今回は、非特定損金算入限度額の計算を確認します。
3つの割合
欠損金の通算では、次の3つの割合を使用します。
- 特定損金算入限度額で使用する割合(特定損金算入割合、定義なし)
- 非特定欠損金配賦額の配賦割合
- 非特定損金算入限度額で使用する割合(非特定損金算入割合、定義あり)
今回は、3の非特定損金算入限度額の計算(使用する割合)を確認します。
以下、理解のために、正確性を優先していません。
非特定損金算入限度額で使用する割合
特定損金算入限度額の算式と構造は同じです。
国税庁の資料、3の(5)で計算を確認します。
通算法人の過年度の欠損金額の当初申告における損金算入額の計算方法
グループ通算制度に関するQ&A(令和2年6月)(令和2年8月、令和3年6月改訂、令和4年7月改訂)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/group_faq/54.htm
非特定損金算入限度額の算式
2、損金算入限度額の合計額 240-50=190
1、各社の非特定欠損金額×-----------------------
286 3、特定欠損金額以外の欠損金額の合計額 520
=104.5
上記分子の240-50=190は、全体計算です。
「損金算入限度額」から「先に計算した特定欠損金額の損金算入額」をマイナスして「非特定欠損金額(欠損金額のうち特定欠損金額以外のもの)の損金算入限度額の残り」を計算しています。
最初、QAや規定を確認したときに、
損金算入限度額を按分する場合、次の算式をイメージしていました。
限度額の合計額を欠損金額の割合で按分するイメージです。
1、各社の非特定欠損金額 286
2、損金算入限度額の合計額×----------------------
190 3、特定欠損金以外の欠損金額の合計額 520
=104.5
前者の算式が正解ですが、その理由は「割合が1を超える場合には1」とするというルールを使用するためです。グループ全体の損金算入限度額が損金算入の上限という意味です。
限度額の合計額>欠損金額の合計額の場合
国税庁資料の金額とは異なりますが、例えば、
限度額1000>欠損金額800の場合、欠損金額が限度額を下回るため、
欠損金額800を損金算入できれば問題ありません。
分子、限度額の合計額1000
|--------------------|
分母、欠損金額の合計額800
|-------------|
そのため、割合が1を超える場合は1とします。
結果、各社の欠損金額が400の場合、
400×1(限度額1000>欠損金額800→100%)
=400が非特定損金算入限度額となります。
限度額の合計額<欠損金額の合計額の場合
限度額240-50=190<欠損金額520となり、欠損金額が限度額を超えるため、欠損金の損金算入に制限を設ける必要があります。
分子、限度額の合計額240-50=190
|--------|
分母、欠損金額の合計額520
|-------------|
欠損金額の合計額は520ですが、限度額の合計額は190となるため、
いくら損金算入できるのか?を計算する必要があります。
この割合が非特定欠損金損金算入割合(定義あり、別で使用するため)です。
上記の場合は、190/520=約36.53%となります。
最後に各社の(配賦後の)非特定欠損金額に割合をかけて
非特定損金算入限度額を計算します。
P社 286×190/520=104.5→資料では104
S1社 0×190/520=0
S2社 234×190/520=85.5→資料では86
合計 104+86=190
考え方
内容 | P社 | S1社 | S2社 | 合計 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|
1、損金算入限度額(所得×50%) | 110 | 40 | 90 | 240 | 中小法人等以外 |
2、損金算入特定欠損金額 | - | 50 | - | 50 | |
3、 1-2 全体の非特定欠損金額の損金算入限度額 | - | - | - | 240-50 =190 ②分子 法法64の7①三ロ(1) | 国税庁資料の3(3)の200は、別の割合計算をするときに使用するもので、非特定損金算入限度額の分子とは異なります。 |
特定欠損金額以外の欠損金額 | 150 | 70 | 300 | 520 ③分母 法法64の7①三ロ(2) | |
配賦計算 | 省略 | 省略 | 省略 | 省略 | |
配賦後 非特定欠損金額 | 286 ① 法64の7①三ロ柱書 | 0 ① 法64の7①三ロ柱書 | 234 ① 法64の7①三ロ柱書 | 520 | |
非特定損金算入割合 | - | - | - | ②/③ 190/520=約36.53%(R) | 各社合計で見れば520になりますが、全体でみると190までとなります。この割合が約36.53%です。 |
非特定損金算入限度額 | 286×R=104.5 | 0×R =0 | 234×R =85.5 | 190 | ①×②/③ |
非特定欠損金額の損金算入額 | 104 | 0 | 86 | 190 | 非特定欠損金額のうち非特定損金算入限度額に達するまでの金額 |
計算の流れ
規定は、1→2→3→4の順です。
計算は、特定(1→3)→非特定(2→4)の順となります。
今回は、4の計算をしています。
内容 | 欠損金額の計算 | 限度額と 超える部分の計算 |
---|---|---|
特定欠損金額 | 1、法法64条の7 第1項2号イ | 3、法法64条の7 第1項3号イ |
非特定欠損金額 | 2、法法64条の7 第1項2号ロハニ | 4、法法64条の7 第1項3号ロ |
参考規定
非特定損金算入限度額と超える部分の計算
ロ 前号の規定により当該通算法人の当該十年内事業年度において生じた欠損金額とされた金額(同号イに掲げる金額を除く。ロにおいて「非特定欠損金額」という。)が、当該非特定欠損金額に(1)に掲げる金額が(2)に掲げる金額のうちに占める割合((2)に掲げる金額が零である場合には零とし、当該割合が一を超える場合には一とする。次号ロ及び第五項において「非特定損金算入割合」という。)を乗じて計算した金額(第五項及び第九項第七号において「非特定損金算入限度額」という。)を超える場合におけるその超える部分の金額
法人税法64条の7、1項3号ロ
(1) 当該通算法人の適用事業年度の損金算入限度額及び当該適用事業年度終了の日に終了する他の通算法人の事業年度の損金算入限度額の合計額から前号ハ(2)(i)及び(ii)並びに(3)(i)及び(ii)に掲げる金額の合計額を控除した金額
(2) 当該十年内事業年度に係る前号ハ(1)に掲げる金額
まとめ
前号(イ)の規定により、欠損金とされた金額
=特定欠損金額+配賦後の非特定欠損金額
この合計額から「特定欠損金額」をマイナスすると
「配賦後の非特定欠損金額」が計算されます。
配賦後の非特定欠損金額(各社)
×非特定損金算入割合=非特定損金算入限度額
非特定損金算入割合=(1)/(2)=約36.53%
(1)=損金算入限度額の合計額(全体) 240-50=190
(2)=特定欠損金額以外の欠損金額の合計額(全体) 150+70+300=520
(2)の520は、配賦前の金額だと思いますが、
配賦後の金額でも同じになると思います。
国税庁資料には「非特定欠損金額(上記(3))」とあるため、
配賦後の金額の合計額286+234=520が分母のように見えます。
全体の損金算入の枠は240、特定欠損金で50使用、残りは190(分子)
各社の特定欠損金額以外の欠損金額の合計は150+70+300=520
この損金算入できる割合を計算していたということですね。
特定損金算入割合(A)÷(B)については、
(A)=損金算入限度額の合計額(全体) 240
(B)=特定欠損金額の合計額(全体) 50(S1社のみ)
240/50>1→100%(損金算入は50まで)