現物出資法人の当該適格現物出資の直前の当該資産の帳簿価額(当該資産が当該現物出資法人である公益法人等又は人格のない社団等の収益事業以外の事業に属する資産であつた場合には、当該資産の価額として当該法人の帳簿に記載された金額)から当該現物出資法人の当該適格現物出資の直前の当該負債の帳簿価額(当該負債が当該現物出資法人である公益法人等又は人格のない社団等の収益事業以外の事業に属する負債であつた場合には、当該負債の価額として当該法人の帳簿に記載された金額)を減算した金額をいう。)から当該適格現物出資により増加した資本金の額又は出資金の額(法人を設立する適格現物出資にあつては、その設立の時における資本金の額又は出資金の額)を減算した金額
法人税法施行令第8条第1項第8号、令和7年4月1日施行
カッコ書きを省略してみましょう。
八 適格現物出資により移転を受けた資産及び当該資産と併せて移転を受けた負債の純資産価額(注1)から当該適格現物出資により増加した資本金の額又は出資金の額(注2)を減算した金額「適格現物出資により移転を受けた」とありますので、現物出資を受けた法人(被現物出資法人)の規定です。
算式に変えてみましょう。
1、移転を受けた資産と負債の純資産価額(注1) 2,000
2、増加した資本金の額又は出資金の額(注2) 1,200
3、資本金等の額の加算額 1-2=800
被現物出資法人の仕訳イメージ
資産 2,500 / 負債 500
/ 資本金の額 1,200
/ 資本金の額の加算額 800
純資産価額
純資産価額(注1)のカッコ書きを確認してみましょう。
(現物出資法人の当該適格現物出資の直前の当該資産の帳簿価額(当該資産が当該現物出資法人である公益法人等又は人格のない社団等の収益事業以外の事業に属する資産であつた場合には、当該資産の価額として当該法人の帳簿に記載された金額)から当該現物出資法人の当該適格現物出資の直前の当該負債の帳簿価額(当該負債が当該現物出資法人である公益法人等又は人格のない社団等の収益事業以外の事業に属する負債であつた場合には、当該負債の価額として当該法人の帳簿に記載された金額)を減算した金額をいう。)カッコ書きを外してみましょう。
現物出資法人の当該適格現物出資の直前の当該資産の帳簿価額(注1)から当該現物出資法人の当該適格現物出資の直前の当該負債の帳簿価額(注2)を減算した金額をいう。算式に変えてみましょう。
1、資産の帳簿価額(注1) 2,500
2、負債の帳簿価額(注2) 500
3、純資産価額 1-2=2,000
注1と注2は、
・公益法人等
・人格のない社団等
の収益事業に該当しない事業(非収益事業)の資産や負債に関する取扱いです。
非収益事業の資産や負債については帳簿価額がありません。そのため、当該法人(被現物出資法人)の帳簿に記載された金額を使って、純資産価額を計算します。
参考情報
資本金の額(注2)のカッコ書きを確認してみましょう。
増加した資本金の額又は出資金の額(法人を設立する適格現物出資にあつては、その設立の時における資本金の額又は出資金の額)法人を設立する場合は、設立時の資本金の額を計算に使用します。
仕訳イメージ
資産 2,500 / 負債 500
/ 資本金の額(設立時) 1,200
/ 資本金の額の加算額 800
参考リンク
・適格現物出資があった場合の計算
資本金等の額は、変わる?
