インボイス制度を踏まえた技術的修正_課税仕入れに係る支払対価の額


今回は、インボイス制度を踏まえた技術的修正のうち
「課税仕入れに係る支払対価の額」を確認します。

インボイス制度を踏まえた技術的修正は7つ

インボイス制度の開始に伴って消費税法基本通達が改正(整理)されます。
改正の概要の中で「インボイス制度を踏まえた技術的修正」は全部で7つ。

1、11-1-5、水道光熱費等の取扱い
2、11-2-2、使用人等の発明等に係る報償金等の支給
3、11-2-3、外交員等の報酬
4、11-2-4、会費、組合費等
5、11-2-5、ゴルフクラブ等の入会金
6、11-2-6、公共的施設の負担金等
7、11-4-2、建物と土地等とを同一の者から同時に譲り受けた場合の取扱い

「課税仕入れに係る消費税額」の定義が改正されることにより、
「課税仕入れに係る支払対価の額」が別の規定で定義されるため、
通達の修正を行ったということでしょう。
今回は、この変更点を確認していきます。

インボイス制度前の取扱い

先にインボイス制度前の規定を確認します。

(仕入れに係る消費税額の控除)
第三十条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、国内において行う課税仕入れ(特定課税仕入れに該当するものを除く。以下この条及び第三十二条から第三十六条までにおいて同じ。)若しくは特定課税仕入れ又は保税地域から引き取る課税貨物については、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の属する課税期間の第四十五条第一項第二号に掲げる課税標準額に対する消費税額(以下この章において「課税標準額に対する消費税額」という。)から、当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れに係る消費税額(当該課税仕入れに係る支払対価の額に百十分の七・八を乗じて算出した金額をいう。以下この章において同じ。)、以下省略

消費税法

課税仕入れに係る消費税額は、
当該課税仕入れに係る支払対価の額×7.8÷110で計算します。

課税仕入れに係る支払対価の額は、後に定義規定があります。

6 第一項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額とは、課税仕入れの対価の額(対価として支払い、又は支払うべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、当該課税仕入れに係る資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該課税仕入れに係る役務を提供する事業者に課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額(これらの税額に係る附帯税の額に相当する額を除く。第九項第一号において同じ。)に相当する額がある場合には、当該相当する額を含む。)をいい、

消費税法30条

課税仕入れに係る支払対価の額とは、
課税仕入れの対価の額(税込み)をいいます。

インボイス制度後の取扱い

インボイス制度後の規定を確認します。

(仕入れに係る消費税額の控除)
第三十条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、国内において行う課税仕入れ(特定課税仕入れに該当するものを除く。以下この条及び第三十二条から第三十六条までにおいて同じ。)若しくは特定課税仕入れ又は保税地域から引き取る課税貨物については、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の属する課税期間の第四十五条第一項第二号に掲げる消費税額(以下この章において「課税標準額に対する消費税額」という。)から、当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れに係る消費税額(当該課税仕入れに係る適格請求書(第五十七条の四第一項に規定する適格請求書をいう。第九項において同じ。)又は適格簡易請求書(第五十七条の四第二項に規定する適格簡易請求書をいう。第九項において同じ。)の記載事項を基礎として計算した金額その他の政令で定めるところにより計算した金額をいう。以下この章において同じ。)、以下省略

消費税法、施行日令和5年10月1日

課税仕入れに係る消費税額は、
政令で定めるところにより計算した金額をいいます。

政令で定める方式とは、次の3つです。
1、請求書等積上げ方式
2、帳簿積上げ方式
3、総額割り戻し方式

「課税仕入れに係る支払対価の額」の文言がなくなっています。
定義規定からもなくなっています。

どこに規定されているのかというと、
帳簿の定義の中で規定されています。

8 前項に規定する帳簿とは、次に掲げる帳簿をいう。
一 課税仕入れ等の税額が課税仕入れに係るものである場合には、次に掲げる事項が記載されているもの
イ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
ロ 課税仕入れを行つた年月日
ハ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容(当該課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)
ニ 課税仕入れに係る支払対価の額(当該課税仕入れの対価として支払い、又は支払うべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、当該課税仕入れに係る資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該課税仕入れに係る役務を提供する事業者に課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額(これらの税額に係る附帯税の額に相当する額を除く。)に相当する額がある場合には、当該相当する額を含む。第三十二条第一項において同じ。)

消費税法、施行日令和5年10月1日

現行の消費税法基本通達の「課税仕入れに係る支払対価に該当する(又はしない)」という内容をそのままにすると、帳簿の記載事項に関する通達になってしまうため、「課税仕入れに該当する(又はしない)」に修正したということなのでしょうね。

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