仕入税額控除の調整の概要


支払った消費税を控除する取扱いを「仕入税額控除」といいます。今回は支払った消費税とは別に、一定の事由により「仕入税額控除」を調整する規定の概要を確認します。調整規定は大きく分けて3つあります。

調整対象固定資産の調整

消費税の計算は、棚卸資産や固定資産を取得した年(消費税を支払った年)の用途や状況で行います。その後、取得資産の用途や状況が変わったとしても原則として何ら考慮されません。固定資産は長期間使用しますが、取得した後、短期間で固定資産の用途を変更した場合や状況が変わった場合、不合理な結果となるため、2つの調整を設けています。

調整対象固定資産の調整は、次の2つです。

  • 課税売上割合に著しい変動があった場合
  • 調整対象固定資産を転用した場合
課税売上割合に著しい変動があった場合

この調整は、調整対象固定資産を取得した年の「課税売上割合」と取得年から3年目までを「通算した課税売上割合」とを比較して、著しい増加や減少があった場合に、一定額を調整する規定です。

固定資産は長期間使用するため、取得後3年間の課税売上割合を考慮して計算した方が合理的であるため、調整規定が設けられています。

調整対象固定資産を転用した場合

固定資産を取得した年の支払った消費税の対応関係が「課税売上対応」であれば、全額控除できます。固定資産を取得した年の支払った消費税の対応関係が「非課税売上対応」であれば、一切控除できません。取得した年の「用途区分」によって控除額が大きく異なります。。

固定資産は長期間使用するため、取得してから3年以内に固定資産の用途を変更した場合は、変更後の用途を考慮して計算した方が合理的であるため、調整規定が設けられています。

調整対象固定資産の用途変更は次の2つです。

  • 課税売上げ対応から非課税売上対応へ
    例えば、事務所賃貸用建物を居住用に転用した場合です。
  • 非課税売上対応から課税売上げ対応へ
    例えば、居住賃貸用建物を事業用に転用した場合です。
居住用賃貸建物の調整

居住用賃貸建物については、法令上の不具合があったため、近年の改正により居住用賃貸建物を支払った消費税については、一切控除できなくなりました。

その代わりに、居住用賃貸建物を取得してから3年以内にその建物の課税売上げが発生した場合は、課税売上げに応じて調整できるようになっています。課税売上げが発生した場合とは、例えば、居住用賃貸建物を事業用賃貸に変更した場合や居住用賃貸建物を他者に譲渡した場合です。

取扱いのまとめ

  • 取得年、居住用賃貸建物に係る支払った消費税は控除できない。
  • 取得後、一定期間に課税売上げが発生した場合、控除できなかった消費税が調整(控除)される。
棚卸資産の消費税の調整

棚卸資産についても、固定資産と同様に棚卸資産を取得した年の状況だけで控除する消費税を計算します。

棚卸資産を取得した年と棚卸資産を販売した年の納税義務の状況が同じであれば何も問題はありませんが、例えば、取得年が免税事業者で販売年が課税事業者など納税義務の状況が異なると不合理であるため、一定の調整が設けられています。

参考リンク
棚卸資産の消費税の調整

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