インボイスがない課税仕入れが10億円を超える場合の計算


今回は、インボイスがない課税仕入れが
10億円を超える場合の計算を確認してみましょう。

インボイスがない場合の課税仕入れの計算

インボイスがない場合の計算については、
附則に規定されています。

一定期間、インボイスの保存がなかった場合であっても
支払った消費税の80%が控除できます。

この附則に次の制限が追加されます。

インボイスがない課税仕入れのうち、
1事業者からの課税仕入れについては、
10億円の限度が設定されます。

10億円を超える部分については、
消費税の控除ができなくなります。

法案は読替規定になっていますので、
読替後の規定を確認してみましょう。

(適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置)
第五十二条 事業者(新消費税法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。以下この条及び次条において同じ。)が、五年施行日から五年施行日以後三年を経過する日(同条第一項において「適用期限」という。)までの間に国内において行った課税仕入れ(新消費税法第三十条第一項の規定の適用を受けるものを除く。次条第一項において同じ。)のうち、五年改正規定による改正前の消費税法(以下この条及び次条において「旧消費税法」という。)第三十条の規定がなお効力を有するものとしたならば同条第一項の規定の適用を受けるもの(当該事業者が、消費税法第二条第一項第三号に規定する個人事業者にあってはその年、法人にあってはその同項第十三号に規定する事業年度において一の事業者から行う当該課税仕入れに係る支払対価の額(新消費税法第三十条第八項第一号ニに規定する課税仕入れに係る支払対価の額をいう。以下この項、次条第一項及び附則第五十三条の二において同じ。)の合計額が十億円を超える場合における当該超える部分の課税仕入れを除く。以下この条及び次条において「控除対象課税仕入れ」という。)ついては、旧消費税法第三十条第九項に規定する請求書等又は当該請求書等に記載すべき事項に係る電磁的記録(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成十年法律第二十五号)第二条第三号に規定する電磁的記録をいう。次項並びに次条第一項及び第二項において同じ。)を新消費税法第三十条第九項に規定する請求書等とみなし、かつ、当該控除対象課税仕入れの課税仕入れに係る支払対価の額(同条第八項第一号ニに規定する課税仕入れに係る支払対価の額をいう。次条第一項及び附則第五十三条の二において同じ。)に百十分の七・八(当該控除対象課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等(新消費税法第二条第一項第九号の二に規定する軽減対象課税資産の譲渡等をいい、消費税法第七条第一項、第五条の規定による改正後の同法第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。第三項及び次条第一項において同じ。)に係るものである場合には、百八分の六・二四)を乗じて算出した金額に百分の八十を乗じて算出した金額を新消費税法第三十条第一項に規定する課税仕入れに係る消費税額とみなして、同条の規定を適用する。この場合において、同条第八項第一号ハ中「である旨)」とあるのは、「である旨)及び所得税法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第十五号)附則第五十二条第一項の規定の適用を受ける課税仕入れである旨」とする。

追加された部分を確認してみましょう。

(当該事業者が、消費税法第二条第一項第三号に規定する個人事業者にあってはその年、法人にあってはその同項第十三号に規定する事業年度において一の事業者から行う当該課税仕入れに係る支払対価の額(新消費税法第三十条第八項第一号ニに規定する課税仕入れに係る支払対価の額をいう。以下この項、次条第一項及び附則第五十三条の二において同じ。)の合計額が十億円を超える場合における当該超える部分の課税仕入れを除く。以下この条及び次条において「控除対象課税仕入れ」という。)

10億円を超えない部分を
「控除対象課税仕入れ」といいます。

10億円については、
・個人事業者については、1暦年(1/1-12/31)
・法人については、1事業年度
の合計で判定します。

税率が混在する場合の計算

政令に細かく規定されると思いますが、
税率が混在する場合については、
上記の附則で確認できません。

例えば、課税仕入れ16.38億円の内訳が
・10%課税仕入れ 9.9億円
・軽減税率8%課税仕入れ 6.48億円
の場合、10億円をマイナスすると
6.38億円部分については、消費税の控除ができなくなります。

