グループ通算制度の欠損金の通算


今回は、グループ通算制度の欠損金の通算を確認します。
複雑な規定ですので基本のみ確認します。
一般の欠損金の繰越しについてはこちら

欠損金の通算の規定のタイトル

新しい規定なので、規定の概要をまとめました。
今回は、グループ通算制度特有の「特定欠損金」と
「非特定欠損金」を確認します。
具体的な計算は、下記1と2に規定されています。

  • グループ通算制度の欠損金の通算
  • 特定欠損金の定義
  • 適格合併等があった場合の特定欠損金の引継ぎ
  • 遮断措置
  • 遮断措置の不適用(再計算)
  • 益金算入
  • 遮断措置の不適用がある場合の損金算入限度額
  • 損益通算の遮断措置の不適用があった場合の欠損金の通算の停止
  • 再計算があった場合の金額の修正
  • 手続き
  • 政令
概要

グループ通算制度の欠損金は、次の2つです。

  • 特定欠損金額
    特定欠損金額は、欠損金額が生じた法人の所得を限度として損金算入できる欠損金です。
  • 非特定欠損金額
    非特定欠損金額は、通算制度後に生じた欠損金額で特定欠損金額に該当しないものをいいます。
特定欠損金額(2項)

欠損金の通算は、特定欠損金を先に計算します。
特定欠損金額は次の3つ。

  • グループ通算制度が始まる前に発生した欠損金額
  • 適格合併や残余財産が確定した場合により引き継がれた欠損金額
  • 欠損金額のうち、64条の6(損益通算の対象となる欠損金額の特例)により、損益通算できなくなった部分
非特定欠損金額(1項2号)

算式を用いて確認します。

10年内事業年度(※)において生じた欠損金額=イ+ロ(+ハーニ)
※通算法人の適用事業年度開始の日前十年以内に開始した各事業年度

イ=特定欠損金額
ロ=特定欠損金額以外の欠損金(配賦前の非特定欠損金額)
ハ=被配賦欠損金額(他社から欠損金の枠が配賦される)
ニ=配賦欠損金額(他社に欠損金の枠を配賦する)

配賦前の非特定欠損金額に、ハとニの調整した金額を
配賦後の非特定欠損金額といいます。

・配賦前の非特定欠損金額+(ハ)被配賦欠損金額=配賦後の非特定欠損金
・配賦前の非特定欠損金額△(ニ)配賦欠損金額=配賦後の非特定欠損金


法人税法64条の7、1項2号の一部(参考)

イ、特定欠損金額
当該十年内事業年度に係る当該通算法人において生じた欠損金額(第五十七条第二項の規定によりその事業年度の欠損金額とみなされたものを含み、次に掲げるものを除く。以下この条において同じ。)のうち特定欠損金額

次に掲げるもの
・既に損金算入したもの。
・特例により切り捨てられたもの。
・繰戻し還付により使用したもの。

ロ、配賦前の非特定欠損金額
当該十年内事業年度に係る当該通算法人の対応事業年度において生じた
欠損金額のうち特定欠損金額以外の金額(基準となる金額)

被配賦欠損金額(1項2号ハ)

配賦前の非特定欠損金額に「被配賦欠損金額」をプラスして、
配賦後の非特定欠損金額を計算します。

・配賦前の非特定欠損金額+被配賦欠損金額(ハ)=配賦後の非特定欠損金

ハ、被配賦欠損金額
非特定欠損金配賦額>ロ(配賦前の非特定欠損金額)の場合は、
超える部分(※)をプラスする。
※所得合計額が0の場合は、超える部分の金額も0

非特定欠損金配賦額特定欠損金額以外の金額(基準となる金額)を
超えていれば、他の法人から非特定欠損金額が配賦されます。

非特定欠損金配賦額(1項2号ハ)

非特定欠損金配賦額=(1)×一定割合
一定割合=
(2、個社)
———————————————————————————-
(2、個社)+(3、他社)=所得合計額(※)

