中小企業者等の貸倒引当金の特例


今回は、中小企業者等の貸倒引当金の特例を確認してみましょう。

概要

貸倒引当金については、貸倒れの可能性に応じて
・個別評価金銭債権の貸倒引当金
・一括評価金銭債権の貸倒引当金
の特例が設けられています。

上記とは別に中小企業者等については、
一括評価金銭債権の計算の特例がありますので、
この特例を確認してみましょう。

ポイントは、次の2つです。
・中小企業者等である
・適用除外事業者でない

中小企業者等

中小企業者等は、次の3つです。
イ、普通法人のうち、資本金の額が1億円以下など(注1)
ロ、公益法人等、協同組合等
ハ、人格のない社団等

注1、資本金の額が5億円以上の法人(大法人)に
100%支配されている場合や大通算法人を除きます。

適用除外事業者

原則として過去3期の所得の合計額の平均が
15億円を超える法人を「適用除外事業者」といいます。

算式
(3期前の所得+2期前の所得+1期前の所得)×12/36>15億円

一括貸倒引当金繰入限度額の特例

原則として、一括貸倒引当金繰入の限度額の計算は、
・一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額×貸倒実績率
で計算します。

特例については、
・一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額×法定繰入率
で計算します。

法定繰入率は、主たる事業に応じて選択します。
1、卸売業・小売業 10/1000
2、製造業等 8/1000
3、金融業・保険業 3/1000
4、割賦販売小売業 7/1000
5、その他の事業 6/1000

貸倒実績率(原則)と法定繰入率(特例)は、
有利な方(繰入限度額を多くなる方)を選択できます。

留意点は、2点あります。

1、一括評価金銭債権からは、
100%支配関係がある法人の金銭債権を除外します。
(100%親法人や100%子法人の売掛金、貸付金、未収家賃など)

2、帳簿価額からは、
実質的に債権とみられない金銭債権
(買掛金、借入金など)を除外します。

例えば、A社に対する
・売掛金 100万円
・買掛金 30万円
がある場合、実質的に債権とみられない金銭債権は、30万円となります。

別表の確認

別表11(1の2)、
一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書を
確認してみましょう。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2023/pdf/11(01-02).pdf

中段、一括評価金銭債権の明細
22欄、完全支配関係がある他の法人に対する売掛債権等の額に
100%支配関係がある法人の金銭債権を記入して、
一括評価金銭債権から除外します。

23欄、実質的に債権とみられないものの額に
同じ者に対する金銭債務を記入して、
一括評価金銭債権から除外します。

23欄、期末一括評価金銭債権の額は、
・貸倒実績率で計算する場合
・基準年度実績の特例を適用する場合
に使用します。

今回の法定繰入率で計算する場合には
使用しませんので留意しましょう。

法定繰入率で計算する場合は、
25欄、差引期末一括評価金銭債権の額を使用します。
(買掛金や借入金をマイナスした後の金額)

参考規定

中小企業者等の貸倒引当金の特例

第五十七条の九 法人で各事業年度終了の時において法人税法第五十二条第一項第一号イからハまでに掲げる法人(保険業法に規定する相互会社及びこれに準ずるものとして政令で定めるものを除く。次項において「中小企業者等」という。)に該当するもの(同号イに掲げる法人に該当するもの(次項において「中小法人」という。)にあつては、第四十二条の四第十九項第八号に規定する適用除外事業者(以下この条において「適用除外事業者」という。)に該当するもの(通算法人の各事業年度終了の日において当該通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人のうちいずれかの法人が適用除外事業者に該当する場合には、当該通算法人を含む。)を除く。)が法人税法第五十二条第二項の規定の適用を受ける場合には、同項の規定にかかわらず、当該事業年度終了の時における同項に規定する一括評価金銭債権(当該法人が当該法人との間に同法第二条第十二号の七の六に規定する完全支配関係がある他の法人に対して有する金銭債権を除く。次項において同じ。)の帳簿価額(政令で定める金銭債権にあつては、政令で定める金額を控除した残額。次項において同じ。)の合計額に政令で定める割合を乗じて計算した金額をもつて、同法第五十二条第二項に規定する政令で定めるところにより計算した金額とすることができる。

租税特別措置法第57条の9第1項、施行日令和5年10月1日

規定を整理してみましょう。


法人で各事業年度終了の時において
法人税法第52条第1項第1号イからハまでに掲げる
法人(注1)に該当するもの(注2)が
法人税法第52条第2項の規定の適用を受ける場合には、
同項の規定にかかわらず、

