グループ通算制度の概要


今回はグループ通算制度の概要を確認します。以前は連結納税制度でしたが、令和4年4月1日からグループ通算制度に改正されています。

グループ通算制度については、複雑な規定は一部残っていること、中小企業にはほとんどあまり関係がないこと等から、自分の考えを整理する目的で簡単に確認していきます。実務で必要な方は書籍・セミナーをご活用ください。

グループ通算制度の全体像

グループ通算制度の全体像を確認します。
グループ通算制度の大枠は次の4点です。

  1. 黒字と赤字の相殺(損益通算、欠損金の通算)
  2. 開始と終了の手続き
  3. 資産の時価評価
  4. 含み損の損金不算入
黒字と赤字の相殺

グループ通算制度の主な目的は、損益通算(当期の黒字と当期の赤字の相殺)欠損金の通算(当期の黒字と過去の赤字の相殺)の2つです。

通常、法人毎に会計上の利益と課税所得を計算して法人税を納付します。100%支配関係があるグループ法人であっても、株主が同じであっても、必ず法人単体で法人税を計算します。ここで問題が生じます。

例えば、グループ全体の損益が0であっても、一方の法人が黒字であれば法人税がかかり、他方の法人が赤字であれば欠損金が発生し、グループ全体で法人税が発生します。

法人格は別々ですが、グループが一体となって経営している実態を考慮すると個々の法人で税金を計算するより、グループ全体で税金を計算した方が合理的であるため、単体計算の例外として連結納税制度が認められていました。複雑な規定で煩雑だったため、グループ通算制度に改正されました。

グループ通算制度の損益通算のイメージ

内容A法人B法人合計
通算前の課税所得+1000△10000
損益通算△1000+10000
通算後の課税所得と法人税000
グループ通算制度の計算イメージ

損益通算により、A法人・B法人の課税所得と法人税は0になります。

グループ通算制度の手続き

イ 開始手続き
 グループ通算制度については、連結納税制度と同様、強制適用ではなく選択制度です。損益を通算したい場合は、国税庁長官(所轄税務署経由)に承認申請書を提出する必要があります。承認申請書の提出期限は損益通算をしようとする最初の事業年度の開始日の3ヶ月前の日です。3月決算法人の場合は、12月31日が提出期限となります。

ロ 加入手続き
 グループ通算制度を1から始めるのが「開始」、途中から参加するのが「加入」といいます。加入については、手続きしてから加入するような仕組みではなく、加入条件を満たした日にグループ通算制度の承認があったとみなされます。

ハ 取りやめ等
 グループ通算制度を止めるときも手続きが必要です。ただし、止めるときは「やむを得ない事情」がある場合に限られますので、無制限にグループ通算制度を開始したり止めたりすることはできません。止めたくなってもなかなか止められないので慎重に検討しましょう。個人的にはあまりオススメできません……

資産の時価評価

グループ通算制度は複数の法人の損益を通算できます。ただし、この損益の通算は特例中の特例であるため、資産の含み益・含み損をグループ通算制度が始まる前に実現(精算)させる規定があります。グループ通算制度前の隠れた損益は精算する必要があります。

例えば、令和5年4月1日からグループ通算制度が始まる場合は、令和4年3月31日に有する一定の資産について、時価評価が必要です。また、グループ通算制度から離脱する場合にも、開始・加入と同様に時価評価が必要な場合があります。

含み損の損金不算入等

グループ通算制度の損益通算については、実質的にグループとして一体となって経営している場合(共同事業要件を満たしている場合等)は認められていますが、形式的にグループとして一体となって経営している場合(共同事業要件を満たしていない場合等)は損益通算に一定の制限がかかります。この制限を「特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入」といいます。

この特例は他にもあります。損益通算できる法人が新事業を開始した場合には、新事業の税金対策として含み損資産の売却等による租税回避が考えられるため、特定資産譲渡等損失額(譲渡等による損失)については、損金不算入となる規定が設けられています。

規定のタイトル(参考)

黒字と赤字の相殺
損益通算(法法64条の5)
・損益通算の対象となる欠損金額の特例(法法64条の6)
欠損金の通算(法法64条の7)
・合併等があった場合の欠損金の損金算入(法法64条の8)

手続き
・承認制度(法法64条の9)
・通算制度の取りやめ等(法法64条の10)

資産の時価評価
・通算制度の開始に伴う時価評価(法法64条の11)
・通算制度への加入に伴う時価評価(法法64条の12)
・通算制度からの離脱等に伴う時価評価(法法64条の13)

含み損の損金不算入
・特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入(法法64条の14)

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