エンジェル税制の対象株式の価値がなくなった場合


今回は、エンジェル税制の対象株式の価値が
なくなった場合を確認してみましょう。

株式の価値がなくなった場合

今回確認する規定はこちら↓

(特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等)
第三十七条の十三の三 特定中小会社の特定株式を払込みにより取得をした居住者又は恒久的施設を有する非居住者(第三十七条の十三第一項に規定する居住者又は恒久的施設を有する非居住者(当該特定株式が前条第一項に規定する設立特定株式に該当する場合には、同項に規定する居住者又は恒久的施設を有する非居住者を含む。)に該当するものに限る。以下この条において同じ。)について、当該特定中小会社の設立の日から当該特定中小会社(当該特定中小会社であつた株式会社を含む。)が発行した株式に係る上場等の日(金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場された日その他の政令で定める日をいう。)の前日までの期間(第八項において「適用期間」という。)内に、その有する当該払込みにより取得をした特定株式が株式としての価値を失つたことによる損失が生じた場合として次に掲げる事実が発生したときは、当該事実が発生したことは当該特定株式の譲渡をしたことと、当該損失の金額として政令で定める金額は当該特定株式の譲渡をしたことにより生じた損失の金額とそれぞれみなして、この条及び第三十七条の十の規定その他の所得税に関する法令の規定を適用する。
一 当該払込みにより取得をした特定株式を発行した株式会社が解散(合併による解散を除く。)をし、その清算が結了したこと。
二 前号に掲げる事実に類する事実として政令で定めるもの

租税特別措置法37条の13の3、施行日令和5年10月1日

規定をまとめてみましょう。


特定中小会社の特定株式を払込みにより
取得をした居住者等(注1)について、

その特定中小会社の設立の日から
その特定中小会社(注2)が発行した株式に係る
上場等の日(注3)の前日までの期間(注4、適用期間)内に、

その有するその払込みにより取得をした特定株式が
株式としての価値を失つたことによる損失が生じた場合として
次に掲げる事実が発生したときは、

その事実が発生したことはその特定株式の譲渡をしたことと、
その損失の金額として政令で定める金額は
その特定株式の譲渡をしたことにより生じた損失の金額と

それぞれみなして、
この条及び第37条の10の規定
その他の所得税に関する法令の規定を適用する。

一 その払込みにより取得をした特定株式を発行した株式会社が
解散(注5)をし、その清算が結了したこと。
二 前号に掲げる事実に類する事実として政令で定めるもの

注1、居住者等
第37条の13第1項に規定する居住者等(注1-1)に該当するものに限る。
以下この条において同じ。

注1-1、その特定株式が前条第1項に規定する
設立特定株式に該当する場合には、同項に規定する居住者等を含む。

注2、特定中小会社
その特定中小会社であつた株式会社を含む。

注3、上場等の日
金融商品取引法第二条第十六項に規定する
金融商品取引所に上場された日その他の政令で定める日をいう。

注4、適用期間
第八項において「適用期間」という。

注5、解散
合併による解散を除く。


さらにまとめると

特定中小会社の特定株式を払込みにより
取得をした居住者等(注1)について、
「適用期間」内に、

その有するその払込みにより取得をした特定株式が
価値喪失した場合として一定の事実が発生したときは、
特定株式の譲渡損失が発生したものとして取り扱われます。


取得した株式の価値がなくなった場合、
所得税は家事費となるため、
原則として譲渡損失として扱うことができません。

特例(要件を満たして価値がなくなること等)に該当する場合に
譲渡損失として計算可能です。

一定の事実は、次の2つです。
1号、特定株式を発行した株式会社が解散をし、その清算が結了したこと。
(合併解散を除きます。)
2号、政令で定める事実(破産手続開始の決定)

対象となる特例

この譲渡損失として取扱う特例は、
エンジェル税制に関するものです。

エンジェル税制は、3つあります。
1、エンジェル税制(取得価額の控除)
2、新しいエンジェル税制(令和5年4月1日以後)
3、エンジェル税制(寄附金控除)

譲渡損失の規定中
「特定中小会社(1の税制)の特定株式を払込み」とあり、
上記2と3のエンジェル税制に対応しているのでしょうか?
(いずれか適用できない規定があるのでしょうか?)

確認してみましょう。

「特定中小会社の特定株式を払込みにより取得をした居住者又は恒久的施設を有する非居住者(第三十七条の十三第一項に規定する居住者又は恒久的施設を有する非居住者(当該特定株式が前条第一項に規定する設立特定株式に該当する場合には、同項に規定する居住者又は恒久的施設を有する非居住者を含む。)に該当するものに限る。以下この条において同じ。)」

とあるので、2の税制も対応しています。
(特定中小会社の特定株式が設立特定株式に該当する場合には、
同項に規定する居住者等を含む。)の部分が根拠です。

続いて、3の税制が対応しているか確認してみましょう。

1の規定中、
「次の各号に掲げる株式会社(以下この項及び第三十七条の十三の三第一項において「特定中小会社」という。)

とあり、

次の各号の中で
「一 中小企業等経営強化法第六条に規定する特定新規中小企業者に該当する株式会社 当該株式会社により発行される株式」

3の規定中、
「次の各号に掲げる株式会社
(以下この項において「特定新規中小会社」という。)

とあり、

次の各号の中で
「一 中小企業等経営強化法第六条に規定する特定新規中小企業者に該当する株式会社(その設立の日以後の期間が一年未満のものその他の財務省令で定めるものに限る。)

とあるため、3の税制も対応しています。
1の規定の特定中小会社の範囲の方が広いからです。

手続規定

エンジェル税制の譲渡損失とする規定は、
その事実発生年分の確定申告書に、
・特例を受けようとする旨の記載
・計算明細書などの添付
がある場合に限り、適用可能です。
(やむを得ない事情の取扱いあり)

参考規定

手続規定

2 前項の規定は、政令で定めるところにより、同項に規定する事実が発生した日の属する年分の確定申告書に、同項の規定の適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、同項に規定する損失の金額として政令で定める金額の計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。

租税特別措置法37条の13の3、施行日令和5年10月1日

やむを得ない事情がある場合

3 税務署長は、前項の確定申告書の提出がなかつた場合又は同項の記載若しくは添付がない確定申告書の提出があつた場合においても、その提出又は記載若しくは添付がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、当該記載をした書類及び同項の財務省令で定める書類の提出があつた場合に限り、第一項の規定を適用することができる。

租税特別措置法37条の13の3、施行日令和5年10月1日
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