スキャナ保存の要件


今回は、スキャナ保存の要件を確認していきます。
電帳法は、データ改ざん防止を目的としています。

スキャナ保存の規定

規定を左に、要約したものを右に記載しています。
非常に長い規定です。

規定内容
3 前項に規定するもののほか、保存義務者は、国税関係書類(財務省令で定めるものを除く。以下この項において同じ。)の全部又は一部について、この財務省令で定めるものとは、
1棚卸表
2貸借対照表
3損益計算書
4計算、整理又は決算に関して作成されたその他の書類

これら4つをいいます。この4つの書類は、税金計算に関する重要な書類のため、スキャナ保存が認められていません。
当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合には、財務省令で定める装置とは、
スキャナです。
財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。 この財務省令で定めるルールが大きく分けると7つあります(後述)。できる規定なので、スキャナ保存を使うかどうかは任意です。
後段
この場合において、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存が当該財務省令で定めるところに従って行われていないとき(当該国税関係書類の保存が行われている場合を除く。)は、
7つのルールを守らずに、スキャン保存した場合は、
(ただし、スキャンする前の書類を保存している場合を除きます)
当該保存義務者は、当該電磁的記録を保存すべき期間その他の財務省令で定める要件を満たして当該電磁的記録を保存しなければならない。(ルールを守らずに保存している)データを保存する義務がある。データを破棄してはいけないという意味です。
電帳法4条3項、スキャナ保存の要件

以上がスキャナ保存の大枠の規定です。これだけであれば非常に楽なんですが、詳細は以下のとおり非常に理解しづらい規定です。

7つのルール

大枠は以下の7つです。細かく分けるとさらに増えます。

  • 速やかにスキャンすること
  • 要件を満たすシステムを利用すること
  • 入力者の情報を保存すること
  • スキャンしたデータと会計帳簿を紐付けること
  • ディスプレイで確認できるようにしておくこと
  • 検索できるようにしておくこと
  • 事務手続書を備えること

規定が長すぎるので気になる方は、要約だけ確認しましょう。

規定要約
本文
6 法第四条第三項の規定により国税関係書類(同項に規定する国税関係書類に限る。以下この条において同じ。)に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えようとする保存義務者は、
スキャナ保存を行う予定の人は、
次に掲げる要件(当該保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合には、第六号(ロ及びハに係る部分に限る。)に掲げる要件を除く。)に従って当該電磁的記録の保存をしなければならない次の7つのルールを守って、スキャンしたデータを保存する義務があります。

ただし、ダウンロード要件を満たす場合は、6号ロとハの要件は満たす必要がありません。

ダウンロード要件のイ(いつ、いくら、誰)の検索ができれば要件をクリアします。
一 次に掲げる方法のいずれかにより入力すること。
イ 当該国税関係書類に係る記録事項の入力をその作成又は受領後、速やかに行うこと。
ロ 当該国税関係書類に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと(当該国税関係書類の作成又は受領から当該入力までの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。)


イは、約1週間以内1つ1つスキャンすること。

ロは、約2月以内にまとめてスキャンすること。

ただし、約2月の間に改ざんされる可能性があるため、スキャナ保存規程を設ける場合に限ります。
二 前号の入力に当たっては、次に掲げる要件(当該保存義務者が同号イ又はロに掲げる方法により当該国税関係書類に係る記録事項を入力したことを確認することができる場合にあっては、ロに掲げる要件を除く。)を満たす電子計算機処理システムを使用すること。
要件を満たすシステムを利用すること。
イ スキャナ(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を使用する電子計算機処理システムであること。
(1) 解像度が、日本産業規格(産業標準化法(昭和二十四年法律第百八十五号)第二十条第一項(日本産業規格)に規定する日本産業規格をいう。以下同じ。)Z六〇一六附属書AのA・一・二に規定する一般文書のスキャニング時の解像度である二十五・四ミリメートル当たり二百ドット以上で読み取るものであること。
(2) 赤色、緑色及び青色の階調がそれぞれ二百五十六階調以上で読み取るものであること。
スキャナであれば何でもいいわけではなく、良く見えるようにすること、カラーであることを条件としています。

