今回は、リース譲渡で時価を超える下取りをした場合の
消費税を確認してみましょう。
消費税の取扱い
一定の賃貸借契約については、
資産の売買があったものとして取り扱われます。
貸し手は、資産を売却したことになります。
「リース譲渡」といいます。
リース譲渡で時価を超える下取りがあった場合は、
・下取資産を時価で取得
・時価を超える部分については、リース譲渡の値引き
として取り扱う必要があります。
消費税の取扱いは、
法人税・所得税の取扱いとほとんど変わりません。
消費税の基本通達を確認してみましょう。
(資産を下取りした場合の対価の額)
消費税法基本通達9-3-6
9-3-6 事業者がリース譲渡を行うに当たり、頭金等として相手方の有する資産を下取りした場合において、当該資産の価額をその下取りをした時における価額を超える価額としているときは、その超える部分の金額については、当該下取りをした資産の譲受けに係る支払対価の額に含めないものとし、そのリース譲渡をした資産につき、値引きをしたものとして取り扱う。(平10課消2-9、平30課消2-5により改正)
(注) 下取りに係る資産を有していた事業者におけるその下取りに係る資産の譲渡に係る対価の額は、当該頭金等とされた金額となる。
消費税の基本通達には、
注意書き(借り手の取扱い)が追加されています。
貸し手については、時価を基準に取引を修正しますが、
借り手については、実際の下取資産の価額が譲渡対価となります。
時価を基準に取引を修正しないという意味です。
事例
貸し手と借り手の取扱いを比較してみましょう。
・リース譲渡の対価 200万円
・下取資産の時価 100万円
・実際の下取資産の価額 160万円
(売上原価等は考慮していません。)
貸し手の取扱い
借方 | 貸方 |
---|---|
現預金 200万円 | リース売上高 200万円 |
下取資産(時価) 100万円 | 現預金 100万円 |
リース売上高(値引き) 60万円 | 現預金 60万円 |
借り手の取扱い
借方 | 貸方 |
---|---|
現預金 100万円 | 売却資産 100万円 (簿価=時価と仮定) |
現預金 60万円 | 売却益 60万円 (時価を超える部分) |
リース資産 200万円 | 現預金 200万円 |
貸し手は、法人税・所得税と同様に時価を基準に取引を認識します。
借り手は、実際の対価を基準に取引を認識します。
貸し手
・リース売上高140万円(200万円-時価を超える部分60万円)
・仕入高100万円(160万円-時価を超える部分60万円)
借り手
・リース資産200万円(60万円を控除しない)
・売上高160万円(60万円を控除しない)
消費税法基本通達の疑問点
消費税の基本通達は、
法人税・所得税の基本通達に合わせていると思いますが、
そのまま合わせると違和感があります。
借り手の注意書きの取扱いを維持する場合、
貸し手の取扱い(時価を基準)を本来の取扱い(対価を基準)に
戻した方が消費税の考え方に合うからです。
リース資産と下取資産の課税関係が異なる場合、例えば、
・リース資産は課税取引、下取資産は非課税取引
・リース資産は非課税取引、下取資産は課税取引
の場合、税負担に差が生じます。
リース資産が課税、下取資産が非課税の場合を確認してみましょう。
貸し手 | 借り手 |
---|---|
リース課税売上高 140万円 (200万円-60万円) 課税売上げの減額と繰延が可能。 | リース課税仕入高200万円 (60万円を控除しない) 一括控除が可能。 |
課税対象外の仕入高 100万円 (160万円-60万円) | 非課税売上高 160万円 (60万円を控除しない) |
貸し手の課税売上高が減少するため、有利になります。
貸し手の課税売上割合が減少するため、不利になります。
リース資産が非課税、下取資産が課税の場合を確認してみましょう。
貸し手 | 借り手 |
---|---|
リース非課税売上高 140万円 (200万円-60万円) 非課税売上げの減額と繰延が可能。 | リース課税対象外の仕入高 200万円 (60万円を控除しない) |
課税仕入高 100万円 (160万円-60万円) 課税仕入れが減少。 | 課税売上高 160万円 (60万円を控除しない) 一括納付が必要。 |
貸し手の課税仕入高が減少するため、不利になります。
貸し手の課税売上割合が増加するため、有利になります。
それぞれ、課税取引と非課税取引の金額を修正しているため、
整合性が取れなくなります。
リース資産と下取資産の課税関係が異なるため、
インボイスの取扱いについても確認しておきましょう。