今回は、リバースチャージの対象となる売上げを確認してみましょう。
特定資産の譲渡等と特定仕入れ
日本の消費税がかかる主な取引は、次の2つです。
1、資産の譲渡等(資産の売却、資産の貸付け、サービスの提供の3つ)
2、特定仕入れ
1は売上げの取扱い、2は仕入れの取扱いです。
仕入れについても消費税がかかる場合があります。
リバースチャージといいます。
参考規定、消費税が課される場合
(課税の対象)
消費税法第4条第1項、令和7年6月20日施行
第四条 国内において事業者が行つた資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。第三項において同じ。)及び特定仕入れ(事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等をいう。以下この章において同じ。)には、この法律により、消費税を課する。
1の資産の譲渡等には、「特定資産の譲渡等」が含まれません。
事業として他者から受けた「特定資産の譲渡等」を特定仕入れといいます。
「特定資産の譲渡等」については、売上げではなく仕入れに消費税がかかります。この特定資産の譲渡等の定義を確認してみましょう。
特定資産の譲渡等
特定資産の譲渡等の定義
八の二 特定資産の譲渡等 事業者向け電気通信利用役務の提供及び特定役務の提供をいう。
消費税法第2条第1項第8号の2、令和7年6月20日施行
1、事業者向け電気通信利用役務の提供
2、特定役務の提供
の2つを併せて、特定資産の譲渡等といいます。
1の「事業者向け電気通信利用役務の提供」を確認する前に、電気通信利用役務の提供を確認してみましょう。
電気通信利用役務の提供
電気通信利用役務の提供の定義
八の三 電気通信利用役務の提供 資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物(著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第二条第一項第一号(定義)に規定する著作物をいう。)の提供(当該著作物の利用の許諾に係る取引を含む。)その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供(電話、電信その他の通信設備を用いて他人の通信を媒介する役務の提供を除く。)であつて、他の資産の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供以外のものをいう。
消費税法第2条第1項第8号の3、令和7年6月20日施行
資産の譲渡等(資産の売却、資産の貸付け、サービスの提供の3つ)のうち、電気通信回線を介して行われる役務の提供をいいます。
インターネットを利用したサービスの提供のことです。
参考リンク
・消費税の国内取引の判定_電気通信を利用したサービスの提供
「事業者向け」の電気通信利用役務の提供の定義を確認してみましょう。
事業者向け電気通信利用役務の提供
事業者向け電気通信利用役務の提供の定義
八の四 事業者向け電気通信利用役務の提供 国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、当該電気通信利用役務の提供に係る役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいう。
消費税法第2条第1項第8号の4、令和7年6月20日施行
国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、サービスの性質や取引条件等から、サービスの提供を受ける人が通常事業者に限られるものを「事業者向け電気通信利用役務の提供」といいます。
・所得税法に規定する非居住者に該当する個人事業者
・法人税法に規定する外国法人
の2つを「国外事業者」といいます。
仕入れに消費税がかかる場合は、電気通信利用役務の提供のうち
・事業者向け電気通信利用役務の提供
に限られます。
参考となる消費税法基本通達、5-8-4(事業者向け電気通信利用役務の提供)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/05/08.htm
特定役務の提供
特定役務の提供の定義を確認してみましょう。
八の五 特定役務の提供 資産の譲渡等のうち、国外事業者が行う演劇その他の政令で定める役務の提供(電気通信利用役務の提供に該当するものを除く。)をいう。
消費税法第2条第1項第8号の5、令和7年6月20日施行
資産の譲渡等(資産の売却、資産の貸付け、サービスの提供の3つ)のうち、
国外事業者がする演劇などのサービスの提供を「特定役務の提供」といいます。
「政令で定める」とありますので、消費税法施行令を確認してみましょう。
(特定役務の提供の範囲)
消費税法施行令第2条の2、令和7年4月1日施行
第二条の二 法第二条第一項第八号の五に規定する政令で定める役務の提供は、映画若しくは演劇の俳優、音楽家その他の芸能人又は職業運動家の役務の提供を主たる内容とする事業として行う役務の提供のうち、国外事業者が他の事業者に対して行う役務の提供(当該国外事業者が不特定かつ多数の者に対して行う役務の提供を除く。)とする。
芸能人(例、俳優や音楽家)や職業運動家(例、プロスポーツ選手)のサービスの提供を主たる内容とする事業としてするサービスの提供のうち、国外事業者が他の事業者に対するサービスの提供です。
カッコ書きで、国外事業者が不特定かつ多数の人(一般の消費者)に対するサービスの提供が除外されています。
まとめ
1、「特定」資産の譲渡等に該当する場合は、売上げに消費税がかからない。仕入れに消費税をかけるため。
2、特定資産の譲渡等は、次の2つ。
・事業者向け電気通信利用役務の提供
・特定役務の提供
3、電気通信利用役務の提供のうち、事業者向けのサービスを「事業者向け電気通信利用役務の提供」といいます。
4、国外事業者が行う演劇などのサービス提供を「特定役務の提供」といいます。