非居住者に贈与等をした後に取得した場合であっても取得したものとして取り扱わない場合


今回は、非居住者に贈与等をした後に取得した場合であっても、取得したものとして取り扱わない場合を確認してみましょう。

内容

非居住者に贈与等をした時に1億円以上の有価証券等を持っている場合、売却したものとして所得税を計算する必要があります。国外転出時課税といいます。

今回確認する内容は、贈与等をした後に取得した有価証券等について一定の事由に該当する場合は、新しく取得したのではなく、前から持っていたものとして取り扱うというものです。

国外転出時課税は、贈与等をした時に持っていた有価証券等が対象となり、含み益に対して所得税の課税対象となります。ただし、有価証券等の売却や値下がり等があれば所得税の再計算ができます。

前提として、贈与等の時に持っていた有価証券等が対象となりますので、贈与等の後で取得した有価証券等については国外転出時課税の対象から外れます。

本来は外れますが、一定の事由に該当する場合は対象から外れないようになっています。

一定の事由

非居住者に有価証券等を贈与した場合の国外転出時課税の一定の事由は、国外転出をする場合の国外転出時課税の一定の事由と同じです。

規定を確認してみましょう。

12 第六項から前項までの規定の適用については、これらの規定に規定する受贈者、相続人、受遺者又は猶予適用相続人がこれらの規定に規定する贈与等の日後に前条第十一項各号に掲げる事由により取得した有価証券等は、当該受贈者、相続人、受遺者又は猶予適用相続人が引き続き所有していたものとみなす。

所得税法第60条の3第12項、施行日令和6年6月12日

第6項から前項(第11項)までの規定は、次の6つです。

第6項、有価証券等の売却の取消し(再計算)ができる場合
第7項、納税猶予の延長を受けている場合の第6項の期限の延長(5年が10年に)
第8項、有価証券等を売却した場合(再計算)ができる場合
第9項、有価証券等を売却した場合の通知義務
第10項、納税猶予を受ける前の再計算と通知義務
第11項、有価証券等を売却しなかった場合(再計算)ができる場合

上記の規定で規定されている
・受贈者(財産を贈与で受け取った人)
・相続人
・受遺者(財産を遺言で受け取った人)
・猶予適用相続人(納税の猶予を受けている人)
の4人が贈与等の日より後に一定の事由で取得した有価証券等については、実際に取得していますが、以前から持っていたものとして取り扱われます。

一定の事由は、次の3つです。

第1号
・株式交換(所得税法57条の4第1項)
・株式移転(所得税法57条の4第2項)

第2号、所得税法57条の4第3項
・取得請求権付株式(第1号)
・取得条項付株式(第2号)
・全部取得条項付種類株式(第3号)
・新株予約権付社債(第4号)
・取得条項付新株予約権(第5号)
・取得条項付新株予約権が付された新株予約権付社債(第6号)
の請求権の行使、取得事由の発生、取得決議、行使

第3号、政令で定める事由

内容は、国外転出した場合とまったく同じです。

考え方

1、贈与等をした時にA株式(取得価額1000万円)を持っていたため、国外転出時課税の対象となった。

贈与等をした時の価額1500万円-取得価額1000万円=売却益500万円
取得価額が1500万円に更新される。

2、贈与等をした後に株式交換などによりA株式を売却し、B株式を取得した。
売却収入2200万円-取得価額1500万円=売却益700万円

3、特例の要件を満たす場合、A株式の売却はなくなる。
売却益700万円→0円

4、A株式の取得価額がB株式に引き継がれる。
B株式の取得価額2200万円→1500万円

5、B株式を1400万円で売却した。
売却収入1400万円-取得価額1500万円=売却損100万円

6、贈与等をした時にB株式を持っていなかったが、引き続き持っていたものとして扱われるため、値下がりによる国外転出時課税の再計算ができる。

参考リンク
国外転出した後に取得した場合であっても取得したものとして取り扱わない場合

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