インボイスがない場合の仕入税額控除と取戻しの特例との関係


令和5年10月1日以後、原則としてインボイスの保存がない場合、
消費税の控除ができなくなります。

経過措置として、インボイスがない場合であっても3年間は
80%の仕入税額控除が認められています。
この経過措置と取戻しの特例との適用関係を確認してみましょう。

経過措置

経過措置については、「百分の八十を乗じて算出した金額を新消費税法第三十条第一項に規定する課税仕入れに係る消費税額とみなして、同条の規定を適用する。」とあり、80%相当額を課税仕入れに係る消費税額と「みなして」、同条(消費税法30条1項、仕入税額控除)の規定を適用します。

取戻しの特例

取戻しの特例については、「適格請求書発行事業者以外の者から行つた課税仕入れであることにより法第三十条第一項の規定の適用を受けないこととなるものに限る。」とあり、消費税法30条1項の規定の適用がないものが特例の前提となっています。そのため、経過措置の適用を受けたもの(消費税法30条1項の適用があるもの)については、取戻しの特例の対象とはならないと考えられます。

まとめ

仕入税額控除の適用がない&特定収入の制限あり
 → 2重制限を取戻し特例で解消する。

仕入税額控除の適用が80%あり&特定収入の制限あり
 → 2重制限ではないため取戻し特例の適用なし。

改正後は、経過措置の対象となるもののみの特定収入の計算欄が設けられるかもしれません。明らかに区分できない場合は使途不特定の特定収入になるでしょう。現時点で国税庁の計算表は公表されていません。

2023/12/08、追加

下記ページの一番下に概要や計算例が公表されています。

国、地方公共団体や公共・公益法人等と消費税(令和5年6月)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/shohizei.htm

調整規定の概要、1ページ下で

「適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れに係る経過措置(令和5年 10 月1日から令和8年9月 30日までは仕入税額相当額の 80%控除、令和8年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までは仕入税額相当額の50%控除)の適用を受ける課税仕入れに係る支払対価の額は含まれます。

とあり、取戻しの特例の対象となります。

補助金Bのうち、80%控除の適用を受けるもの850,000円について
10欄、850,000円
11欄、850,000円×7.8/110=60,272円
12欄、11欄(60,272円)×2欄(1-調整割合)=36,163円

13欄、12欄×20%=7,232円が取戻しの対象となります。

・60,272円のうち80%は、仕入税額控除の対象となり取戻し対象外
・60,272円のうち20%は、仕入税額控除の対象外となり取戻しの対象
となります。

参考規定

《参考1》 特定収入がある場合の仕入控除税額の調整規定の整備(令和4年度税制改正)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/shohizei_8.pdf

第五十二条 事業者(新消費税法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。以下この条及び次条において同じ。)が、五年施行日から五年施行日以後三年を経過する日(同条第一項において「適用期限」という。)までの間に国内において行った課税仕入れ新消費税法第三十条第一項の規定の適用を受けるものを除く。次条第一項において同じ。)のうち、五年改正規定による改正前の消費税法(以下この条及び次条において「旧消費税法」という。)第三十条の規定がなお効力を有するものとしたならば同条第一項の規定の適用を受けるものについては、同条第九項に規定する請求書等又は当該請求書等に記載すべき事項に係る電磁的記録(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成十年法律第二十五号)第二条第三号に規定する電磁的記録をいう。次項並びに次条第一項及び第二項において同じ。)新消費税法第三十条第九項に規定する請求書等とみなし、かつ、当該課税仕入れに係る支払対価の額(同条第八項第一号ニに規定する課税仕入れに係る支払対価の額をいう。次条第一項において同じ。)に百十分の七・八(当該課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等(新消費税法第二条第一項第九号の二に規定する軽減対象課税資産の譲渡等をいい、消費税法第七条第一項、第五条の規定による改正後の同法第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。第三項及び次条第一項において同じ。)に係るものである場合には、百八分の六・二四)を乗じて算出した金額に百分の八十を乗じて算出した金額を新消費税法第三十条第一項に規定する課税仕入れに係る消費税額とみなして、同条の規定を適用する。この場合において、同条第八項第一号ハ中「である旨)」とあるのは、「である旨)及び所得税法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第十五号)附則第五十二条第一項の規定の適用を受ける課税仕入れである旨」とする。

消費税法

8 事業者(法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、取戻し対象特定収入につき、法第六十条第四項の規定の適用を受けた場合において、法令若しくは交付要綱等により国等に使途を報告すべきこととされている文書又は第一項第六号ロに規定する文書により適格請求書発行事業者以外の者から行つた課税仕入れに係る支払対価の額(法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除されることとなる課税期間及び法第三十七条第一項の規定の適用を受ける課税期間における適格請求書発行事業者以外の者から行つた課税仕入れに係る支払対価の額を除くものとし、適格請求書発行事業者以外の者から行つた課税仕入れであることにより法第三十条第一項の規定の適用を受けないこととなるものに限る。以下この条において「控除対象外仕入れに係る支払対価の額」という。)の合計額を明らかにしているときは、法第三十七条第一項の規定の適用を受ける場合を除き、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額に一から当該取戻し対象特定収入のあつた課税期間の調整割合を控除して得た率を乗じて計算した金額をその明らかにした課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額に加算することができる。この場合において、当該加算した後の金額は、当該課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。

消費税法施行令75条、施行日、令和5年10月1日
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