以前、現物出資法人が公益法人等の場合について資本金等の額が変わるのかと考察しました。もう1度考察してみます。
被現物出資法人の資産と負債の帳簿価額
(適格現物出資における被現物出資法人の資産及び負債の取得価額)
法人税法第123条の5、令和7年4月1日施行
第百二十三条の五 内国法人が適格現物出資により現物出資法人から資産の移転を受け、又はこれと併せて負債の移転を受けた場合には、当該移転を受けた資産及び負債の取得価額は、法第六十二条の四第一項(適格現物出資による資産等の帳簿価額による譲渡)に規定する帳簿価額に相当する金額(その取得のために要した費用がある場合にはその費用の額を加算した金額とし、当該資産又は負債が当該現物出資法人(公益法人等又は人格のない社団等に限る。)の収益事業以外の事業に属する資産又は負債であつた場合には当該移転を受けた資産及び負債の価額として当該内国法人の帳簿に記載された金額とする。)とする。
「当該移転を受けた資産及び負債の価額として当該内国法人の帳簿に記載された金額」とありますので、当該内国法人(被現物出資法人)が記載した金額が資産と負債の取得価額となります。
被現物出資法人の資本金等の額の計算
(今回確認した規定です。)
八 適格現物出資により移転を受けた資産及び当該資産と併せて移転を受けた負債の純資産価額(現物出資法人の当該適格現物出資の直前の当該資産の帳簿価額(当該資産が当該現物出資法人である公益法人等又は人格のない社団等の収益事業以外の事業に属する資産であつた場合には、当該資産の価額として当該法人の帳簿に記載された金額)から当該現物出資法人の当該適格現物出資の直前の当該負債の帳簿価額(当該負債が当該現物出資法人である公益法人等又は人格のない社団等の収益事業以外の事業に属する負債であつた場合には、当該負債の価額として当該法人の帳簿に記載された金額)を減算した金額をいう。)から当該適格現物出資により増加した資本金の額又は出資金の額(法人を設立する適格現物出資にあつては、その設立の時における資本金の額又は出資金の額)を減算した金額
法人税法施行令第8条第1項第8号、令和7年4月1日施行
資産の帳簿価額のカッコ書き
(現物出資法人の当該適格現物出資の直前の当該資産の帳簿価額(当該資産が当該現物出資法人である公益法人等又は人格のない社団等の収益事業以外の事業に属する資産であつた場合には、当該資産の価額として当該法人の帳簿に記載された金額)負債の帳簿価額のカッコ書き
当該現物出資法人の当該適格現物出資の直前の当該負債の帳簿価額(当該負債が当該現物出資法人である公益法人等又は人格のない社団等の収益事業以外の事業に属する負債であつた場合には、当該負債の価額として当該法人の帳簿に記載された金額)「当該資産の価額として当該法人の帳簿に記載された金額」
「当該負債の価額として当該法人の帳簿に記載された金額」
とあり、当該法人は被現物出資法人を指していると思いましたが、そう考えると被現物出資法人が記載した金額によって、資本金等の額の加算額が変動することになります。
現物出資法人の帳簿に記載された金額であれば、被現物出資法人の記載金額に関係なく、資本金等の額は変わらないと考えていましたが、資本金等の額は変わっても問題ないのでしょう。
以前記載した内容と同じ前提で考えてみます。
公益法人等に該当する現物出資法人が非収益事業の
・資産 600
・負債 200
を現物出資した場合、
被現物出資法人の計算は、帳簿に記載された金額に変わります。
例えば、帳簿に
・資産 700
・負債 250
と記載したとします。
A、金額を変更して記載した場合
(被現物出資法人が記載した金額を計算に使用する。)
資産 700 / 負債 250
/ 資本金の額(資本金等の額) 200
/ 資本金等の額の加算額 250
資本金等の額 200+250=450
B、金額を変更しないで記載した場合
(現物出資法人が記載した金額を計算に使用する。)
資産 600 / 負債 200
/ 資本金の額(資本金等の額) 200
/ 資本金等の額の加算額 200
資本金等の額 200+200=400
資本金等の額の加算額が変わるためBが正しいと考えていましたが、Aが正しいと考えられます。
現物出資法人の有価証券の取得価額の規定を確認してみました。
(有価証券の取得価額)
法人税法施行令119条第1項第7号
第百十九条 内国法人が有価証券の取得をした場合には、その取得価額は、次の各号に掲げる有価証券の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
七 適格分社型分割又は適格現物出資により交付を受けた分割承継法人若しくは法第二条第十二号の十一(定義)に規定する分割承継親法人又は被現物出資法人の株式 当該適格分社型分割又は適格現物出資の直前の移転資産(当該適格分社型分割又は適格現物出資により当該分割承継法人又は被現物出資法人に移転した資産をいう。)の帳簿価額から移転負債(当該適格分社型分割又は適格現物出資により当該分割承継法人又は被現物出資法人に移転した負債をいう。)の帳簿価額を減算した金額(当該株式の交付を受けるために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
現物出資法人の計算をしてみます。
1、移転資産の帳簿価額 600
2、移転負債の帳簿価額 200
3、有価証券の取得価額 1-2=400
現物出資法人の有価証券の取得価額は、400
被現物出資法人の資本金等の額の増加額は、450
で違和感が残ります。
この場合の現物出資法人の有価証券の取得価額は400ではなく、非収益事業の資産と負債を現物出資しているため、有価証券の取得価額は計算しない(税務上する必要がない)のが正しいと考えられます。
600-200=400は単なる差額であって、被現物出資法人の資本金等の額の増加額450と何ら関係しないと考えると、被現物出資法人が帳簿に記載した金額によって資本金等の額が変わることは問題ないと考えられます。
