今回は、みなし配当事由が生じた場合の資本金等の額を確認してみましょう。
みなし配当事由が生じた場合
今回確認する規定は、こちらです。
二十二 当該法人(内国法人に限る。)が法第二十四条第一項各号に掲げる事由(法第六十一条の二第二項の規定の適用がある合併、同条第四項に規定する金銭等不交付分割型分割及び同条第八項に規定する金銭等不交付株式分配を除く。以下この号及び第七項において「みなし配当事由」という。)により当該法人との間に完全支配関係がある他の内国法人から金銭その他の資産の交付を受けた場合(法第二十四条第一項第二号に掲げる分割型分割、同項第三号に掲げる株式分配、同項第四号に規定する資本の払戻し若しくは解散による残余財産の一部の分配又は口数の定めがない出資についての出資の払戻しに係るものである場合にあつては、その交付を受けた時において当該他の内国法人の株式を有する場合に限る。)又は当該みなし配当事由により当該他の内国法人の株式を有しないこととなつた場合(当該他の内国法人の残余財産の分配を受けないことが確定した場合を含む。)の当該みなし配当事由に係る同項の規定により法第二十三条第一項第一号又は第二号に掲げる金額とみなされる金額及び当該みなし配当事由(当該残余財産の分配を受けないことが確定したことを含む。)に係る法第六十一条の二第十七項の規定により同条第一項第一号に掲げる金額とされる金額の合計額から当該金銭の額及び当該資産の価額(適格現物分配に係る資産にあつては、第百二十三条の六第一項の規定により当該資産の取得価額とされる金額)の合計額を減算した金額に相当する金額(当該みなし配当事由が法第二十四条第一項第一号に掲げる合併である場合の当該合併に係る合併法人にあつては、零)
カッコ書きを外してみましょう。
二十二 当該法人(注1)が法第二十四条第一項各号に掲げる事由(注2)により当該法人との間に完全支配関係がある他の内国法人から金銭その他の資産の交付を受けた場合(注3)又は当該みなし配当事由により当該他の内国法人の株式を有しないこととなつた場合(注4)の当該みなし配当事由に係る同項の規定により法第二十三条第一項第一号又は第二号に掲げる金額とみなされる金額及び当該みなし配当事由(注5)に係る法第六十一条の二第十七項の規定により同条第一項第一号に掲げる金額とされる金額の合計額から当該金銭の額及び当該資産の価額(注6)の合計額を減算した金額に相当する金額(注7)長い規定のため、分けてみましょう。
規定の後半に「減算」とありますので、
AからBを減算する規定です。
A、当該法人(注1)が法第二十四条第一項各号に掲げる事由(注2)により当該法人との間に完全支配関係がある他の内国法人から金銭その他の資産の交付を受けた場合(注3)又は当該みなし配当事由により当該他の内国法人の株式を有しないこととなつた場合(注4)の当該みなし配当事由に係る同項の規定により法第二十三条第一項第一号又は第二号に掲げる金額とみなされる金額及び当該みなし配当事由(注5)に係る法第六十一条の二第十七項の規定により同条第一項第一号に掲げる金額とされる金額の合計額から
B、当該金銭の額及び当該資産の価額(注6)の合計額を
C、減算した金額 A-B
と読んでみましょう。
Aの金額
Aの規定の後半に「合計額」とあります。
Dの金額とEの金額を合計しています。
「及び」があるため、区切ってみましょう。
D、当該法人(注1)が法第二十四条第一項各号に掲げる事由(注2)により当該法人との間に完全支配関係がある他の内国法人から金銭その他の資産の交付を受けた場合(注3)又は当該みなし配当事由により当該他の内国法人の株式を有しないこととなつた場合(注4)の当該みなし配当事由に係る同項の規定により法第二十三条第一項第一号又は第二号に掲げる金額とみなされる金額及び
E、当該みなし配当事由(注5)に係る法第六十一条の二第十七項の規定により同条第一項第一号に掲げる金額とされる金額の合計額 D+Eとなります。
Dの規定を見てみましょう。「又は」があるので区切ります。
F、当該法人(注1)が法第二十四条第一項各号に掲げる事由(注2)により当該法人との間に完全支配関係がある他の内国法人から金銭その他の資産の交付を受けた場合(注3)又は
G、当該みなし配当事由により当該他の内国法人の株式を有しないこととなつた場合(注4)の当該みなし配当事由に係る同項の規定により