残り10億円については、
課税仕入れの割合に応じて計算することになるのでしょう。

仮に割合に応じて計算した場合
(控除できない部分を課税仕入れの割合で按分する方法)

消費税の控除ができない部分
16.38億円-10億円=6.38億円(税率が混在している)

6.38億円のうち10%に対応する部分
6.38億円×9.9億円÷16.38億円=385,604,395円(A、切捨て)

10%の控除対象課税仕入れ
9.9億円-385,604,395円(超過部分)=604,395,605円

604,395,605円×7.8÷110×80%(経過措置)=34,285,714円(切捨て)

6.38億円のうち軽減税率8%に対応する部分
6.38億円×6.48億円÷16.38億円=252,395,604円(B、切捨て)

軽減税率8%の控除対象課税仕入れ
6.38億円-252,395,604円(超過部分)=395,604,396円

395,604,395円×6.24÷108×80%(経過措置)=18,285,714円(切捨て)

AとBの円未満の端数を切り捨てると、
控除対象課税仕入れが1円超過するため、
片方は差引計算になるかもしれません。

控除できる部分を
課税仕入れの割合で按分する方法も考えられます。

控除対象課税仕入れ
16.38億円>10億円(経過措置の上限)→少ない金額10億円

10%に対応する部分
10億円×9.9億円÷16.38億円=604,395,604円(切捨て)

軽減税率8%に対応する部分
10億円×6.48億円÷16.38億円=395,604,396円(切捨て)

用途区分が必要な場合

用途区分が必要な場合を考えてみましょう。

例えば、課税仕入れ13.2億円の内訳が次の場合
・課税売上げ対応 4.4億円
・共通対応 4.4億円
・非課税売上げ対応 4.4億円

10億円を超える3.2億円部分については、
消費税の控除ができなくなります。

残り10億円については、
課税仕入れの割合に応じて計算することになるのでしょう。

仮に割合に応じて計算した場合
(控除できない部分を課税仕入れの割合で按分する方法)

消費税の控除ができない部分
13.2億円-10億円=3.2億円(用途区分が混在している)
・課税売上げ対応 3.2億円×4.4億円÷13.2億円=約1.06億円
・共通対応 約1.06億円
・非課税売上げ対応 約1.06億円
合計は、約1.06億円+約1.06億円+約1.06億円=3.2億円

控除対象課税仕入れ
・課税売上げ対応 4.4億円-約1.06億円=約3.3億円
・共通対応 約3.3億円
・非課税売上げ対応 約3.3億円
合計は、約3.3億円+約3.3億円+約3.3億円=10億円

控除対象課税仕入れ10億円を
課税仕入れの割合で按分する場合は、
・課税売上げ対応 10億円×4.4億円÷13.2億円=約3.3億円
・共通対応 約3.3億円
・非課税売上対応 約3.3億円

控除する消費税の計算

全額控除の場合
10億円×7.8÷110×80%(経過措置)=56,727,273円

個別対応方式の場合
A、課税売上げ対応
 約3.3億円×7.8÷110×80%(経過措置)=18,909,091円(全額控除)
B、共通対応
 18,909,091円×課税売上割合(割合控除)
C、非課税売上げ対応
 18,909,091円(控除なし)

一括比例配分方式の場合
10億円×7.8÷110×80%(経過措置)=
56,727,273円×課税売上割合(割合控除)

複数税率と用途区分の両方発生する場合も
合理的な按分計算になるのでしょう。

実務上の対応

80%控除(経過措置)についても
会計ソフトによっては、消費税コードが設けられています。

ただし、上記の複数税率や用途区分を考慮した
10億円制限を計算することは難しいと思いますので、
10億円超に該当する場合は、Excel等で計算が必要になるでしょう。

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