中小企業者向け賃上げ促進税制_令和6年度改正


今回は、令和6年度改正のうち
中小企業者向け賃上げ促進税制を確認してみましょう。

内容

令和6年度改正により、
賃上げ促進税制は3本立てになります。
1、大企業向け特例
2、中堅企業向け特例(新設)
3、中小企業者向け特例

中小企業者向け特例については、
・控除割合の変更
・5年間の繰越し
が主な改正点となります。

規定を確認してみましょう。
(5年間の繰越しについては別規定となります。)

3 第四十二条の四第十九項第七号に規定する中小企業者(同項第八号に規定する適用除外事業者又は同項第八号の二に規定する通算適用除外事業者に該当するものを除く。)又は同項第九号に規定する農業協同組合等で、青色申告書を提出するもの(以下この項において「中小企業者等」という。)が、平成三十年四月一日から令和九年三月三十一日までの間に開始する各事業年度(前二項の規定の適用を受ける事業年度、設立業年度、解散(合併による解散を除く。)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度を除く。)において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、当該事業年度において当該中小企業者等の雇用者給与等支給額からその比較雇用者給与等支給額を控除した金額の当該比較雇用者給与等支給額に対する割合(第一号において「雇用者給与等支給増加割合」という。)が百分の一・五以上であるときは、当該中小企業者等の当該事業年度の所得に対する調整前法人税額から、当該中小企業者等の当該事業年度の控除対象雇用者給与等支給増加額(当該事業年度において第四十二条の十二の規定の適用を受ける場合には、同条の規定による控除を受ける金額の計算の基礎となつた者に対する給与等の支給額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した残額)に百分の十五(当該事業年度において次の各号に掲げる要件を満たす場合には、百分の十五に当該各号に定める割合(当該事業年度において次の各号のうち二以上の号に掲げる要件を満たす場合には、当該二以上の号に定める割合を合計した割合)を加算した割合)を乗じて計算した金額(以下この項及び第五項第十二号において「中小企業者等税額控除限度額」という。)を控除する。この場合において、当該中小企業者等税額控除限度額が、当該中小企業者等の当該事業年度の所得に対する調整前法人税額の百分の二十に相当する金額を超えるときは、その控除を受ける金額は、当該百分の二十に相当する金額を限度とする。
一 雇用者給与等支給増加割合が百分の二・五以上であること 百分の十五  二 次に掲げる要件の全てを満たすこと 百分の十
イ 当該中小企業者等の当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額からその比較教育訓練費の額を控除した金額の当該比較教育訓練費の額に対する割合が百分の五以上であること。
ロ 当該中小企業者等の当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額の当該中小企業者等の雇用者給与等支給額に対する割合が百分の〇・〇五以上であること。
三 次に掲げる要件のいずれかを満たすこと 百分の五
イ 当該事業年度において次世代育成支援対策推進法第十三条の認定を受けたこと(同法第二条に規定する次世代育成支援対策の実施の状況が良好な場合として財務省令で定める場合に限る。)
ロ 当該事業年度終了の時において次世代育成支援対策推進法第十五条の三第一項に規定する特例認定一般事業主に該当すること。
ハ 当該事業年度において女性の職業生活における活躍の推進に関する法律第九条の認定を受けたこと(同法第四条の女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供及び同条の雇用環境の整備の状況が良好な場合として財務省令で定める場合に限る。)
ニ 当該事業年度終了の時において女性の職業生活における活躍の推進に関する法律第十三条第一項に規定する特例認定一般事業主に該当すること。

新租税特別措置法第42条の12の5第3項

主な要件は、次の3つです。
・中小企業者等に該当する。
・令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度
(設立事業年度、解散事業年度、清算事業年度は除外、合併解散は対象)
・一定の割合(雇用者給与等支給増加割合)が1.5%以上

控除額の計算

法人税額からマイナスする金額(控除額)は、
控除対象雇用者給与等支給増加額×15%となります。

前期の給料と当期の給料を比較して、
増加した部分の15%が税額控除できる特例です。

他の特例(租税特別措置法第42条の12)
・地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除
を適用している場合は、重複控除ができないため、
増加した部分を調整する必要があります。

税額控除の上限は、法人税額×20%です。
中小企業者向けの特例は5年間の繰越しが可能です。
(大企業向けの特例、中堅企業向けの特例については繰越しできません。)

控除割合の加算

追加要件を満たした場合に控除割合の加算が可能です。

追加要件は3種類あり
1、雇用者給与等支給増加割合≧2.5%の場合は、+15%
2、教育訓練費要件を全て満たす場合は、+10%
3、一定の事業主(プラチナくるみん・えるぼし等)に該当する場合は、+5%
を控除割合にプラスできます。

同時に満たす場合は、それぞれプラスできます。
(1と2を満たす場合は、15%+10%=25%)

適用できない中小企業者

中小企業者であっても
・適用除外事業者
・通算適用除外事業者
に該当する場合は、中小企業者向け特例が適用できません。
税額控除の繰越しも対象外となります。

中小企業者等でなくなった場合の繰越し

中小企業者向け特例の税額控除の繰越控除については、
・中小企業者であること
が要件とされていません。
中小企業者でない青色申告法人も対象となります。

中小企業者等でなくなった場合、
・大企業向け特例・中堅企業向け特例の判定(継続雇用者に限定する)
・繰越しの判定(継続雇用者に限定しない)
の2つが必要になるのでしょう。

まとめ

前期当期内容
中小企業者等
(5年間繰越し可)
中小企業者等以外前期から繰り越した部分は、要件を満たせば当期に控除可能。
当期分は繰越し不可。
中小企業者等以外中小企業者
(5年間繰越し可)
前期分は繰越し不可。
当期分は繰越し可能。
まとめ
参考規定

適用除外事業者の定義

八 適用除外事業者 当該事業年度開始の日前三年以内に終了した各事業年度(以下この号において「基準年度」という。)の所得の金額の合計額を各基準年度の月数の合計数で除し、これに十二を乗じて計算した金額(設立後三年を経過していないこと、既に基準年度の所得に対する法人税の額につき法人税法第八十条の規定の適用があつたこと、基準年度において合併、分割又は現物出資が行われたこと、基準年度において通算法人に該当することその他の政令で定める事由がある場合には、当該計算した金額につき当該事由の内容に応じ調整を加えた金額として政令で定めるところにより計算した金額)が十五億円を超える法人をいう。

租税特別措置法第42条の4第19項第8号、施行日令和6年1月1日

・過去3年の所得の平均が15億円超となる法人

通算適用除外事業者の定義

八の二 通算適用除外事業者 通算法人である法人の各事業年度終了の日において当該通算法人である法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人のうちいずれかの法人が適用除外事業者(当該通算法人である法人に係る通算親法人の同日を含む事業年度開始の日以後に当該通算親法人との間に通算完全支配関係を有することとなつた適用除外事業者として政令で定めるものを除く。)に該当する場合における当該通算法人である法人をいう。

租税特別措置法第42条の4第19項第8号の2、施行日令和6年1月1日

・通算法人の場合は、いずれかの法人で適用除外事業者の判定するため注意

通算適用除外事業者に該当する場合は、
各法人で、
・大企業向け特例
・中堅企業向け特例
を選択することになるのでしょう。

中小企業者等の税額控除の繰越しがある場合は、別途判定が必要。


新しいこと
・アクエリアスゼロ

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