今回は、粉飾決算などで余分に支払った防衛特別法人税の取扱いを確認してみましょう。
原則として還付されない。
粉飾決算などにより売上を過大に計上した場合、利益が増えるため法人税の支払いが増えます。この後、調査などで粉飾決算が見つかった場合、決算書を正しい金額に修正します。
粉飾決算などにより支払いすぎた法人税はすぐに戻ってくるのかといいますと、すぐには戻ってきません。防衛特別法人税についても同じです。
参考規定を確認してみましょう。
(後半に掲載しています。)
防衛特別法人税が還付されない要件の1つ目は、次の場合です。
1、防衛特別法人税の確定申告書に記載した法人税(誤った法人税)
2、正しい法人税
3、1>2の場合
誤った法人税が3,000、正しい法人税500だとしますと
3,000>500となるため要件を満たします。
2つ目の要件は、事実を仮装して経理(粉飾決算など)していることです。
正しい金額を超える金額は、3,000-500=2,500。
このうち粉飾決算で売上を計上している場合は、要件を満たします。
超える金額があったとしても粉飾決算などではない場合は、要件を満たしません。
3つ目の要件は、税務署長が更正したときです。
この更正は特別なもので要件を満たすまで更正されません。
3つの要件を満たす場合は、原則として「仮装経理防衛特別法人税額」は還付されません。
粉飾決算などにより余分に防衛特別法人税額を支払っていますので、更正がある場合に防衛特別法人税額が減ります。減った税額のうち粉飾決算に対応するものを「仮装経理防衛特別法人税額」といいます。
例えば、超える金額2,500の内訳が
・粉飾決算に対するもの 2,000
・以外のもの 500
の場合は、2,000が仮装経理防衛特別法人税額となります。
参考規定
仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う防衛特別法人税額の還付の特例
第三十九条 内国法人の提出した防衛特別法人税確定申告書に記載された各課税事業年度の課税標準法人税額が当該課税事業年度の課税標準とされるべき課税標準法人税額を超え、かつ、その超える額のうちに事実を仮装して経理したところに基づくものがある場合において、税務署長が当該課税事業年度の防衛特別法人税につき更正をしたとき(当該内国法人につき当該課税事業年度終了の日から当該更正の日の前日までの間に第三項各号又は第四項各号に掲げる事実が生じたとき及び当該内国法人を被合併法人とする適格合併に係る合併法人につき当該適格合併の日から当該更正の日の前日までの間に当該事実が生じたときを除く。)は、当該課税事業年度の防衛特別法人税として納付された金額で政令で定めるもののうち当該更正により減少する部分の金額でその仮装して経理した金額に係るもの(以下この条において「仮装経理防衛特別法人税額」という。)は、次項、第三項又は第七項の規定の適用がある場合のこれらの規定による還付金の額を除き、還付しない。
我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法第39条第1項、令和8年4月1日施行
おまけ、カッコ書きの内容
更正があった場合であっても、更正の日の前日までの間に、
1、第3項各号の事実、残余財産の確定や非適格合併など
2、第4項各号の事実、更生手続開始の決定など
があった場合は、還付されない特例から除外されます。
原則として還付されませんが、他の特例により還付される仕組みです。