当該事業年度終了の時における
同項(第1項)に規定する一括評価金銭債権(注3)の
帳簿価額(注4)の合計額に
政令で定める割合を乗じて計算した金額をもつて、
同法第52条第2項に規定する
政令で定めるところにより計算した金額とすることができる。

注1、保険業法に規定する相互会社及び
これに準ずるものとして政令で定めるものを除く。
次項において「中小企業者等」という。

注2、同号(第1号)イに掲げる法人に該当するもの(注2-2)にあつては、
第42条の4第19項第8号に規定する適用除外事業者(注2-3)に
該当するもの(注2-4)を除く。

注2-2、次項において「中小法人」という。

注2-3、以下この条において「適用除外事業者」という。

注2-4、通算法人の各事業年度終了の日において
当該通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人のうち
いずれかの法人が適用除外事業者に該当する場合には、当該通算法人を含む。

注3、当該法人が当該法人との間に
同法第2条第12号の7の6に規定する完全支配関係がある
他の法人に対して有する金銭債権を除く。次項において同じ。

注4、政令で定める金銭債権にあつては、
政令で定める金額を控除した残額。次項において同じ。


中小企業者等の範囲

一 当該事業年度終了の時において次に掲げる法人に該当する内国法人
イ 普通法人(投資法人及び特定目的会社を除く。)のうち、資本金の額若しくは出資金の額が一億円以下であるもの(第六十六条第五項第二号又は第三号(各事業年度の所得に対する法人税の税率)に掲げる法人に該当するもの及び同条第六項に規定する大通算法人を除く。)又は資本若しくは出資を有しないもの(同項に規定する大通算法人を除く。)
ロ 公益法人等又は協同組合等
ハ 人格のない社団等

法人税法第52条第1項第1号イからハまで、施行日令和5年6月7日

適用除外事業者

八 適用除外事業者 当該事業年度開始の日前三年以内に終了した各事業年度(以下この号において「基準年度」という。)の所得の金額の合計額を各基準年度の月数の合計数で除し、これに十二を乗じて計算した金額(設立後三年を経過していないこと、既に基準年度の所得に対する法人税の額につき法人税法第八十条の規定の適用があつたこと、基準年度において合併、分割又は現物出資が行われたこと、基準年度において通算法人に該当することその他の政令で定める事由がある場合には、当該計算した金額につき当該事由の内容に応じ調整を加えた金額として政令で定めるところにより計算した金額)が十五億円を超える法人をいう。

租税特別措置法第42条の4第19項第8号、施行日令和5年10月1日

規定を整理してみましょう。


当該事業年度開始の日前3年以内に終了した
各事業年度(注1)の所得の金額の合計額を
各基準年度の月数の合計数で除し、
これに12を乗じて計算した金額(注2)が15億円を超える法人をいう。

注1、以下この号において「基準年度」という。

注2、設立後3年を経過していないこと、
既に基準年度の所得に対する法人税の額につき
法人税法第80条(欠損金の繰戻しによる還付)の規定の適用があつたこと、
基準年度において合併、分割又は現物出資が行われたこと、
基準年度において通算法人に該当すること
その他の政令で定める事由がある場合には、
当該計算した金額につき当該事由の内容に応じ
調整を加えた金額として政令で定めるところにより計算した金額

法定繰入率

4 法第五十七条の九第一項及び第二項に規定する政令で定める割合は、これらの規定の法人の営む主たる事業が次の各号に掲げる事業のいずれに該当するかに応じ当該各号に定める割合とする。
一 卸売及び小売業(飲食店業及び料理店業を含むものとし、第四号に掲げる割賦販売小売業を除く。) 千分の十
二 製造業(電気業、ガス業、熱供給業、水道業及び修理業を含む。) 千分の八
三 金融及び保険業 千分の三
四 割賦販売小売業(割賦販売法第二条第一項第一号に規定する割賦販売の方法により行う小売業をいう。)並びに包括信用購入あつせん業(同条第三項に規定する包括信用購入あつせん(同項第一号に掲げるものに限る。)を行う事業をいう。)及び個別信用購入あつせん業(同条第四項に規定する個別信用購入あつせんを行う事業をいう。) 千分の七
五 前各号に掲げる事業以外の事業 千分の六

租税特別措置法施行令第33条の7第4項、施行日令和5年10月1日
PAGE TOP