(1)10年内事業年度の非特定欠損金額(配賦前)の合計額(グループ全体)
(2)それぞれの通算法人の適用事業年度の損金算入限度額の残額(個社)
(3)(2)の合計(グループ全体)

非特定欠損金額(配賦前)の合計額(1)を
損金算入限度額(残額)の比でそれぞれの法人に配賦します。

配賦欠損金額(1項2号ニ)

配賦前の非特定欠損金額から配賦欠損金額をマイナスして、
配賦後の非特定欠損金額を計算します。

・配賦前の非特定欠損金額▲配賦欠損金額(ニ)=配賦後の非特定欠損金

ニ、配賦欠損金額
非特定欠損金配賦額<ロ(配賦前の非特定欠損金額)の場合は、
満たない部分(※)をマイナスする。
※所得合計額が0の場合は、満たない部分の金額も0

非特定欠損金配賦額特定欠損金額以外の金額<基準となる金額>に
満たなければ、他の法人に非特定欠損金額を配賦します。

以下、参考規定です。

非特定欠損金配賦額の規定(1項2号ハ)

 (1)に掲げる金額に(2)に掲げる金額が(2)及び(3)に掲げる金額の合計額(ハ及びニにおいて「所得合計額」という。)のうちに占める割合を乗じて計算した金額(ニにおいて「非特定欠損金配賦額」という。)がロに掲げる金額を超える場合におけるその超える部分の金額(所得合計額が零である場合には、零)


(1)配賦元の金額
当該通算法人及び他の通算法人の事業年度で当該十年内事業年度の期間内にその開始の日がある事業年度において生じた欠損金額のうち特定欠損金額以外の金額の合計額<10年内事業年度の非特定欠損金額(配賦前)の合計額>


(2)個社の金額(分子)
当該通算法人の適用事業年度の損金算入限度額(第五十七条第一項ただし書(同条第十一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する損金算入限度額をいう。以下この条において同じ。)から次に掲げる金額の合計額を控除した金額
次に掲げる金額
ⅰ、この号<2号>の規定により当該十年内事業年度の各十年内事業年度において生じた欠損金額とされた金額で第五十七条第一項の規定により適用事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額の合計額
ⅱ、当該十年内事業年度に係る当該通算法人の対応事業年度において生じた特定欠損金額第五十七条第一項の規定により適用事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額

個社の計算
損金算入限度額(所得50%)-
(損金算入計算済の非特定欠損金額で損金算入する金額
+損金算入計算済の特定欠損金額で損金算入額)


(3)他社の金額
当該通算法人の適用事業年度終了の日に終了する他の通算法人の事業年度の損金算入限度額から次に掲げる金額の合計額を控除した金額の合計額
ⅰ、この号<2号>の規定により当該十年内事業年度開始の日に開始した当該他の通算法人の各事業年度において生じた欠損金額とされた金額で第五十七条第一項の規定により適用事業年度終了の日に終了する当該他の通算法人の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額の合計額
ⅱ、当該十年内事業年度の期間内にその開始の日がある当該他の通算法人の事業年度において生じた特定欠損金額第五十七条第一項の規定により適用事業年度終了の日に終了する当該他の通算法人の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額

他社の計算
他社の損金算入限度額(所得50%)-
(ⅰ他社の損金算入計算済の非特定欠損金額で損金算入する金額
+ⅱ他社の損金算入計算済の特定欠損金額で損金算入する金額)

通算制度の欠損金額(参考規定)

 通算法人の適用事業年度(当該通算法人が通算子法人である場合には、当該通算法人に係る通算親法人の事業年度終了の日に終了するものに限る。以下この条において同じ。)開始の日前十年以内に開始した各事業年度(当該通算法人が前号の規定の適用がある通算子法人である場合には、同号の規定を適用した場合における開始日前十年以内に開始した各事業年度。以下この条において「十年内事業年度」という。)において生じた欠損金額は、イ及びロに掲げる金額の合計額(ハに掲げる金額がある場合には当該金額を加算した金額とし、ニに掲げる金額がある場合には当該金額を控除した金額とする。)とする。