わざわざルールを設けている理由は、人間の目でチェックできるようにする必要があるからですね。
ロ 当該国税関係書類の作成又は受領後、速やかに一の入力単位ごとの電磁的記録の記録事項に一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプ(次に掲げる要件を満たすものに限る。以下この号並びに第四条第一項第一号及び第二号において「タイムスタンプ」という。)を付すこと(当該国税関係書類の作成又は受領から当該タイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合にあっては、その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに当該記録事項に当該タイムスタンプを付すこと)
(1) 当該記録事項が変更されていないことについて、当該国税関係書類の保存期間(国税に関する法律の規定により国税関係書類の保存をしなければならないこととされている期間をいう。)を通じ、当該業務を行う者に対して確認する方法その他の方法により確認することができること。
(2) 課税期間(国税通則法第二条第九号(定義)に規定する課税期間をいう。第五条第二項において同じ。)中の任意の期間を指定し、当該期間内に付したタイムスタンプについて、一括して検証することができること。
タイムスタンプを付すこと
(1)変更されていないことが確認できること
(2)タイムスタンプの一括検証できること
入力情報保存要件
ハ 当該国税関係書類をスキャナで読み取った際の次に掲げる情報(当該国税関係書類の作成又は受領をする者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合において、当該国税関係書類の大きさが日本産業規格A列四番以下であるときは、(1)に掲げる情報に限る。)を保存すること。
(1) 解像度及び階調に関する情報
(2) 当該国税関係書類の大きさに関する情報

スキャンしたときの情報を保存できること。
改ざん防止要件
ニ 当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項について、次に掲げる要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムであること。
(1) 当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
(2) 当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行うことができないこと。

改ざんすることができないシステムを用いること。
入力者管理要件
三 当該国税関係書類に係る記録事項の入力を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと。
スキャンする人・スキャンする人を監督する人の情報を残すことです。誰かが勝手にスキャンするのは認められません。
相互関連要件
四 当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項と当該国税関係書類に関連する法第二条第二号に規定する国税関係帳簿の記録事項(当該国税関係帳簿が、法第四条第一項の規定により当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えられているもの又は法第五条第一項若しくは第三項の規定により当該電磁的記録の備付け及び当該電磁的記録の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えられているものである場合には、当該電磁的記録又は当該電子計算機出力マイクロフィルムの記録事項)との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこと。
スキャンした文書と会計帳簿等とを紐付けることです。
出力要件
五 当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をする場所に当該電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、映像面の最大径が三十五センチメートル以上のカラーディスプレイ及びカラープリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、当該電磁的記録をカラーディスプレイの画面及び書面に、次のような状態で速やかに出力することができるようにしておくこと。
イ 整然とした形式であること。
ロ 当該国税関係書類と同程度に明瞭であること。
ハ 拡大又は縮小して出力することが可能であること。
ニ 国税庁長官が定めるところにより日本産業規格Z八三〇五に規定する四ポイントの大きさの文字を認識することができること。

データは人間の目で視認できないので、視認できるような環境を整えておくこと。ディスプレイ等をきちんと配置しておくことです。
検索要件
六 当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこと。
イ 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(ロ及びハにおいて「記録項目」という。)を検索の条件として設定することができること。
ロ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
ハ 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。

電子取引の取引情報の検索要件と同じです。
イ いつ、いくら、誰を検索できること
ロ 範囲指定できること
ハ 組み合わせができること
七 第二項第一号の規定は、法第四条第三項の規定により国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えようとする保存義務者の当該電磁的記録の保存について準用する。電子取引の取引情報の準用と同じです。スキャナ保存は、電子取引と異なり1号全て準用します。
準用規定
2 法第四条第一項の規定により国税関係帳簿(同項に規定する国税関係帳簿をいう。第六項第四号を除き、以下同じ。)に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えようとする保存義務者は、

