フリーレント期間の法人税の取扱い


今回は、フリーレント期間の法人税の取扱いを確認してみましょう。

基本通達の内容

賃料がない期間を「フリーレント期間」といいます。フリーレントについて、法人税の基本通達が公表されていますので確認してみましょう。

(無償等賃借期間を含む賃貸借取引に係る支払額の損金算入)
12の5-3-2 賃借期間のうち賃料の支払がない又は通常に比して少額である期間(以下12の5-3-2において「無償等賃借期間」という。)が定められた契約のうち、次に掲げる場合に該当するなどの課税上弊害があるもの以外のものに基づく法第53条第1項⦅賃貸借取引に係る費用⦆に規定する賃貸借取引(以下12の5-3-2において「賃貸借取引」という。)に係る当該契約に基づき支払うこととされている金額についての同項の規定の適用に当たっては、当該金額が当該賃借期間にわたり支払われるべきものとした場合に各事業年度中に支払われるべきこととなる金額(当該事業年度終了の日までに損金経理をした金額に限る。)を当該各事業年度の損金の額に算入するものとする。以下省略

賃借期間のうち
・賃料の支払がない
・通常に比して少額である
期間を「無償等賃借期間」といいます。

法人税を計算する場合は、少額な場合も無償等賃借期間に含まれます。先に、上記の通達が適用できない場合(課税上弊害があるもの)を確認してみましょう。

課税上弊害があるもの(金額で判定)

課税上弊害があるものとして、2つ公表されています。
1つ目を確認してみましょう。

⑴ 当該無償等賃借期間に関する定めがないとした場合に当該賃貸借取引につき支払うこととなる金額と当該契約に基づき支払うこととされている金額との差額が当該契約に基づき支払うこととされている金額のおおむね2割を超える場合

1つ目の要件は、「無償等賃借期間に関する定めがない場合」です。

1、賃貸借取引につき支払うこととなる金額
2、契約に基づき支払うこととされている金額
3、1と2の差額が契約に基づき支払うこととされている金額の20%を超える場合

数字を使って確認してみましょう。

1がフリーレントを考慮しない金額(例、120万円)
2がフリーレントを考慮する契約上の金額(例、90万円)
(と考えています。)

120万円-90万円=差額30万円>90万円×20%=18万円となり、課税上弊害があることになります。
(フリーレントの割合が高い=課税上の弊害がある)

課税上弊害があるもの(期間で判定)

2つ目を確認してみましょう。

⑵ 当該賃借期間の開始の日の属する事業年度終了の日において、当該無償等賃借期間内の日の属する各事業年度のいずれかの事業年度で、当該事業年度における賃借期間のおおむね5割を超える期間が賃料の支払がない又は通常に比して少額であるものとなると見込まれる場合(当該契約に係る無償等賃借期間が4月を超える場合に限る。)

判定時期は、賃貸借期間の開始日が含まれる事業年度の終了日です。

「事業年度における賃借期間のおおむね5割を超える期間が、賃料の支払がない又は通常に比して少額であるものとなると見込まれる場合」とあります。

1事業年度の半分を超えるフリーレント期間(約6カ月超)は、課税上弊害があるという意味です。

例えば、次の場合
1年目、120万円
2年目、120万円
3年目、120万円
4年目、無償等賃借期間 0円(1年間無料)
5年目、120万円

4年目のフリーレント期間がおおむね50%を超えているため、課税上弊害があることになります。
(フリーレントの割合が高い=課税上の弊害がある)

この場合、合計480万円を5年間で費用処理と判断されるのかもしれません。

損金経理の意味

課税上の弊害がない場合を確認してみましょう。

当該契約に基づき支払うこととされている金額についての同項の規定の適用に当たっては、当該金額が当該賃借期間にわたり支払われるべきものとした場合に各事業年度中に支払われるべきこととなる金額(当該事業年度終了の日までに損金経理をした金額に限る。)を当該各事業年度の損金の額に算入するものとする。

「同項」は、法人税法第53条(賃貸借取引に係る費用)第1項を指します。

例えば、次の場合で確認してみましょう。
・1月あたり5万円の賃貸借契約
・2年契約
・1月目から4月目までは、条件付きで無償となる。
・期首に契約した。

1年目 賃借料
1月 0円
2月 0円
3月 0円
4月 0円
5月 50,000円
6月 50,000円
7月 50,000円
8月 50,000円
9月 50,000円
10月 50,000円
11月 50,000円
12月 50,000円
1年目合計 400,000円

2年目
1月から12月まで 各50,000円
2年目合計 600,000円

フリーレントなし合計 1,200,000円
フリーレントあり合計 1,000,000円

「当該金額=契約に基づき支払うこととされている金額(例、100万円)」が、当該賃借期間(2年間)にわたり支払われるべきものとした場合に各事業年度(1年目)中に支払われるべきこととなる金額(例、1年目は40万円)を当該各事業年度の損金の額に算入するものとする。

となります。

カッコ書きで、損金経理(法人がその確定した決算において費用又は損失として経理すること)をした金額に限定されています。法令では損金経理の要件はありません。

法令では、債務の確定が経費(損金)となる要件として規定されていますが、フリーレント期間がある場合は債務が確定していないと考えることもできるため、損金経理(形式)を要件としているのでしょう。

基本通達の内容だと
・フリーレントなし合計1,200,000円÷24月=1月あたり50,000円
・フリーレントあり合計1,000,000円÷24月=1月あたり約41,667円
の計算は不要になります。


おまけ
フリーレント期間(無償期間)については、消費税はかかりません。

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