リース譲渡の特例を適用している個人事業者が事業を廃止した場合の消費税


今回は、リース譲渡の特例を適用している個人事業者が事業を廃止した場合等の消費税を確認してみましょう。

事業を廃止した場合

個人事業者が事業を廃止した場合は、
リース譲渡の特例(売上の繰延処理)が終了するため、
繰り延べた売上を精算(一括計上)する必要があります。

具体的な要件は、次の4つです。
1、個人事業者が亡くなり、リース事業を承継する相続人がいない。
2、課税事業者が亡くなり、リース事業を承継する相続人が免税事業者である。
3、免税事業者が亡くなり、リース事業を承継する相続人が課税事業者である。
4、個人事業者がリース事業の全部を売却か廃止をした。

・被相続人と相続人が免税事業者の場合
・被相続人と相続人が課税事業者の場合
は、要件となっていません。

参考規定

(事業の廃止、死亡等の場合のリース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例)
第三十四条 リース譲渡につき法第十六条第二項本文の規定の適用を受けている個人事業者が次に掲げる場合に該当することとなつた場合には、その該当することとなつた日の属する課税期間の初日の前日以前に当該個人事業者が行つたリース譲渡で同項本文の規定の適用を受けていたもののうち、当該リース譲渡に係る賦払金の額で当該課税期間の初日以後にその支払の期日が到来するもの(当該課税期間の初日の前日以前に既に支払を受けたものを除く。)に係る部分は、同項本文の規定にかかわらず、当該個人事業者が当該課税期間において資産の譲渡等を行つたものとみなす。
一 当該個人事業者が死亡した場合において、当該リース譲渡に係る事業を承継した相続人がないとき。
二 当該個人事業者(法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が死亡した場合において、当該リース譲渡に係る事業を承継した相続人が同項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者であるとき。
三 当該個人事業者(法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者に限る。)が死亡した場合において、当該リース譲渡に係る事業を承継した相続人が同項本文の規定の適用を受けない事業者であるとき。
四 当該個人事業者が当該リース譲渡に係る事業の全部を譲渡し、又は廃止した場合

消費税法施行令第34条第1項、令和6年4月1日
リース譲渡の特例の引継ぎ

原則として、上記の4つの事由が発生した場合は、
リース譲渡の特例が終了します。

ただし、追加要件を満たした場合は、
相続人がリース譲渡の特例を引き継ぐことが可能です。

その要件は、次の3つです。
・リース譲渡の特例を選択した個人事業者が亡くなった。
・亡くなった個人事業者とリース事業を承継する相続人は、いずれも課税(免税)事業者である。
・リース事業を承継する相続人が延払基準の経理を行う。

被相続人が課税事業者、相続人が免税事業者の場合は、相続人が延払基準の経理をした場合であっても、リース譲渡の特例を引き継ぐことができません。被相続人が免税事業者、相続人が課税事業者の場合も同じです。

上記3つの要件を満たす場合、亡くなった個人事業者が回収した賦払金については、リース事業を承継した相続人が回収したものとして、リース譲渡の計算を行う必要がありますので注意しましょう。

参考規定

2 リース譲渡につき法第十六条第二項本文の規定の適用を受けている個人事業者が死亡した場合(前項第二号又は第三号に掲げる場合に該当することとなつた場合を除く。次項及び第四項において同じ。)において、当該個人事業者が行つたリース譲渡で同条第二項本文の規定の適用を受けていたものに係る対価の額につき、当該個人事業者の当該リース譲渡に係る事業を承継した相続人が当該死亡の日の属する課税期間以後の課税期間において同条第一項に規定する延払基準の方法(次項並びに次条及び第三十七条において「延払基準の方法」という。)により経理することとしているときは、その経理することとしている対価の額に係るリース譲渡については、当該相続人が資産の譲渡等を行つたものとみなして、法第十六条第二項本文の規定を適用する。この場合において、当該リース譲渡に係る第三十一条の規定の適用については、同条中「支払を受けている金額」とあるのは、「支払を受けている金額(既にその死亡した個人事業者が支払を受けている金額を含む。)」とする。

消費税法施行令第34条第2項、令和6年4月1日
相続人が延払基準の経理を止める場合

原則として、個人事業者が亡くなった場合は、リース譲渡の特例が終了します。ただし、リース事業を承継した相続人が延払基準の経理をした場合は、リース譲渡の特例を引き継ぐことができます。

この相続人が延払基準の経理を止めた場合は、経理を止めた年でリース譲渡の特例が終了します。

参考規定

3 前項に規定する個人事業者が死亡した場合において、当該個人事業者の同項に規定する事業を承継した相続人が、当該死亡の日の属する年以後のいずれかの年において、当該個人事業者が行つたリース譲渡で法第十六条第二項本文の規定の適用を受けていたものに係る対価の額につき延払基準の方法により経理しなかつたときは、当該リース譲渡のうち当該リース譲渡に係る賦払金の額でその経理しなかつた年の十二月三十一日の属する課税期間の初日以後にその支払の期日が到来するもの(当該課税期間の初日の前日以前に既に当該個人事業者又は当該相続人が支払を受けたものを除く。)に係る部分については、当該相続人が当該課税期間において資産の譲渡等を行つたものとみなす。

消費税法施行令第34条第3項、令和6年4月1日
相続人がリース譲渡の特例を止める場合

リース事業を承継した相続人が延払基準の経理を止めた場合、所得税のリース譲渡の特例が終了するため、消費税のリース譲渡の特例も終了します。

消費税の計算では、所得税のリース譲渡の特例を継続したまま、消費税のリース譲渡の特例を終了することも可能です。

参考規定

4 第二項に規定する個人事業者が死亡した場合において、当該個人事業者の同項に規定する事業を承継した相続人が、当該死亡の日の属する課税期間以後のいずれかの課税期間において、当該個人事業者が行つたリース譲渡で法第十六条第二項本文の規定の適用を受けていたものに係る対価の額につき同項本文の規定の適用を受けないこととしたときは、当該リース譲渡のうちその適用を受けないこととしたリース譲渡に係る賦払金の額でその適用を受けないこととした課税期間の初日以後にその支払の期日が到来するもの(当該課税期間の初日の前日以前に既に当該個人事業者又は当該相続人が支払を受けたものを除く。)に係る部分については、当該相続人が当該課税期間において資産の譲渡等を行つたものとみなす。

消費税法施行令第34条第4項、令和6年4月1日
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