事業用資産の買換資産を先行取得した場合


今回は、事業用資産の買換資産を先行取得した場合を確認してみましょう。

先行取得

事業用資産の買換特例については、
譲渡資産を譲渡した年と同じ年に買換資産を取得する必要があります。

ただし、同じ年に取得することが難しい場合は、
買換資産を先に取得することが可能です。
(先行取得といいます。)

先行取得の要件は、次の3つです。

・譲渡年の前年中(例外あり)に買換資産を取得
・先行取得の特例を適用する旨の届出
・取得日から1年以内に、事業供用

原則として前年中に取得する必要がありますが、
宅地造成や工場等の建設・移転期間が1年を超える場合は、
過去2年間となり、前年だけではなく、前々年の取得も特例の対象となります。

先行取得の手続き

先行取得の特例を適用する旨の届出は、
買換資産の取得年の翌年3月15日(確定申告期限)までに
一定の事項を記載した届出書を提出する必要があります。

国税庁、先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/02/pdf/a044_2801.pdf

まとめ

先行取得資産が減価償却資産である場合の調整

買換資産が減価償却資産の場合、
実際の買換資産の取得価額を基に減価償却費を計算します。

計算した後、譲渡資産を譲渡した場合、
実際の買換資産の取得価額が、
譲渡資産の取得費等を引き継いだ金額に変更されるため、
減価償却費の再計算が必要となります。

先に計算した金額と再計算した金額との差額は、
修正申告しないで、譲渡した年の収入金額として調整します。

所得区分は、不動産所得、事業所得、山林所得、雑所得のいずれかです。
(譲渡所得の収入金額には該当しないため注意しましょう。)

参考規定など

事業用資産の買換特例の先行取得

3 前二項の規定は、昭和四十五年一月一日から令和八年十二月三十一日(第一項の表の第三号の上欄に掲げる資産にあつては、同年三月三十一日)までの間に同表の各号の上欄に掲げる資産で事業の用に供しているものの譲渡をした個人が、当該譲渡をした日の属する年の前年中(工場等の建設に要する期間が通常一年を超えることその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合には、政令で定める期間内)に当該各号の下欄に掲げる資産の取得をし、かつ、当該取得の日から一年以内に、当該取得をした資産(政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長にこの項の規定の適用を受ける旨の届出をしたものに限る。)を当該各号の下欄に規定する地域内にある当該個人の事業の用に供した場合(当該取得の日から一年以内に当該事業の用に供しなくなつた場合を除く。)について準用する。この場合において、第一項中「供する見込みであるときは」とあるのは、「供する見込みであるときは、政令で定めるところにより」と読み替えるものとする。

租税特別措置法第37条第3項、施行日令和5年10月1日

規定を整理してみましょう。

前二項(第1項、第2項)の規定は、
昭和45年1月1日から令和8年12月31日(注1)までの間に
同表の各号の上欄に掲げる資産で
事業の用に供しているものの譲渡をした個人が、
当該譲渡をした日の属する年の前年中(注2)に
当該各号の下欄に掲げる資産の取得をし、かつ、
当該取得の日から1年以内に、当該取得をした資産(注3)を
当該各号の下欄に規定する地域内にある当該個人の
事業の用に供した場合(注4)について準用する。

この場合において、第1項中「供する見込みであるときは」とあるのは、
「供する見込みであるときは、政令で定めるところにより」と
読み替えるものとする。

注1、第一項の表の第三号の上欄に掲げる資産にあつては、同年三月三十一日

注2、工場等の建設に要する期間が通常1年を超えること
その他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合には、政令で定める期間内

注3、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長に
この項(第3項)の規定の適用を受ける旨の届出をしたものに限る。

注4、当該取得の日から1年以内に当該事業の用に供しなくなつた場合を除く。


15 法第三十七条第三項に規定する政令で定めるやむを得ない事情は、工場、事務所その他の建物、構築物又は機械及び装置で事業の用に供するもの(以下この項において「工場等」という。)の敷地の用に供するための宅地の造成並びに当該工場等の建設及び移転に要する期間が通常一年を超えると認められる事情その他これに準ずる事情とし、同条第三項に規定する政令で定める期間は、同項に規定する譲渡の日の属する年の前年以前二年の期間とする。

租税特別措置法施行令第25条第15項、施行日令和5年10月1日

規定を整理してみましょう。

法第37条第3項に規定する政令で定めるやむを得ない事情は、
工場、事務所その他の建物、構築物又は機械及び装置で
事業の用に供するもの(以下この項において「工場等」という。)
敷地の用に供するための宅地の造成並びに
当該工場等の建設及び移転に要する期間が
通常1年を超えると認められる事情その他これに準ずる事情とし、

同条(第37条)第3項に規定する政令で定める期間は、
同項(第3項)に規定する譲渡の日の属する年の前年以前2年の期間とする。


先行取得の届出

16 法第三十七条第三項の届出は、同条第一項の表の各号の下欄に掲げる資産の取得(建設及び製作を含む。以下この条及び次条第六項において同じ。)をした日の属する年の翌年三月十五日までに、当該資産につき法第三十七条第三項の規定の適用を受ける旨及び次に掲げる事項を記載した届出書により行わなければならない。
一 届出者の氏名及び住所
二 当該取得をした資産の種類、規模(土地等にあつては、その面積)、所在地、用途、取得年月日及び取得価額
三 譲渡をする見込みである資産の種類
四 その他参考となるべき事項

租税特別措置法施行令第25条第16項、施行日令和5年10月1日

先行取得資産が減価償却資産である場合の調整

17 法第三十七条第三項において準用する同条第一項の規定を適用する場合において、買換資産が減価償却資産であり、かつ、当該資産につき譲渡資産の譲渡の日前に既に必要経費に算入された所得税法第四十九条第一項の規定による償却費の額があるときは、当該譲渡資産の収入金額のうち、当該償却費の額と当該償却費の額の計算の基礎となつた期間につき法第三十七条の三の規定を適用した場合に計算される同項の規定による償却費の額との差額に相当する金額については、当該譲渡資産の譲渡があつたものとし、当該譲渡があつたものとされる金額は、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得に係る収入金額とする。

租税特別措置法施行令第25条第17項、施行日令和5年10月1日

規定を整理してみましょう。

法第37条第3項において準用する
同条(第37条)第1項の規定を適用する場合において、

買換資産が減価償却資産であり、かつ、
当該資産につき譲渡資産の譲渡の日前に既に必要経費に算入された
所得税法第49条第1項の規定による償却費の額があるときは、

当該譲渡資産の収入金額のうち、
当該償却費の額と
当該償却費の額の計算の基礎となつた期間につき法第37条の3の規定を適用した場合に計算される同項(第49条第1項)の規定による償却費の額と
の差額に相当する金額については、
当該譲渡資産の譲渡があつたものとし、
当該譲渡があつたものとされる金額は、
不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得に係る収入金額とする。

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