インボイスの保存を要しない少額課税仕入れの改正


今回は、インボイスの保存を要しない少額課税仕入れの改正を確認します。

内容

インボイス制度の導入に伴って、少額の課税仕入れについてはインボイスの保存をしなかった場合であっても、帳簿の保存のみで消費税控除ができる特例(経過措置)が設けられる予定です。

法案を見ると、一部読み替え部分があります。
確認しようとすると読み替え前の文言がありません。

改正前の令和5年9月30日以前の規定と
改正後の令和5年10月1日以後の規定で微妙に要件が異なるからです。

以下、現行の規定、改正後の規定、読み替え後の規定を確認します。

現在の規定(改正前)の保存要件

改正前の規定では、原則として帳簿と請求書等の保存が必要です。
ただし、税込支払対価の合計額が少額である場合、
特定課税仕入れである場合などについては、請求書等の保存が不要です。

改正前の保存要件

 第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(同項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が少額である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。

消費税法30条
改正予定の保存要件

改正後の規定についても、原則として帳簿と請求書等の保存が必要です。
ただし、請求書等の交付を受けることが困難である場合、特定課税仕入れに係るものである場合などについては、請求書等の保存が不要です。

改正後の保存要件

7 第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(請求書等の交付を受けることが困難である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。

消費税法30条

現在(改正前)は、税込支払対価の合計額が少額の場合に請求書等の保存が不要となりますが、改正後は、請求書等の交付を受けることが困難な場合に請求書等の保存が不要となります。

読み替え後の保存要件

令和5年10月1日から令和11年9月30日まで(6年間)の
少額の課税仕入れがインボイスの保存不要となる取引です。

この経過措置については、次の課税期間が対象となります。

1、基準期間における課税売上高が1億円以下の課税期間
 → 2年前の売上が1億円以下

2、その特定期間における課税売上高が5000万円以下の課税期間
 → 1年前の上半期の売上が5000万円以下
 → 給与等で判定することはできません。

読み替え後の規定

7 第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。

消費税法30条
前2条の規定は適用しないの意味

法案の中に「この場合において、当該課税仕入れについては、前二条の規定は、適用しない。」とあります。

前2条の規定は、何の規定なのでしょう?
改正法案の中の前2条の規定という意味ではないようです。

現在の法令の前2条だと、第53条とか第52条とかです。
現在の法令の第52条と第53条は、インボイスの保存がなくても80%(50%)の
消費税控除ができる特例のことで、「この2つの規定を適用しない」という意味です。

まとめ
内容令和5年9月30日以前令和5年10月1日以後令和8年10月1日以後
原則請求書等、帳簿の保存により100%控除同左同左
カッコ書き課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が少額である場合などは帳簿の保存により100%控除請求書等の交付を受けることが困難である場合などは帳簿の保存により100%控除同左
経過措置
52条
改正前の請求書と帳簿の保存により80%控除
経過措置
53条
改正前の請求書と帳簿の保存により50%控除
経過措置
53条の2
少額インボイスについては帳簿の保存により100%控除(経過措置不適用)同左
まとめ
参考法案

第五十三条の二 請求書等の保存を要しない課税仕入れに関する経過措置
事業者(新消費税法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が五年施行日から五年施行日以後六年を経過する日までの間に国内において行う課税仕入れ(その基準期間における課税売上高が一億円以下である課税期間又はその特定期間における課税売上高(消費税法第九条の二第一項に規定する特定期間における課税売上高をいう。)が五千万円以下である課税期間に行うものに限る。)について、当該課税仕入れに係る支払対価の額が少額である場合として政令で定める場合における新消費税法第三十条第七項の規定の適用については、同項中「帳簿及び請求書等(請求書等の交付を受けることが困難である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)」とあるのは、「帳簿」とする。この場合において、当該課税仕入れについては、前二条の規定は、適用しない。

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