次に掲げる要件(当該保存義務者が第五条第五項第一号に定める要件に従って当該電磁的記録の備付け及び保存を行っている場合には、第三号に掲げる要件を除く。)に従って当該電磁的記録の備付け及び保存をしなければならない。

スキャナ保存を行う人は、






次のルールに従って、
保存する義務があります。

一 当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に併せて、次に掲げる書類(当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理に当該保存義務者が開発したプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下この項及び第六項第五号において同じ。)以外のプログラムを使用する場合にはイ及びロに掲げる書類を除くものとし、当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理を他の者(当該電子計算機処理に当該保存義務者が開発したプログラムを使用する者を除く。)に委託している場合にはハに掲げる書類を除くものとする。)備付けを行うこと。

次の書類を備え付けること。
ただし、他社プログラムを利用する場合は、イ・ロは不要となる。他社に委託する場合は、ハは不要となる。
イ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理システム(電子計算機処理に関するシステムをいう。以下同じ。)の概要を記載した書類イ システム概要書
ロ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理システムの開発に際して作成した書類ロ システム開発作成書
ハ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理システムの操作説明書ハ 操作説明書
ニ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理並びに当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類(当該電子計算機処理を他の者に委託している場合には、その委託に係る契約書並びに当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類)ニ 事務手続書
委託している場合は、委託契約書と事務手続書
スキャナ保存の7つのルール

 以上がスキャナ保存の基本的な取扱いです。これ以外に「一般書類」と「過去分重要書類」がありますが今回は省略します。残りは次のやむを得ない場合(8項)とルールを守れない場合の保存要件(12項)です。

やむを得ない場合
規定内容
8 法第四条第三項の保存義務者が、災害その他やむを得ない事情により、同項前段に規定する財務省令で定めるところに従って同項前段の国税関係書類に係る電磁的記録の保存をすることができなかったことを証明した場合には、前二項の規定にかかわらず、当該電磁的記録の保存をすることができる。
スキャナ保存を利用した人が、災害等により、ルールを守れなかった場合を「証明した」場合には、ルールを守らずに、データを保存できます。

証明とデータの保存が必要です。
ただし、当該事情が生じなかったとした場合において、当該財務省令で定めるところに従って当該電磁的記録の保存をすることができなかったと認められるときは、この限りでない。仮に、災害等がなかったとしても、データの保存ができないと認められるときは、データの保存は必要ありません。
災害等があった場合
ルールを守らない場合の保存要件
規定要約
12 法第四条第三項後段に規定する財務省令で定める要件は、同項後段の国税関係書類に係る電磁的記録について、当該国税関係書類の保存場所に、国税に関する法律の規定により当該国税関係書類の保存をしなければならないこととされている期間、保存が行われることとする。先に下段を見ます。

ルールが守れなかったときの要件は、そのスキャンしたデータを、本店等に書類を保存する必要がある期間(例えば7年)、保存する必要があります。要するに、廃棄できないということです。
3 前項に規定するもののほか、保存義務者は、国税関係書類(財務省令で定めるものを除く。以下この項において同じ。)の全部又は一部について、当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。

後段
この場合において、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存が当該財務省令で定めるところに従って行われていないとき(当該国税関係書類の保存が行われている場合を除く。)は、当該保存義務者は、当該電磁的記録を保存すべき期間その他の財務省令で定める要件を満たして当該電磁的記録を保存しなければならない。
先に見ます。

前段(左)で、ルールを守れば紙の保存ではなく、スキャナ保存できると規定しています。

ルールを守れない場合は、財務省令で定めるルールを守る義務があります。

上(12項)に戻ります。
ルールを守らない場合の保存要件

非常に理解しづらい規定です。しかも、上記規定を読んでも実際にどう運用すればいいのかイメージしづらいと思います。ただ、参考となる電帳法の基本通達やQ&Aなどは、上記規定を前提に解説しているため、スキャナ保存の導入を検討している方は、規定・通達・Q&Aなどをご確認してみましょう。

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