みなし寄附金と損金算入限度額


今回は、税務上のみなし寄附金と損金算入限度額を確認します。

前提

税務上の取扱いの前提は次のとおりです。

会計上のPL(正味財産増減計算書内訳表)

科目公益目的
事業会計
収益事業等
会計
法人会計合計
経常収益1,0005001001,600
経常費用
事業費
1,1003001,400
経常費用
管理費
100100
他会計振替前の利益△1002000100
他会計振替額90△9000
税引前の利益△101100100
会計上のPL

管理費の按分については、決まったルールがなく合理的に按分します。
仮に、事業費の割合で按分した場合、収益事業の管理費は、
法人会計の管理費100×
収益事業等会計の事業費300÷全体の事業費1,400=21.428となります。

税務上の取扱い

上記の収益事業等会計が法人税の収益事業の場合、
税務上のPLは次のとおりです。

会計は、公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計の3区分ですが、
税務は、収益事業(法人税がかかる事業)と
収益事業以外の事業(法人税がかからない事業)の2区分となります。

税務上の損益計算書

科目非収益事業
(収益事業以外の事業)
収益事業合計
経常収益1,1005001,600
経常費用
事業費
1,1003001,400
経常費用
管理費
78.5721.42100
他会計振替前の利益△79179100
他会計振替額
(みなし寄附金)
90△900
税引前の利益1189100
税務上のPL

管理費(共通費)については合理的に按分するため、
会計上の管理費の計算と税務上の管理費の計算が異なる場合もあります。

今回の設例では、会計上の管理費の計算と
税務上の管理費の計算が同じと仮定します。

収益事業から非収益事業に振り替えた「他会計振替額」が、
一般的には税務上の「みなし寄附金」となります。

みなし寄附金とは、法人税法上の寄附金でないもの(他会計振替額)を、
法人税法上の寄附金と取り扱うものです。

法人税法上の寄附金として取り扱うため、
寄附金の損金不算入の制限を受けることになります。
みなし寄附金であっても寄附金の損金算入限度額を
超える部分については、損金不算入となります。

別表14(2)寄附金の損金算入に関する明細書の記載

みなし寄附金についても、通常の寄附金と同様に別表14(2)を使用します。

別表14(2)寄附金の損金算入に関する明細書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/14(02).pdf

みなし寄附金については、
寄附金の損金算入に関する明細書の右側を使用します。

26欄(同上以外のみなし寄附金額)と28欄(計)に、
他会計振替額の90を記入します。

29欄(所得金額仮計)に、
寄附金の損金不算入を計算する前の所得の89を記入します。

当期利益は収益事業の利益89で他に別表調整がないため、
寄附金の損金不算入を計算する前の所得も89となりますが、
他に別表調整がある場合は、加減算後の所得となります。

30欄(寄附金支出前所得金額)に、179(=89+90)を記入します。
寄附金がなかった場合の所得に戻す計算をしています。

31欄(同上の50%相当額)に、89(=179×50%)を記入します。
(法人の種類によっては、20%や200万円を使用することがあります。)

34欄(損金算入限度額)に、31欄の89を記入します。
37欄に28欄のみなし寄付金の90を記入します。

38欄(同上のうち損金不算入額)に、
37欄-34欄-35欄=みなし寄付金の90-損金算入限度額の89=1と記入します。
40欄(損金不算入額)にも1を記入します。

寄附金の損金不算入額の計算が終わりましたので、
別表4の27欄(寄附金の損金不算入額)に1を記入します。

別表4を簡略すると次のとおりです。

別表4、所得の金額

区分総額留保社外
当期利益8989
仮計8989
寄附金の損金不算入額+1+1
課税所得9089+1
別表4
参考規定

(寄附金の損金不算入)
第三十七条 内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(次項の規定の適用を受ける寄附金の額を除く。)の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

5 公益法人等がその収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業のために支出した金額(公益社団法人又は公益財団法人にあつては、その収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業で公益に関する事業として政令で定める事業に該当するもののために支出した金額)は、その収益事業に係る寄附金の額とみなして、第一項の規定を適用する。ただし、事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることにより支出した金額については、この限りでない。

法人税法37条
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