今回は、防衛特別法人税の基準法人税額などの固定措置が適用されない場合(再計算する場合)を確認してみましょう。
固定措置が適用されない場合
先に法案を確認してみましょう。
6 通算課税事業年度のいずれかについて修正申告書の提出又は更正がされる場合において、次に掲げる場合のいずれかに該当するときは、第三項第二号の通算法人の同号イの課税事業年度及び第四項第二号の通算法人の同号イの課税事業年度については、前項の規定は、適用しない。
所得税法等の一部を改正する法律案
一 前項の規定を適用しないものとした場合における第三項第二号ロに掲げる金額(第二項第二号に掲げる場合には、当該金額に前項の規定を適用しないものとした場合における第四項第二号ロに掲げる金額を加算した金額)が五百万円以下である場合
二 当該通算課税事業年度について法人税法第六十四条の五第六項の規定の適用がある場合
三 当該通算課税事業年度について法人税法第六十四条の五第八項の規定の適用がある場合
第3項は基礎控除額、第4項は基礎控除残額の規定です。
第2号のイは、個社のことです。
要件を満たすときは、前項の規定(固定措置)は適用されないため、修正申告の提出や更正によって税額が再計算されます。
再計算の要件は、3つあります。
基準法人税額の合計額が500万円以下の場合
1つ目は、防衛特別法人税特有のものです。
残り2つは、法人税法と同じです。
1つ目の要件を確認してみましょう。
一 前項の規定を適用しないものとした場合における第三項第二号ロに掲げる金額(省略)が五百万円以下である場合
税額を固定しないで再計算した場合に、基準法人税額の合計額が500万円以下の場合です。
基準法人税額の合計額が500万円以下の場合、基礎控除額の500万円でマイナスしきれないため、再計算が必要となります。
カッコ書きの意味
カッコ書きを確認してみましょう。
一 前項の規定を適用しないものとした場合における第三項第二号ロに掲げる金額(第二項第二号に掲げる場合には、当該金額に前項の規定を適用しないものとした場合における第四項第二号ロに掲げる金額を加算した金額)が五百万円以下である場合
第2項第2号(留保金課税の適用)がある場合です。
当該金額(第3項第2号ロ、基準法人税額の合計額)+
前項の規定(固定措置)を適用しないで計算した場合の
第4項第2号のロの金額(基準法人税加算額の合計額)
留保金課税の適用がある場合は、留保金課税の法人税を含めて500万円以下であれば、固定措置が適用されません。再計算することになります。
損益通算を再計算する場合
「法人税法第六十四条の五第六項の規定の適用がある場合」と規定されています。損益通算の金額を固定しないで再計算する場合のことです。
法人税の取扱い
原則、損益通算の計算を固定します。
例外、損益通算の計算を固定しません(再計算します)
法人税で損益通算を再計算する場合(例外の適用がある場合)は、防衛特別法人税の基準法人税額も再計算します。
税務署長が判断する場合
損益通算の計算を固定した場合に法人税の負担が不当に減少する場合があります。税務署長が損益通算の再計算が必要と判断したときは、損益通算を再計算します。
法人税で損益通算を再計算する場合(例外の適用がある場合)は、防衛特別法人税の基準法人税額も再計算することになります。
試算
試算してみましょう。
1、基準法人税額
A社、5,500,000円
B社、2,000,000円
C社、2,500,000円
合計 10,000,000円
2、基礎控除額を基準法人税額で按分すると
A社、2,750,000円
B社、1,000,000円
C社 1,250,000円
合計 5,000,000円
3、課税標準法人税額(1-2)
A社、2,750,000円
B社、1,000,000円
C社 1,250,000円
合計 5,000,000円
4、防衛特別法人税の額(税率4%)
A社、110,000円
B社、40,000円
C社 50,000円
合計 200,000円
5、更正により基準法人税額が減った場合
A社、1,000,000円(450万円減少)
B社、2,000,000円
C社、1,000,000円(150万円減少)
合計 4,000,000円(600万円減少)
6、基礎控除額を基準法人税額で按分すると
A社、1,250,000円
B社、2,500,000円
C社 1,250,000円
合計 5,000,000円
基準法人税額が変わっていないB社の基礎控除額が変動します。
(基準法人税額が変わり割合が変わるため。)
B社の計算に影響を与えないようにするため、基準法人税額を当初の金額に固定します。
7、基準法人税額を固定して基礎控除額を按分すると
A社、2,750,000円
B社、1,000,000円
C社 1,250,000円
合計 5,000,000円
8、課税標準法人税額(5-7)
A社、0円
B社、1,000,000円
C社 0円
合計 1,000,000円
A社とC社は基礎控除がマイナスしきれないため、課税標準法人税額が0円となりますが、マイナスしきれない基礎控除額がB社の計算に反映されません。基準法人税額を固定しているからです。
この場合は、再計算の対象となります。
5、更正により基準法人税額が減った場合
A社、1,000,000円(450万円減少)
B社、2,000,000円
C社、1,000,000円(150万円減少)
合計 4,000,000円(600万円減少)≦5,000,000円
6、基礎控除額を基準法人税額で按分すると
A社、1,250,000円
B社、2,500,000円
C社 1,250,000円
合計 5,000,000円
9、課税標準法人税額(5-6)
A社、0円
B社、0円
C社 0円
合計 0円