今回は、個人事業者が事業を廃止した後に、
売上値引があった場合の所得税の取扱いについて確認します。
事業廃止後に売上値引があった場合
例えば、令和3年に事業を廃止した後、
令和4年に売上値引があった場合の仕訳は、次のとおりです。
借方 | 貸方 |
---|---|
売上値引(必要経費) 1,000円 | 現金 1,000円 |
ただし、令和4年については事業を廃止しているため、
事業所得などの必要経費とすることができません。
この場合、令和3年分の必要経費として処理する必要があります。
令和4年の1月や2月に売上値引があった場合は、令和3年分の確定申告の計算に含めることができると思いますが、確定申告をした後に売上値引があった場合は、更正の請求により税額を訂正することができます。
事業廃止年に収入がなかった場合
上記のケースで、令和3年に売上がなかった場合、
令和2年分の必要経費として処理する必要があります。
また、令和2年分の売上が少なかった場合、
令和元年分の必要経費として処理できます。
事業を廃止していなければ、
売上値引があった令和4年分の必要経費となるものですが、
事業を廃止した場合の特例として、
過去の必要経費として処理できる取扱いがあります。
参考規定
(事業を廃止した場合の必要経費の特例)
所得税法
第六十三条 居住者が不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を廃止した後において、当該事業に係る費用又は損失で当該事業を廃止しなかつたとしたならばその者のその年分以後の各年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額が生じた場合には、当該金額は、政令で定めるところにより、その者のその廃止した日の属する年分(同日の属する年においてこれらの所得に係る総収入金額がなかつた場合には、当該総収入金額があつた最近の年分)又はその前年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。
(事業を廃止した場合の必要経費の特例)
第百七十九条 法第六十三条(事業を廃止した場合の必要経費の特例)の規定により同条に規定する必要経費に算入されるべき金額を同条に規定する廃止した日の属する年分又はその前年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入する場合における当該不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算については、次に定めるところによる。一 当該必要経費に算入されるべき金額が次に掲げる金額のうちいずれか低い金額以下である場合には、当該必要経費に算入されるべき金額の全部を当該廃止した日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入する。
イ 当該必要経費に算入されるべき金額が生じた時の直前において確定している当該廃止した日の属する年分の総所得金額、山林所得金額及び退職所得金額の合計額
ロ イに掲げる金額の計算の基礎とされる不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額
二 当該必要経費に算入されるべき金額が前号に掲げる金額のうちいずれか低い金額をこえる場合には、当該必要経費に算入されるべき金額のうち、当該いずれか低い金額に相当する部分の金額については、当該廃止した日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入し、そのこえる部分の金額に相当する金額については、次に掲げる金額のうちいずれか低い金額を限度としてその年の前年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入する。
イ 当該必要経費に算入されるべき金額が生じた時の直前において確定している当該前年分の総所得金額、山林所得金額及び退職所得金額の合計額
ロ イに掲げる金額の計算の基礎とされる不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額
所得税法施行令