交際費等の定義と書類の保存


今回は、法人税の交際費等の定義と書類の保存を
確認してみましょう。

交際費等の定義

交際費等の定義のポイントは、次の3つです。

  • 費用であること
  • 得意先、仕入先、事業に関係のある者等に対するものであること
  • 接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する「行為」のために支出するもの

1つ目
接待等のための資産の購入などは含まれません。
また、接待等に要する資産の減価償却費も含まれません。

2つ目
直接取引している得意先、仕入先だけではなく、従業員なども含みます。

参考通達、交際費等の支出の相手方の範囲

61の4(1)-22 措置法第61条の4第4項に規定する「得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」には、直接当該法人の営む事業に取引関係のある者だけでなく間接に当該法人の利害に関係ある者及び当該法人の役員、従業員、株主等も含むことに留意する。(昭57年直法2-11「十一」、平6年課法2-5「三十一」、平26年課法2-6「三十二」により改正)

参考通達、61の4(1)-22、交際費等の支出の相手方の範囲

事業に関係のある者=交際費等
事業に関係のない者=寄附金などと区別することも1つの方法です。
(実務上、他の要素も勘案することになります。)

3つ目については、接待等のために支出する費用が交際費となります。細かい内容ですが、接待等を受けるために支出する費用は交際費に該当しません。

参考情報
国税庁、質疑応答事例、交際費等の範囲(接待を受けるためのタクシー代)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/15/01.htm

上記3点に該当するものが交際費等になりますが、
一定のものが交際費等から除外されます。

交際費等から除外されるもの

交際費等から除外されるものは次の3つです。

  1. 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
  2. 1人あたり5,000円以下の接待飲食費
  3. 前二号に掲げる費用のほか政令で定める費用

1つ目
交際費等の定義で「事業に関係のある者」があり、この中には役員や従業員も含まれますが、会社の慰安旅行については交際費等から除外されます。慰安旅行は冗費とは言えない費用です。

2つ目
1人あたり5,000円以下の接待飲食費については、交際費等から除外されます。注意点は、税込経理(免税事業者を含む)については税込金額で判定します。税抜経理については税抜金額で判定します。

例えば、税込経理の場合、税込11,000円(2人)であれば、
11,000円÷2人=5,500円>5,000円となり、
接待飲食費に該当せず、交際費等に該当します。

税抜経理の場合、11,000円÷2人=5,500円÷1.1=
5,000円≦5,000円となり、接待飲食費に該当します。

インボイス制度後の5,000円判定

インボイス制度が導入されるとどうなるのでしょうか?

調べてみると、経理通達がありました。

〔参考〕交際費等の損金不算入制度の適用
新経理通達は、令和5年10月1日以後に国内において法人が行う資産の譲渡等又は課税仕入れ等に係る消費税について適用することとされておりますが、交際費等の損金不算入制度は法人が令和4年3月31日までの間に開始する各事業年度において支出する交際費等の額がある場合に適用されます(経過的取扱い(1)、措法61の4)。このため、新経理通達の適用時における交際費等の損金不算入制度の在り方は不明ですが、仮に現行制度と同様の場合には、本事例の飲食のために要した費用の支出がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものである場合には、交際費等の額の計算や、交際費等の範囲から除かれる飲食費の金額基準である5千円以下の判定は、本事例における仮払消費税等の額として経理した金額を飲食のために要した費用の額に算入した後の金額により行うことになります(消費税経理通達12)。

インボイス制度導入後(令和11年10月~)に免税事業者に経費等を支出した場合の法人税の取扱い、https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/shouhizei_faq/08.htm

「本事例における仮払消費税等の額として経理した金額」を
「飲食のために要した費用の額」に算入した後の金額により、
5,000円判定を行います。

令和11年10月以後については、消費税の経過措置がありませんので、
インボイスの保存がない場合は、消費税の控除ができません。

仮に法人が下記のように税抜経理を行ったとしても、
仮払消費税1,000円を接待飲食費10,000円に加算した後の金額で
5,000円判定を行います。

令和11年10月に接待飲食費11,000円(税込み、2人)を
使用した場合でインボイスの保存がないケース。

借方貸方
接待飲食費 10,000円現金 11,000円
仮払消費税等 1,000円
令和11年10月以後の取扱い

接待飲食費10,000円+仮払消費税等1,000円=11,000円÷2人=
5,500円>5,000円となり、接待飲食費に該当しません。

経過措置期間中は、80%控除、50%控除となるためさらに複雑になります。

令和5年10月に接待飲食費11,000円(税込み、2人)を
使用した場合でインボイスの保存がないケース。

借方貸方
接待飲食費 10,000円現金 11,000円
仮払消費税等 1,000円
令和5年10月以後3年間の取扱い

仮払消費税で費用に足し戻す金額は、
消費税の控除ができない部分になるため、
1,000円×(1-80%)=200円となります。

接待飲食費10,000円+仮払消費税等200円=10,200円÷2人=
5,100円>5,000円となり、接待飲食費に該当しません。

交際費等から除外されるもの

政令で交際費等から除外されるものは次の3つです。

  1. カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手拭いその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
  2. 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
  3. 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、又は放送のための取材に通常要する費用

1つ目、広告宣伝目的などにも使用されるものです。
2つ目、会議に伴って使用されるお茶などです。
3つ目、情報収集費用です。

3つ共通するのは、「通常要する費用」です。
不必要な費用については交際費等に該当します。
社会通念で判断するのでしょうね。

参考規定など

交際費等の定義と書類の保存

6 第一項、第三項及び前項に規定する交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下この項において「接待等」という。)のために支出するもの(次に掲げる費用のいずれかに該当するものを除く。)をいい、第一項に規定する接待飲食費とは、同項の交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の法人税法第二条第十五号に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。第二号において「飲食費」という。)であつて、その旨につき財務省令で定めるところにより明らかにされているものをいう。
一 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
二 飲食費であつて、その支出する金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額が政令で定める金額以下の費用
三 前二号に掲げる費用のほか政令で定める費用

 第六項第二号の規定は、財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用する。

租税特別措置法61条の4

交際費等から除外されるもの

(交際費等の範囲)
第三十七条の五 法第六十一条の四第六項第二号に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、同項に規定する飲食費として支出する金額を当該飲食費に係る飲食その他これに類する行為に参加した者の数で除して計算した金額とし、同号に規定する政令で定める金額は、五千円とする。
2 法第六十一条の四第六項第三号に規定する政令で定める費用は、次に掲げる費用とする。
一 カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手拭いその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
二 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
三 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、又は放送のための取材に通常要する費用

租税特別措置法施行令

国税庁基本通達、第1款 交際費等の範囲
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/sochiho/750214/08/08_61_4a.htm


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