 当該十年内事業年度に係る当該通算法人の対応事業年度(当該通算法人の事業年度(前号の規定の適用がある場合には、その適用がないものとした場合における事業年度。イにおいて同じ。)で当該十年内事業年度の期間内にその開始の日がある事業年度(当該十年内事業年度終了の日の翌日が開始日である場合には、当該終了の日後に開始した事業年度を含む。)をいう。以下この条において同じ。)において生じた欠損金額(第五十七条第二項の規定によりその事業年度の欠損金額とみなされたものを含み、次に掲げるものを除く。以下この条において同じ。のうち特定欠損金額
(1) 第五十七条第一項の規定により適用事業年度前の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額(当該各事業年度においてこの条の規定の適用を受けた場合には、第四号の規定により当該各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額とされる金額)の合計額
(2) 第五十七条第四項から第六項まで、第八項若しくは第九項又は第五十八条第一項(青色申告書を提出しなかつた事業年度の欠損金の特例)の規定によりないものとされたもの
(3) 第五十七条の二第一項(特定株主等によつて支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用)の規定により第五十七条第一項の規定を適用しないものとされたもの
(4) 第八十条(欠損金の繰戻しによる還付)の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となつたもの

 当該十年内事業年度に係る当該通算法人の対応事業年度において生じた欠損金額のうち特定欠損金額以外の金額<非特定欠損金額>

 省略、非特定欠損金配賦額の規定

 非特定欠損金配賦額がロに掲げる金額に満たない場合におけるその満たない部分の金額(所得合計額が零である場合には、零)

法人税法法64条の7、第1項、2号
特定欠損金額の定義(参考規定)

2 前項第二号から第四号までに規定する特定欠損金額とは、次に掲げる金額をいう。

一 通算法人(第六十四条の十一第一項各号(通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益)又は第六十四条の十二第一項各号(通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益)に掲げる法人に限る。)の最初通算事業年度(通算承認の効力が生じた日以後最初に終了する事業年度(通算子法人の事業年度にあつては、当該通算子法人に係る通算親法人の事業年度終了の日に終了するものに限る。)をいう。次号及び次項において同じ。)開始の日前十年以内に開始した各事業年度において生じた欠損金額

二 通算法人を合併法人とする適格合併(被合併法人が当該通算法人との間に通算完全支配関係がない法人(他の通算法人で最初通算事業年度が終了していないものを含む。)であるものに限る。)が行われたこと又は通算法人との間に完全支配関係(当該通算法人による完全支配関係又は第二条第十二号の七の六(定義)に規定する相互の関係に限る。)がある他の内国法人で当該通算法人が発行済株式若しくは出資の全部若しくは一部を有するもの(当該通算法人との間に通算完全支配関係がないもの(他の通算法人で最初通算事業年度が終了していないものを含む。)に限る。)の残余財産が確定したことに基因して第五十七条第二項の規定によりこれらの通算法人の欠損金額とみなされた金額

三 通算法人に該当する事業年度において生じた欠損金額のうち前条の規定によりないものとされたもの

法人税法64条の7、2項

特定欠損金額は、次の3つ。

1、通算法人(時価評価除外法人)の
最初通算事業年度()開始の日前十年以内に
開始した各事業年度において生じた欠損金額
→通算制度により切り捨てられなかった欠損金額

2、通算法人を合併法人とする適格合併()が行われたこと又は通算法人との間に完全支配関係()がある他の内国法人で当該通算法人が発行済株式若しくは出資の全部若しくは一部を有するもの()の残余財産が確定したことに基因して第五十七条第二項の規定によりこれらの通算法人の欠損金額とみなされた金額
→適格合併等により引き継いできた欠損金額

3、通算法人に該当する事業年度において生じた欠損金額のうち前条<64条の6>の規定によりないものとされたもの

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