法第23条第1項第1号又は第2号に掲げる金額とみなされる金額
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法人税法第24条は、配当でないものを配当として取り扱う規定(みなし配当)です。各号に掲げる事由は、全部で7つあります。
Fは、みなし配当事由により、完全支配関係がある他の内国法人から資産(例、お金)の交付を受けた場合です。
Gは、みなし配当事由により、完全支配関係がある他の内国法人の株式を所有しなくなる場合です。
法人税法第23条第1項は、受取配当等の益金不算入です。
・第1号、剰余金の配当など
・第2号、金銭の分配
Eの規定を見てみましょう。
当該みなし配当事由(注5)に係る法第六十一条の二第十七項の規定により同条第一項第一号に掲げる金額とされる金額法人税法第61条の2第17項は、みなし配当事由(一定の規定は除外)により資産(例、お金)の交付を受けた場合の有価証券の売却損益を計算する規定です。
同条(法人税法第61条の2)第1項第1号に掲げる金額は、有価証券の売却収入を指します。
原則として、売却収入は時価となりますが、
法人税法第61条の2第17項が適用された場合は、
時価から売却直前の有価証券の帳簿価額(簿価)に変わります。
(売却損益が認識されなくなります。)
そのため、Eの規定は有価証券の簿価となります。
Bの金額
Bの規定を見てみましょう。
当該金銭の額及び当該資産の価額(注6)の合計額法人が受け取ったお金とお金以外の資産の価額の合計額です。
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おまけ、試算してみましょう。
例1
・受け取った資産の合計額 15,000
・みなし配当 5,000
・有価証券の簿価 7,000
考え方
現金(配当収入) 5,000 / みなし配当 5,000
現金(売却収入) 10,000 / 有価証券(簿価) 7,000
/ 売却益 3,000
完全支配関係がある場合(法第61条の2第17項)
現金(配当収入) 5,000 / みなし配当 5,000
現金(売却収入) 7,000 / 有価証券(簿価) 7,000
/ 売却益 3,000
売却収入が変わり、売却損益が計上されなくなります。
Dの金額、配当とみなされる金額 5,000
Eの金額、売却収入 10,000 → 7,000
Aの金額、合計額 D+E=12,000
Bの金額、受け取った資産の合計額 15,000
Cの金額 A-B=12,000-15,000=-3,000
第22号は、資本金等の額の減算額です。
-3,000を減算するため、+3,000を加算します。
現金(配当収入) 5,000 / みなし配当 5,000
現金(売却収入) 7,000 / 有価証券(簿価) 7,000
実際の売却収入は10,000のため、
現金(売却収入) 3,000 / 資本金等の額 3,000
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例2
・受け取った資産の合計額 15,000
・みなし配当 5,000
・有価証券の簿価 12,000
考え方
現金(配当収入) 5,000 / みなし配当 5,000
現金(売却収入) 10,000 / 有価証券(簿価) 12,000
売却損 2,000 /
完全支配関係がある場合(法第61条の2第17項)
現金(配当収入) 5,000 / みなし配当 5,000
現金(売却収入) 12,000 / 有価証券(簿価) 12,000売却損 2,000 /
売却収入が変わり、売却損益が計上されなくなります。
Dの金額、配当とみなされる金額 5,000
Eの金額、売却収入 10,000 → 12,000
Aの金額、合計額 D+E=17,000
Bの金額、受け取った資産の合計額 15,000
Cの金額 A-B=17,000-15,000=2,000
第22号は、資本金等の額の減算額です。
+2,000を減算します。
現金(配当収入) 5,000 / みなし配当 5,000
現金(売却収入) 12,000 / 有価証券(簿価) 12,000
実際の売却収入は10,000のため、
資本金等の額 2,000 / 現金(売却収入) 2,000
